IsilonがGCP上のサービスに、開発中モジュラー製品もチラ見せ、「Dell Technologies World 2018」レポート
“世界最速”「PowerMax」ストレージなど、Dell EMC新製品まとめ
2018年05月14日 07時00分更新
「XtremIO X2」エントリー価格を55%引き下げ、GCPクラウド版Isilonも発表
昨年の同イベントで第2世代(X2)モデルが発表されたオールフラッシュアレイの「XtremIO X2」のアップデートとしては、新OS(XIOS 6.1)によるWANレプリケーションのトラフィック効率化、前世代(X1)比でエントリー価格を最大55%引き下げるエントリーモデルの提供開始が発表されている。
新OSでは「メタデータ-アウェア レプリケーション」と呼ばれるテクノロジーを搭載しており、リモートサイトには重複排除済みのデータ(ブロック)だけを転送する仕組みとなった。これにより、リモートサイトへのWAN帯域幅を75%以上削減し、大規模ワークロードにおけるRPOも改善する。加えて、DRサイトにおけるストレージ容量も最大38%削減できるという。
また、小規模ワークロードながら高いパフォーマンス/低レイテンシを必要とするユーザー向けのエントリーモデルとして、物理容量34.5TBから最大69.1TB(重複排除/圧縮済み実効容量369TB)まで拡張できるモデルが登場している。
スケールアウトNASである「Isilon」では、パブリッククラウド上のマネージドサービスである「Isilon Cloud for GCP」が発表された。
これはIsilonのOSである「OneFS」をコンテナ化してGoogle Cloud Platform(GCP)上の顧客専用環境に配置し、GCPのコンピュートクラスタ(サーバー群)に対して低レイテンシのファイルサービスを提供するもの。これまでIsilonではアーカイブデータ(フローズンデータ)の格納にAWSやAzureのパブリッククラウドを利用する「CloudPools」を提供してきたが、今回のサービスはそれとはまったく異なるものだ。
Dell EMC ディレクターのヴァラン・チャブラ氏によると、Dell EMCが運用管理するマネージドサービスとして提供され、現在米国でアーリーアクセスプログラムがスタートしている。
チャブラ氏は、現在パブリッククラウドで提供されている各社のファイルサービスはまだまだ未成熟であり、この市場にPBクラスのスケーラビリティ、エンタープライズクラスのデータサービスとセキュリティ、管理性を持つIsilonが投入される意義は大きいと強調した。ターゲットとしてはHadoopやAI/機械学習、HPCといったワークロードをGCP上で稼働させたいと考える顧客層だという。アーリーアクセスプログラムには、ライフサイエンスリサーチ企業、自動車メーカーなどが参加している。投入先のクラウドとしてまずGCPを選択した理由についても、「豊富なデータアナリティクスサービスを提供していることが大きな理由のひとつだ」と説明した。
また、Isilonをオンプレミスに導入して制作した動画データを保管しているが、それを利用するほかの拠点にはIsilon環境がないというメディア企業でも、採用が検討されているとチャブラ氏は紹介してくれた。
「Isilon Cloud for GCPは、Isilonのハードウェア製品と競合するものではなく、補完的な役割を果たす。顧客に対し、ロケーション的な選択肢を提供するもの。すべての業種の企業が興味を持っている」(チャブラ氏)
データ分析/AI特化の4ソケットPowerEdge、モジュラー型「PowerEdge MX」
PowerEdgeサーバー製品群では、ビッグデータ分析向けの2U/4ソケット「PowerEdge R840」と、リアルタイムデータ分析やディープラーニング/機械学習などの用途向けに4U/4ソケット「PowerEdge R940xa」が発表された。2018年第2四半期の提供開始予定。
“xa=Extreme Accelerate”を意味するR940xaは、最大4台のダブルワイドGPU(または最大8台のFPGA)を内蔵でき、最大24台の2.5インチSSD/HDDドライブに加えてNVMeドライブ(CPUダイレクト接続)も従来モデルの2倍(4台)を搭載可能。メモリ容量は最大6TB。CPUとGPUが1:1の比率になることから、ディープラーニングなどの処理を超高速に実行できるとしている。クラーク氏によると、同マシンのSAPベンチマークで従来を9%上回る新記録を達成したという。またR840では、2.5インチSSD/HDD×24台+NVMeドライブ(PCIe接続)×12台、またはNVMeドライブ×24台の大容量内蔵ストレージが構成できる。こちらも最大メモリ容量は6TBだ。
「R940xa、R840は、データストリーム処理、データアナリティクスに特化したサーバーとして最も高密度の製品となる。非常にターゲットを絞り込んだ製品だ」(クラーク氏)
これらの新製品に加えて、今回のDell Technologies Worldでは現在開発中の「PowerEdge MX」も披露された。同社が“Kinetic Infrastructure”と呼ぶこのモジュラー型インフラ製品は、高密度実装されたCPUやメモリ、内蔵ストレージ、ネットワークといった物理リソースをプール化し、ワークロードへの割り当てを柔軟に変更できる製品だ。
Dell EMC SVPのマット・ベイカー氏は、PowerEdge MXでは従来提供してきたモジュラー型インフラ「PowerEdge FX2」よりも大きな規模の構成が可能になると説明し、主にはSDI(Software-Defined Infrastructure)やHCI(Hyper-Converged Infrastructure)、クラウドネイティブなアプリケーションの基盤として使われるだろうと語った。
PowerEdge MXはミッドプレーンのないハードウェア設計が大きな特徴で、これにより新しいプロセッサやストレージタイプ、25GbEや100GbE以降のネットワーク仕様、PowerMaxが提供するNVMe over Fabricにも対応していくという。ベイカー氏は、従来のミッドプレーンを備えたシャーシ型製品では、ミッドプレーンが障壁となって次世代テクノロジーへの対応ができなくなり、3~5年ほどで陳腐化してしまっていたと説明した。
「PowerEdge MXはミッドプレーンがないことで、新しいファブリックなど、シームレスに次世代のテクノロジーを追加することができる。次世代、次々世代と、長期間にわたって進化させながら利用し続けられる製品になるだろう」(ベイカー氏)
また同社の公式ブログ記事によると、Dell EMCではKinetic Infrastructureにおいて、メモリ主導型コンピューティングの実現を目指す業界団体「Gen-Z Consortium」が策定するGen-Z仕様を採用し、これまでCPUと紐付けられていたDRAMメモリやSCM、GPU、FPGAなどのリソースをより柔軟に組み替え可能にしていく計画だという。将来的には、こうしたテクノロジーもPowerEdge MXに取り入れられるものと考えられる。
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前回記事でも紹介したように、今回のDell Technologies WorldではDell EMCだけでなく、Dell Technologiesファミリー全体の総合力が強調された。なかでもクラウドネイティブアプリケーションの基盤を構成するVMware、Pivotalの役割は大きく、両社の発表も行われた。
次回記事ではヴイエムウェアCEOのパット・ゲルシンガー氏による基調講演や、VMwareおよびPivotalに関係する発表群を紹介したい。