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業界人の《ことば》から 第287回

30年前、家電は憧れだった 今パナソニックは憧れを作れるか

2018年03月23日 09時00分更新

文● 大河原克行、編集●ASCII.jp

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憧れを作っている会社と言いたい

 そのパナソニックが家電事業の新たなビジョンとして「Designing Your Lifestyle from Home(HOMEから生まれる新しいくらしの喜びで)」を、100年目を迎えたタイミングにあわせて打ち出した。

 同社は2015年に「Aspire to more(くらしにもっと憧れを)」という家電の事業理念を掲げており、今回発表したビジョンは、これを実現するものになる。

 パナソニック 専務執行役員 アプライアンス社の本間哲朗社長は「パナソニックのこれまでの家電事業は、壁と屋根に囲まれた家を『HOME』としてとらえ、ビジネスを行なってきた。だが、これからのパナソニックの家電事業は、コミュニティーやソサエティーとつながることで、暮らしや人生に新たな喜びをもたらす存在に『HOME』が進化することと捉えている。家電と家電をつないだり、家電と社会をつなぐことで、より幅広い範囲を『HOME』とし、新たな製品やサービスを提供していくことになる」とする。

 そして「家のなかに留まらず、心が安らげ、大切な人と過ごすことができる場所をHOMEと定義。新たなHOMEに対する体験提案をし、HOMEの世界に寄り添いながら、暮らしの憧れを届けることになる」と、アプライアンス社の本間社長は語る。

 本間社長がこだわるキーワードは、「憧れ」である。

 「いまから30年前の家電は憧れの存在であった。その間、パナソニックは日本の家電メーカーから、世界の暮らしに寄り添う家電メーカーに進化した。そして、パナソニックの100年の歴史のなかで、家電は常に事業の中心にあった。パナソニックは、これからの100年も家電事業を通じて新たな喜びを灯す存在になりたい」と語る。

三種の神器と呼ばれ家電は憧れの商品だった

 続けてこうも語る。

 「パナソニック アプライアンス社は、なにを作っている会社なのかと聞かれれば、私は『憧れを作っている会社』だと答えたい。これからも、暮らしの憧れを作り出し、世界の人々に届けていくことが、未来に向けた仕事であると信じている」。

憧れを作るにはネット接続が不可欠

 パナソニックは、新たな「憧れ」を生み出すためには家電単体での提案には限界があると考えている。

 「これまでのように、個別に機能を提供する家電に留まらず、個々の家電が連携しながらそれぞれの生活シーン、空間にあわせた新たな体験を提供することになる。総合家電メーカーであるパナソニックの強みを生かすとともに、様々な領域のパートナーと連携して、顧客一人ひとりの生活シーンやライフステージにあわせた体験、サービスを提供していきたい」と語る。

 たとえば、食生活という切り口では、ユーザーのコンディションや生活パターンを把握しながら、最適なレシピを提案し、食材の配達や保管、調理までをシームレスにサポート。時間にゆとりがない平日には、不在時でも食材の受け渡しを可能にする宅配ボックスと、自動で調理する調理家電との組み合わせで、料理の負担を最小化。

 一方で、ゆとりがある休日はこだわり調理にシフトし、こだわり食材の調達や、ユーザーのスキルにあわせた調理方法を提案して、食を通じた非日常体験をサポートするという。

 これらを実現するためには、レシピを提供するサービス事業者や食品生産流通事業者、宅配/運送事業者、健康管理サービスなどのパートナーとの連携で、トータルサービスを提供することが不可避だ。今後のパナソニックの家電事業はそうしたところにまで踏み込むことになる。

 また、こうしたサービスを利用するには、インターネットの接続が不可欠だが、パナソニックはNTTドコモとの協業により、省電力広域無線通信技術「LPWA(Low Power Wide Area)」を活用し、常時接続したIoT家電を実現する考えを示した。インターネット回線がない家庭でも、家電の電源を入れるだけで、クラウドサービスが利用できるようになるという。

 一方、理美容および健康の領域では、日中の活動データやくらしのデータ、睡眠データなどから、快眠アルゴリズムを開発し、快適な眠りを実現する睡眠関連サービスも提供する。ここでは、寝具メーカーの西川産業と協業。睡眠を軸にした美容や食、教育などの様々な領域でのサービスも提供していく考えだ。

 アプライアンス社の本間社長は、「睡眠を軸にさまざまなパートナーとの協創が広がると考えている」と述べた。

 101年目以降のパナソニックは、家電とサービスの組み合わせで「憧れ」を創出することになる。

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