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ガルパン最終章が、ドルビーアトモスで上映!

やっぱりガルパンはいいぞ! 7年かけてここまで来た迫力の音質

2018年04月04日 19時00分更新

文● ASCII

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日本の映画音響、その未来がかかった試みかもしれない

 ファンが育てたガルパン。その思いに感謝しつつ岩浪音響監督は以下のようにコメントした。

岩浪 「イオンシネマ幕張新都心は天井に8本+8本のスピーカーを備え付けていますが、ここがアトモス対応の劇場を建てるためのひとつのハードル。アンプもスピーカーごとに必要で、ケーブルものべ何キロメートルの長さが必要です。

 こういう劇場なのに、かける日本映画がほとんどない。2013年にゼロ・グラビティという作品があった。アトモスありきのすごい音響設計で日本はハリウッドに10年遅れたと思った。これに追い付け追い越せで、劇場アニメのオファーがあるたびにアトモスで作らせてくださいとお願いしてきた。もちろんガルパンもそうだが、これまで実現できかった。

イオンシネマ幕張新都心の支配人も舞台に上がって、フリントと同じポーズを

 皆さんのおかげです。立川シネマシティの極上爆音上映から始まり、4DXや日本全国の様々な上映を経て、このイオンシネマ幕張新都心で9.1chアップミックスの上映ができた。その上映にたくさんのファンのみなさんが足を運んでくれて、アトモスの布石になった。9.1chのガルパンをたくさん見てくれたという実績があったおかげです」

 作品に対する思い入れの強さに関しては、山口氏・小山氏も負けていない。

山口 「日本の映画音響の未来がかかっている試みかもしれない」

小山 「(形式的にはOVAのイベント上映だけれど)スタッフ全員が、映画を超えようという気持ちでやっています」

 映画において「音響」はとても大切な要素だ。しかし昨今の劇場作品では軽視されがちな面もある。理由のひとつは作品を楽しむ環境の変化だ。ワンソース・マルチユース化が進み、劇場作品も公開後のパッケージ販売やネット配信が前提になっている。

 これは様々な機器で作品が再生されるという意味でもあり、パソコンやモバイル機器の内蔵スピーカーなど貧弱な再生環境も想定せざるをえない。

 アクション映画で盛大な爆発音を入れても、再生機器の性能が足りなければ低域が抜け落ちた違和感のある表現になる。静寂と喧騒の対比で音の大小を広くとっても機器や環境によっては聞き取れないといった問題が生じてしまう。結果として使う周波数のレンジを狭めたり、ダイナミックレンジ(音の強弱)に制限をかけたりするなど、無難で最大公約数的な選択をせざるを得ない側面もある。ハリウッドですらそうだという。

 また、ビジネスを効率化しようと考えれば、決まった劇場でしか再生できない最新規格の採用にも消極的になる。ドルビーアトモスのような先端的の音響システムに合わせて制作の手間とコストを掛けられる作品は、一部の大作を除いてないのが現実だ。

 そんな中ガルパンは、テレビシリーズから7年にわたっていろいろな活動を行い、制作者の意気込みで制約を乗り越えてきた経緯がある。『ガールズ&パンツァー 劇場版』で話題を集めた、シネマシティの極上爆音上映や、大洗文化センターにラインアレイスピーカーを持ち込んで実施した大洗凱旋特上爆音上映など、今までにない取り組みもあった。

 一方で『ガールズ&パンツァー これが本当のアンツィオ戦です!』では、OVAなのでステレオ制作でいいという声もある中、2.1chをベースにドルビーの技術を使いステレオの音を後方に広げ、4.1chにするなど、劇場上映に向けた苦労をしてきた。

 今回イオンシネマ幕張新都心では岩浪監督が直々に音響を調整した「ULTIRA センシャラウンド ドルビーアトモス イオンシネマ幕張新都心Mix」で公開される。実際に作業したスタジオの音になるべく近づけることをコンセプトに調整したという。

 トークショーの中で小山氏は「本当にアトモスでガルパンをやりたいと思っていました。ここまで向いている作品はないし、効果音もここで勝負しないとアニメや邦画の音響の将来はないぐらいの気合を入れて作った」と話す。

 ちなみにガルパン 最終章のブルーレイディスクでは、DTS HD MasterAudioの5.1chと、PCMのステレオ、そしてDTS Headphone:Xの音声が収録されているが、5.1chは劇場と同様ダイナミックレンジを広くとり、ステレオはコンプレッサーを利用して聴きやすく、Headphone:Xは劇場と同じノーコンプの音声になっているとのこと。ブルーレイディスクを持っている人はこれらと劇場の音の違いを確かめてみるのも面白いかもしれない。

 ガルパン最終章は、アニメの枠を超え、映画における音の表現に対して真剣に向き合った作品だ。第2話以降ではよりチャレンジしがいのあるいばらの道を進むシナリオになっているとのこと。トークショーの最後に岩浪音響監督は「劇場でなければ体験できない音だからこそ、ガルパンでやりたかった。ガルパンの音がいいと言ってくれたのはファンの皆様なので、最高の音を聞かせたいと思っている」と語り、多くの人に見てもらうことで、次につながるとアピール。「本当に頼むよ!」という言葉でイベントを締めくくった。

「ガールズ&パンツァー 劇場版 シネマティック・コンサート」追加公演
音響監督・岩浪美和「すっごい音、聞かせます!」

 「ガールズ&パンツァー 劇場版 シネマティック・コンサート」の追加公演が、4月に大阪と横浜でも開催決定。「音」に対して並々ならぬ拘りを見せる、本作品の音響監督岩浪美和氏による、ライブ音響調整が加わる事が決定している。

 「ガールズ&パンツァー 劇場版 シネマティック・コンサート」は、2015年に公開した映画「ガールズ&パンツァー 劇場版」のBGM部分を、東京フィルハーモニー交響楽団の生演奏で楽しめるイベント。2016年に大宮ソニックシティ、パシフィコ横浜 国立大ホールで開催。その追加公演が実施される。

 追加公演の第1弾は、作品の舞台・大洗町の大洗文化センターで開催済。この公演から音響監督・岩浪美和氏によるライブ音響調整が実施され、オーケストラの生演奏はしっかりと聞かせつつ、劇中の効果音やキャラクターのセリフをバランスよく立たせるという、これまで以上に没入感の増した公演となった。このライブ音響調整は、大阪および横浜の公演でも実施される予定。「劇場版」のこの形態でのコンサートは、最後になる予定とのことで、ぜひ参加したい。

 岩浪音響監督は、アトモス先行上映会後のトークショーでもこのイベントについて言及。音楽に合わせて台詞、音響効果、さらに重低音をリアルタイムでコントロールし、「生演奏の躍動感や繊細な表現はしっかりとお届けしつつ、出すところは出す!」としていた。一生の記憶に残る公演になるのではないかとのこと。

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