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MoguraVRのゲームとって出し 第89回

白黒の世界で音を頼りに進む

息が詰まるほど怖い、音を駆使するVRホラー「Stifled」

2018年10月04日 17時00分更新

文● Mogura VR

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 今回紹介するのはユニークなVR対応ホラーゲーム「Stifled」。グラフィック表現や技術が進歩を続ける昨今、リッチなビジュアルが要求されがちなVRゲーム。だが、本作はゲームプレイの大半がシンプルなワイヤーフレーム、白黒の世界で表現されており、ビジュアルだけでなくゲームシステムもかなり個性的なホラーVRだ。

 本作の最大の特徴は「音で周辺を探索する」システム。Stifledの大半の場所では周囲が見えず、イルカやコウモリの「エコロケーション」のように、反響音を利用して辺りを探る。マイクで音声を入力する、コントローラーのボタンを押す、あたりに落ちている石を投げるなどして音を発生させ、周囲の様子を把握する。音を立てずにしばらくいると周囲は真っ暗に逆戻りなので、なかなか怖い。音の波紋とともに描かれるモノクロの世界は、独特の美しさがありつつも恐怖感を呼び起こす。はじめから見えている恐怖よりも、見えそうで見えないものが一番怖い。シンプルゆえに恐怖をあおってくる。

ここでは画面左側で滝が勢いよく流れており、画面左だけは常に周囲の状態が分かるようになっている

 水滴の落下する音や配管、ちょっとした滝や小川などは常に音を立てており、プレイヤーが何もせずとも周囲の様子を知らせてくれる。しかしその音が届く範囲は限定的なので、大抵の場合はプレイヤー自身がきちんと音を発さなくてはならない。

 では常に大きな音を立てていればいいかと言うとそうでもなく、場所によっては赤いフレームで表示される「敵」が襲ってくる。本作ではプレイヤーは無力であり、敵と戦うことは一切できない。しかし彼らもまた暗闇の中にいるため、音さえ立てなければこちらにやってくることはない。この「音で周囲を探る」「しかし、音を立てることは危険でもある」というのがこのゲームの根幹をなしている。周囲を手探りならぬ“耳探り”で進んでゆく恐怖感は本作ならではだ。

ここまで近づかれたら一巻の終わりだ。なるべく敵を遠ざけたい

 敵は音に近寄っていくため、あたりに落ちている石を投げたりすることで誘導できる。落ちているアイテムを投げてうまくかわしていこう。プレイヤーの足音に反応することもあるので要注意だ。しゃがめば足音を小さくすることができる。また、小川や水たまりの上を歩くときはしゃがんでいても音が出てしまうため、なるべくそういった場所を避けることが望ましいだろう。

 プレイヤーが探索するのは基本的に室内や洞窟といった閉所となるケースが多い。多くは配管が多数ある下水道のような場所が舞台となり、バルブの開け閉めなどのギミックもある。もちろん動かす際は音が出るので、周囲に敵がいないかどうかはしっかり調べておかないと、いつの間にか画面が赤く……なんてことも。作業中に視界の端のワイヤーフレームが赤く染まっていくのはかなり怖い。

 また、本作のステージはモノクロの場所ばかりではなく、きちんとカラーのついた室内や屋外を探索する場面も。本作では基本的には「色のついている、敵の出てこないアドベンチャーパート」と「モノクロの、音で周囲を探るホラーパート」を交互にプレイすることになる。こうした場面では敵は出現しないものの、ピアノを弾いていた女性が近づくと人形に変わっていたり、誰もいない場所からボールが転がってきたり、電気が突然点滅したりするなど、ホラー演出はかなり怖い。ゲームだと分かっていてもVRでは思わずドキッとしてしまうだろう。全体的にBGMもほとんどなく、静かであるがゆえに「音」の恐怖が際立つはずだ(筆者もいちいち物音にビクつくこととなった)。

 本作をプレイするにあたってやや残念だったのは、事前のPVや公式サイトなどで大々的にフィーチャーされていた「ホラーパート」からゲームが開始されず、色つきのアドベンチャーパートからスタートすること。このアドベンチャーパートは「真っ暗闇の中で音を立てて周囲を探る」本作の面白さが伝わりにくいという問題もあり、最初の時点で「あれ? 思っていたのと違う……」と違和感を覚えてしまうプレイヤーもいるはずだ。最初からモノクロのパートで開始されていれば……と切に思う。また、VIVEコントローラーに対応しておらず(公式サイトでは対応との記載があるものの、色々試したが動作しなかった)、XBOX向けのコントローラーでしか遊べないのも痛いところではある。個性的で魅力的なゲームだが、そうした点は玉に瑕だ。

 本作を最大限楽しむためにはマイクを接続する必要があるほか、VIVEコントローラーに対応していないため別コントローラーが必要になる点や、最初からこのゲームの面白さのコアを味わえるわけではない……など惜しい点もいくつかある。しかしそれらを考慮しても、独特のシステムによる、他のVRホラーゲームでは体験できないような恐怖感や面白さを備えており、十分プレイするだけの価値がある魅力的なタイトルだ。ちょっと独特なシステムのVRゲームを遊びたい人、ゾンビばかりのVRホラー以外のものを楽しみたい人にはかなりオススメできる。ぜひマイクをきちんとセッティングして、恐怖をその耳で“聴いて”みてほしい。

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