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春のヘッドフォン祭 2019 第9回

イタリア生まれ、密閉型でパッシブラジエータ搭載の「The Radiante」

2019年05月01日 13時00分更新

文● ゴン川野 編集●ASCII

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これこそがイタリアの音と思える、エモーショナルな音

 筆者がThe Radianteを試聴するため、デモ用のプレーヤーから持参したプレーヤーに差し替えようとしたところ、リッチ氏が話しかけてきた。

 説明を聞くと、「試聴機は、The Radianteに合わせてイコライジング済み」とのこと。The Radianteは、EQ機能を利用し、特性をフラットにすることで、本来の実力を発揮する仕組みだという。標準状態では、中域から低域はフラットだが、高域は少し減衰する。ロックなどを聴く分にはいいが、少し持ち上げた方がクラシックなどの再生で有利だという。密閉型の機種を開発するにあたり、アコースティックのチューンだけでは限界も感じた。一方で、最近のプレーヤーはほぼ標準的にEQ調整の機能を持つため、そこに任せたほうがいいと判断したそうだ。標準設定でも問題はないが、よりよいバランスを得るため、推奨のイコライジング設定については後日公開する予定だという。

 フラッグシップ機のTwin Pulseは、中低域に厚みがあるが、強調感はなく、ごく自然に音楽を再生できる。楽曲によって、なめらかさと粒立ちの良さが再現され、その音色は、日本でもフランスでもなく、「これこそがイタリアの音」と思えるような特徴を持つ。鮮やかなカラーでペインティングされたハウジングのデザインと同じように、エモーショナルな音色なのだ。

 プロ用途にも対応できるとはいえ、モニターライクなクールな面はなく、どこまでもウォームな音を楽しめる。バイノーラル録音のソースをバランス駆動で聞かせてもらった時は、ヘッドホンのはるか外側に音がピンポイントで定位したことに驚いた。本機は音場感も正確に再現できる実力を持っているのだ。

 密閉型のThe Radianteは、シングルドライバーとは思えないほど、沈み込む低音を聞かせてくれた。パッシブラジエータは、低音を補完する役割で用いているわけではなく、ドライバーの空気抵抗を減らすために装着されている。これによって従来の密閉型のような閉塞感は抑えられ、開放型に近い鳴りの良さと、開放型よりもやや重々しい低音を再生できる。

 Spirit Torinoの製品は、どのモデルも豊富なカラーバリエーションを選択できる。カスタムイヤモニを注文するような気分で、自分だけの1台に仕上げられる。そのぶん高額なヘッドホンだが、所有したときの満足度は高く、思わずニヤリとしそうな逸品揃いである。

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