性能を向上させたモデルを次々と投入
80年代を生き残ったIBM 3090
ここで終わりにならないのがIBMのしぶといところで、1988年には動作周波数を66.7MHzに引き上げたSシリーズ、1989年には69MHzに引き上げたJシリーズがそれぞれラインナップされている。
Sシリーズでは5プロセッサーのIBM 3090 Model 500Sで104MIPSとついに100MIPSの大台を超え、JシリーズハイエンドであるIBM 3090 Model 600Jで134MIPSに達している。
ちなみにこれらの性能は全部整数演算性能だが、浮動小数点演算は? というと、例えばIBM 3090-150で108MFLOPSという数字が出ている。
これはもちろん理論値なのだが、それにしても異様に高いのは、別にIBM 3090本体で処理をしているわけでなく、外付けでVector Facility(ベクトル演算支援機能)を接続し、ここで処理を行った場合の数字が記載されているためで、IBM 3090単体の浮動小数点演算性能はずっと低かった。
また(IBM 3090が登場した)1985年といえば、Cray X-MPが1プロセッサーあたり210MFLOPSで、4プロセッサー構成(=840MFLOPS)までサポートしていることをアナウンスした時期で、これに比べるとVector Facilityも高速とは言い難かった。
これが理由でFPS(Floating Point Systems, Inc.)などと組んでLCAP(Loosely Coupled Array of Processors)というシステムを開発した、という話は連載327回で説明した通りだ。
IBM 3090シリーズはまた、S/370-XAに対応した(というよりESA/370に対応しない)最後の世代であり、その意味ではアドレス拡張こそされたものの、基本的にはSystem/370の延長にある最後のシステムでもあった。これに続くシステムはESA/370(のちにESA/390に改称)に準拠したものに変わったからだ。
そんなわけでIBM 3090は80年代を代表するシステムとして長く記憶されることになり、後継のES/9000が出てもしばらくの間は販売され続けていた。
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