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まとめ買いをやめられないでしょうか:

コンビニと冷蔵庫(集中と分散)

2018年03月08日 11時00分更新

文● 盛田 諒(Ryo Morita)

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 アスキーの盛田 諒(34)です、こんにちは。1歳児の親をやっています。赤ちゃんが生まれてから最長の処理時間を必要とする家事、「料理」の手間について考えることが増えました。最近は「コンビニが進化すれば大きな冷蔵庫はいらなくなる」という思考実験をしています。

 いま冷蔵庫は401L以上の大容量モデルが売れています。わが家のような共働き世帯を想定すると、仕事を終え、保育園のお迎えに行き、帰ったらすぐ赤ちゃんのごはんとなり、スーパーに寄る時間がとれません。そのため食材のまとめ買い・つくりおき需要が高まり、大容量の冷蔵庫が必要になるしくみです。わが家では週末の買い出しにくわえ、生協で3食分(3日分)の調理キットなども買っています。生協は週1回のペースで宅配されるので、まとめ買いの一種です。

 ただ、まとめ買いやつくりおきをすると食品の在庫管理や廃棄率が問題になります。また大容量モデルの冷蔵庫は実売価格40万円などで高級です。かといって容量の少ないモデルに大量の食材をつめこむと、冷却効率が下がり電気代が上がってしまうため大容量モデルが有利になります。

 個人的には、「平日スーパーを使えないため、まとめ買いをするのに、40万円のでかい冷蔵庫を買う」という理屈は、高いお金を払って理不尽を受け入れているだけのようで、不満です。

 ここで、もし帰り道のコンビニで1食分だけ調理キットをパッと買えるようになれば、まとめ買いの必要性は薄くなり、在庫管理の手間も緩和されます。家庭にある冷蔵庫の代わりにコンビニの巨大冷蔵庫を使えれば、課題が解決できるわけです。無理やりアスキーらしくたとえると、ネットワーク(流通網)を前提として、パソコンではなくクラウドに情報を保存しておくようなものです。そうすればスマートフォン(小さな冷蔵庫)でも対応できます。集中と分散です。

 これをはじめたのがローソンです。3月6日から生鮮受け取りサービス「ローソンフレッシュピック」を一部店舗で開始しています。生鮮スーパーの食材をアプリで朝予約して、夕方ローソンで買えるサービスです。成城石井やオイシックスなど有名ブランドの食材を扱っています。レシピと材料をセットにした調理キットも売っているので、夜ごはんに必要なぶんだけ買って帰れて便利です。ネットスーパーとちがい、宅配時間を気にしなくていいのも良いところです。

 一般に、コンビニはスーパーほど生鮮食品の扱いが多くなく、スーパーはコンビニほど立地がよくありません。スーパーはコンビニよりも売り場面積が広く、お客さんも多いので、買うまでに時間がかかります。入口をデジタル化し、物流を工夫することで、立地と回転のいいコンビニでも、スーパー並みの生鮮食品を扱えるようにしたというのは画期的だと思います。アスキーで記事を書いている1人暮らしの20代男子が「コンビニがあれば冷蔵庫はなくていい」と言っていたのですが、ファミリー層が似たことを言えたらすごいことです。

 ただローソンの生鮮受け取りサービスはスーパーの良さである「安さ」がないので、今後はコンビニ競合各社から、安くて便利な生鮮受け取りサービスが登場することを期待しています。そうなればいつか冷蔵庫に大量の食材をまとめ買いしておくこと自体が非常識になるかもしれません。

 一方、ネットスーパーが台頭し、コンビニが進化し、カット野菜や調理キットの人気が集まって、冷凍食品の品質も向上した今、冷蔵庫も進化の余地があるのではないかと感じます。コストコなどで大量に冷凍食品を買っておくために、手ごろな価格の専用フリーザーが売れたという話もあります。コンビニに負けず、料理の手間をスマートに省いてくれる、新しい流通事情を前提とした冷蔵庫の登場にも期待したいところです。




書いた人──盛田 諒(Ryo Morita)

1983年生まれ、家事が趣味。0歳児の父をやっています。Facebookでおたより募集中

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