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柳谷智宣のkintoneマスターへの道 第30回

kintone Café Japan Tokyoレポート第2弾!

kintone改革を止めない! 業務改善はユーザーコミュニティ駆動で

2017年11月24日 14時30分更新

文● 柳谷智宣

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コミュニティに育ててもらったとしか言いようがない

 何ヵ月もかけ、味方になってくれるいくつかの部署に声をかけ、kintoneを導入してもらった。その後、会社として正式採用にこぎつけた頃、このコミュニティと出会った。

 「今私がこうしてしゃべっているのも、コミュニティに育ててもらったとしか言いようがありません」と松田さん。いろいろな人とつながり、kintone Caféでライトニングトークをしたり、kintone hiveで事例紹介をしたりした。そんな流れで、自分の自己紹介をするとき「非公認エバンジェリスト」なんて書いてたという。

 コミュニティに育ててもらったというのは、単に話して面白かったということではなく、自身の成長にも大きく寄与したという。イベントなどで知り合った人たちと話すと、技術的な面に加えて、運用の方法や困っていることを共有したりして、スキルが磨かれていった。

 本社でkintoneを導入し、推進する部門にいた松田さんだが、ある時、まったく違う業務の部署に異動することになった。普通であればあきらめるところ、「私はこの世界(kintone)でやると決めていたんで、どうしようかな、と考えました」と松田さん。そして、自分でkintoneに携われる仕組みを作ってしまえばいいと思いついた。

 そのころはさまざまな部署にkintoneが導入されるようになっていたので、社内にコミュニティを作り、横のつながりで働きかけていきながら、自分はその中心にいるようにした。松田さんは「ある意味、地下組織ですよね。秘密結社みたいなのを作って」と笑う。

 そんな風に活動していると、若くてセンスのいい人に出会うことがあるそう。そんな時は、集中的に仕込んでいくと、周りの人を世話してくれるようになるので、松田さんも楽になったという。

 松田さんの会社で契約しているkintoneのユーザー数がグラフで表示された。これがまたちょっと独特なのだ。普通は、テスト導入期間があり、それが終わるとドンと全社導入する感じになるはずなのだが、今回のケースでは階段状に右肩上がりに導入されている。これは、毎週のように部署ごとに導入が進んでいるため。松田さんとしては、ある意味、短期間に数十社の相手をして、業務改善を進めた感じだという。

 そしてユーザーが1000人を超えたあたりで、松田さん1人では手が回らなくなる。そこで、鵜飼いの鵜を放つように、いろんなところにミニリーダーを放った。そんな中、松田さんは、ユーザーコミュニティの駆動型でやっていくしかないと考えた。

正式採用後に、右肩上がりに徐々にユーザー数を増やしていった

 その頃、kintoneのアップデートで組織の管理者を設定できるようになったそうで、組織の管理者を増産。コミュニティを作って、勉強会を開き、運用できる人を増やしていったという。

 「誰でもkintoneに触れるが、それを使って何かをなすというのは難しい。ハンズオンをいくらやっても業務改善できる人は育たないということです。操作を覚えることは大事ですが、業務改善には違う要素が必要になってきます」と松田さん。

 業務やkintoneの知識はもちろん必要だが、もっとも重要なのは「変えようとする心」だという。仕事やシステムは与えられるものと考えるのではなく、現状に満足しないで、改善点を思いつき、改善することに喜びを感じる人を発掘することが重要だという。kintoneでは1日のうちに、PDCAを数回回す速さが求められるので、そのようなモチベーションを持った人が必要になってくるという。

知識は必要だが、改善する喜びを感じる人がPDCAを回すと業務改善につながる

 2018年1月から「Kintone認定資格試験」がスタートする。すでに予約の受け付けは始まっているが、松田さんは先駆けてプレテストを受けている。

 「サイボウズの本気度が伝わってくるものすごいいい試験でした。私が受けたのはアプリデザインスペシャリストですが、kintoneの機能を問うてる試験ではなく、kintoneを使って業務改善をするリアルなケースが試験に出てきて、その中で問題を解いていく。1時間で50問を解かなければいけない。瞬発力が求められます」と松田さん。

 この瞬発力は、kintoneでも求められるという。顧客との対面開発2時間でカタを付けたり、業務改善を高速で回していくには、必要なスキルだそう。松田さんは、無事プレテストに合格し、今度からは自己紹介や名刺に「kintone認定アプリデザインスペシャリスト」と書くという。

業務改善のシナリオを構築できるかどうかを問われるテスト

 できる人は、自分と同じような人を育てたいと考えてるものだが、なかなか難しいもの。そこで松田さんは、どんな経験をすれば業務改善をできるようになるか、というのを体系化して広めようとしており、そこで立ち上げたのが「プロジェクト・アスノート」なのだ。現在は、会社の中で「さるキン」というコミュニティを広げ、勉強会などを開催している。サルでもできるKINTONEということで、アクティブに活動しているという。

 とはいえ、自分の会社の中だけでやっていると刺激が少ないし、ほかの会社の業務改善ノウハウももっと吸収したいとも考えている。そして、松田さんが経験したことがほかの人に役に立つこともある。そこで「さるキン」をオープンにして、kintone Caféに組み込み、そこに人間をどんどん送り込んでいくということをやりたいそう。社内で生まれた地下組織ごと、コミュニティにコミットするといった、新しい取り組みを実現させたいという。

社内コミュニティをオープン化して、kintone Caféに組み込みたいと松田さん

 「今、世の中では働き方改革ということで、会社の制度を変えなさいよとやってますが、本質は制度を変えることではなく、働いている人がどういう気持ちで働いているかだと思います。中には、コミュニティ駆動の業務改善という新しいパターンもあり、要は自分自身のマインドセットだと思うんです。周りの環境に文句を言っているだけじゃ何も変わらなくって、今日から俺はこうやるぞと思えばいいだけです。やっぱり、やるかやらないか、だけだと思います。そう決めてしまうと、おのずと行動も付いてくるので、壁を越えられるのかな、と考えました。

 これからはそういう人間を世の中に増やしていきたいと思っていて、今後もkintoneのコミュニティを盛り上げていきたいと思います」(松田さん)

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