アキバで商売をするにはコミュニティーが重要
――秋葉原にお店を開いた利点はありますか?
又野さん:KNOWLEDGEが帽子を作っている工場が浅草橋と鳥越にあるんです。なので、帽子ができあがったら職人さんが自転車や車ですぐに届けてくれます。帽子はかさばるから、送料がバカにならないんです。ですがうちはその点、自転車や車で配達してくれるのでコストがかかりません。その分、安く販売できます。
海外ブランドの商品も扱っていますが、店頭の7~8割りはメイドインジャパンです。日本人の職人が作っているので、もちろん日本人の頭に合っています。海外製の帽子とは違い、ストレスなくかぶれます。
――帽子を工場に作ってもらうということは、オリジナル商品ですか?
又野さん:そうです。生地を自分たちで買ってきて、それを持って職人と打ち合わせをします。なので、世界中でここにしかないオリジナル商品ばかりです。しかも帽子は一度に大量に作らないので、定番商品以外は10個程度しかありません。
――10個だけだと、すぐに売り切れてしまいませんか?
又野さん:新商品ができたらTwitterに掲載しているのですが、人気の商品は本当にすぐになくなってしまいます。特に「猫柄」の帽子は男女問わず人気です。
――又野さんにとって、秋葉原はどのような街ですか?
又野さん:いくつかの街で働いてきましたが、いざ自分で店を出して思うのは、店と店のつながりや、コミュニティーがしっかりしているかな、と思います。今、ウチがこうやって営業を続けてこられているのは、かつてあったホットドッグ屋さん「マチガイネッサンドウィッチズ」という店が、いろいろ助けてくださったおかげです。そしてもうひとつ、「秋葉原nico」という飲食店にもお世話になっています。
――2つのお店は、もともと知り合いだったのですか?
又野さん:いや。秋葉原に来るまで知りませんでした。うちに何度も来てくれる常連さんから、「マチガイネッサンドウィッチズという店に、すごい店長がいる」と話を聞いて、紹介してもらいました。実際に会ってみたら、説明できないくらいすごい人なんです。アキバの巨大コミュニティーのボスみたいな人です(笑)。
――今後、KNOWLEDGEはどのようなお店にしていきたいですか?
又野さん:「町の帽子屋さん」になりたいですね。世の中にはいろいろな帽子屋さんがありますが、困ったときはKNOWLEDGEを選んでほしいと思っています。うちで買った商品じゃなくても、帽子のサイズ調整や修理を受け付けています。いまは年間、約3000件くらいやらせてもらっています。
――KNOWLEDGEの商品じゃなくても、いいんですか?
又野さん:今はなんでもネットで買う時代じゃないですか? でも、やはりアパレルは通販で買うとサイズが合わないんですよ。そういうお客さんが、「せっかく買ったのにサイズが合わない」と、助けを求めて来店されます。アキバに来られない方は、郵送でも受け付けています。「帽子、拡張」でググると、たぶんウチが出てくると思いますよ。他の店だと受けないような仕事もやってますからね!
――工賃はどれくらいかかるのでしょうか?
又野さん:一概に言えないんですよね。素材や形、調整の幅によってさまざまなので。それに、装飾が施されている帽子の場合は、一旦パーツを外してから、調整した後に再度つけ直す必要があります。実は去年、練馬区の江古田に2号店を作ったんです。そこは地下にアトリエを併設しているので、アキバではできない修理を行なえます。お近くにお住まいの方は、江古田店にも遊びに来てください。
――最後に又野さんにとって、秋葉原はどのような町ですか?
又野さん:うーん……。6年営業してきて思うのは、趣味の都だと思います。「趣都」とはよく言ったものです。この街に来る人間は、学校のクラスのなかの少数グループが集まっているような感じ。彼らって、行動している人数こそ少ないけど、結束力がすごいじゃないですか? そんな連中が日本中のあちこちから集まってきて、アキバでコミュニティーを形成しています。本当におもしろくて特殊な街だと思います。
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