6LED光学心拍計を新採用
ポラール・エレクトロは1977年に指先で計測する心拍計で特許を取得、1982年に世界初のワイヤレス心拍計を発売した、心拍計のパイオニアである。プロアスリートのものだった心拍トレーニングを、より多くの人が気軽におこなうために、ハードウェアとソフトウェアを開発製品化し続けている。筆者が会員のスポーツクラブでも、スピニングのプログラムにポラールの活動量計とグループウェアが使われている。
ポラール・エレクトロ・ジャパンは7月27日に、GPS心拍計付きランニングウォッチ「M430」を発売した。これは中堅ランナー向けの「M400」に6LED光学心拍計を加えたモデルで、スポーツだけでなく24時間7日間使える製品を目指しているという。
M430はリストウォッチとして使えるように時計画面を常時表示、睡眠時も装着できるように通気性の良いストラップを採用し、日常生活防水で51gの軽量設計になっている。一般的に上級モデルになるとカラー液晶やタッチパネルが採用されるが、M430は日常生活でも使うことを重視して、消費電力の少ないモノクロ液晶を採用した。
240mAhのリチウムイオンバッテリーを搭載し、GPSと心拍計測を併用したトレーニングでは最大8時間の使用可能という。時計モードで活動量計機能を使って20日間の電池寿命がある。スリーププラス機能により、睡眠時間だけでなく睡眠の質を計測、その日の睡眠状態に対するアドバイスを表示する。
ポラールが取り扱うカテゴリーには、活動量計、スマートウォッチ、GPSランニングウォッチがある。M430はランニングウォッチというカテゴリーだが、心拍計の内蔵により、活動量計の機能をプラス。VO2max測定とスリーププラスに対応した。また、スマート通知でFacebookの新規書き込み、LINEのメッセージなどを表示、メールの受信、電話の着信などをバイブレーションで知らせてくれる。
プロトライアスリートがM430を使って実地トレーニング
M430の発売に先立って、ポラールはトライアスロン日本代表として2000年のシドニーオリンピック46位、2004年のアテネオリンピック32位の成績を残したプロトライアスリート西内洋行氏を講師に招いて、少人数での先行体験会を開催。筆者もそれに参加して、トラックを走っての心拍ゾーントレーニング、記録したデータを「Polar Flow」で分析して、ペース管理の方法などを学んできた。
M430の特徴はハードウェアだけでなく、クラウドにデータをアップロードして管理、分析がおこなえるPolar Flowをブラウザーで活用できることだ。スマホ用アプリのPolar Flowもある。初期設定からウォッチの設定、スポーツプロファイルの設定などをM430本体を使わずに、PCやスマホのカラー画面を見ながら快適におこなえる。
スマートコーチング機能で、目指せフルマラソン完走
座学では斉藤陽一郎氏がPolar Flowの「ランニングプログラム」を使って、フルマラソンに挑戦するメニューを自動生成するデモをおこなった。
Polar Flowには、M430が計測したデータを分析しユーザーのトレーニング実績や運動量にあわせた、ランニングプログラムを作成する独自のスマートコーチング機能がある。例えば、出場予定のランニング大会の日程を登録すると、ユーザーに適したランニングプログラムをPolar Flow上で作成し、M430がランニングコーチになるのだ。
最短22週間あれば、フルマラソンを完走するトレーニングを完了できるという。1週間当たりのトレーニング量、平均時間、自己の技量などを踏まえて無理のない計画が作成される。
もちろん、その前にハーフマラソン用のメニューを済ませておくことが望ましいと齋藤氏は語った。提案されたプランはランニングだけでなく、ストレッチ、筋力トレーニングなども含まれ、推奨されるメニューを動画で視聴できタイムもカウントダウンされる。
毎日のトレーニングの結果は、Bluetooth経由により自動的に記録し分析される。これらのグラフを見ながら、翌日のトレーニングへのモチベーションを上げるのだ。
VO2maxを計測し「高効率ラン」を実現しよう
西内洋行氏は学生時代から、心拍トレーニングを取り入れるためにポラールの製品を愛用しているという。いかに低い心拍数を維持しながらレースを完走するかに着目して、独自の高効率動作を提唱。スイム、バイク、ランでエネルギーロスの少ない動きをすることで、自らもレースで成果を出している。
今回の座学では、高効率の基礎をポラールで測定した心拍数データを踏まえて解説した。西内氏は24時間、GPSランニングウォッチを身につけて、活動を記録していないと不安になるという。
充電中はどうするのかという質問に対して「同じモノを2個持っているので、つけ替えてから充電する。そうしているアスリートは多い」と答えた。彼によれば高効率ランを身に付ければ、トライアスロンレース中もほとんど心拍ゾーン3を維持したまま、無理せずタイムを出せるようになるそうだ。後半では骨盤と腸腰筋の使い方、走行姿勢についてを競走馬やランウェイでのモデルの歩き方など、ユニークな動画を交えた講義となった。
彼は高効率動作の指標のひとつとして、VO2max(最大酸素摂取量)を上げている。これは有酸素パワーとも言われ、トレーニングによって増やせる。VO2maxを知ることで、その人に合った運動強度が設定できるため、心拍ゾーントレーニングの精度を高めるのにも有効である。1分間にどれぐらいの酸素を体に取り入れられるかを測定するため、これまでは全力疾走やトレッドミルを使っての12分間走など、かなりハードな運動を伴う測定方法しかなかった。
しかしM430のフィットネステストを使えば、安静時の有酸素運動能力を約5分間測定するだけで、VO2maxが得られる。筆者のテスト結果は35で「良い」との診断、43が「最高」なのだが、西内氏は何と80という驚異的な数値を記録。この数値を元にM430はフルマラソン予測タイムや運動後のリカバリータイムなども教えてくれる。