プリンストンが販売する高機能ストレージ「Drobo」を活用しよう 第22回
10TBを実現したヘリウム充填HDDの秘密をHGSTに聞いた
合計21万円! 10TB HDDを3台、Droboに使ってみた
2017年04月06日 11時00分更新
NAS向けHDDはデスクトップ向けとは違う!
Q:Droboでヘリウム充填HDDを使用する際のメリットなどありましたら教えてください。
A:Droboに限りませんが、NAS/DASのいずれでも複数のHDDを搭載するマルチベイのストレージを使用するなら、RVS(回転振動抑制センサー)を搭載したものがお勧めです。HDDはアームがスイングすることで、どうしても振動が起きます。1個ではそれほどでもありませんが、複数HDDをまとめて使用している場合、特にRAIDを組んでいるような場合はいっせいに同じ動きをするため揺れが大きくなり、ヘッドの軌道が乱れます。RVSは振動を検知して、電気的にアームの動きをキャンセルしてくれます。
還暦!を過ぎたHDD
Q:HGSTさんをはじめとするHDD市場のメーカーは非常に移り変わりが激しいですが、現在の至るまでの変遷をざっくりと教えてください。
A:昨年2016年は、HDDという製品が誕生してから60年目にあたり、HDDは還暦となりました。最初のHDDは直径24インチ(約60センチ)の円盤を50枚重ねたもので、容量は5MBでした。それが今では3.5インチの筐体1つで12TBまでになりました。
もっともメーカーが多かったのは80年代で、部品メーカーを含めて50~60社がHDD製造に携わっていました。その後、日本国内での生産が中国、タイ、フィリピンなどにオフショアされていき、その過程で製造メーカー、部品供給メーカーの吸収・合併が進み垂直統合が進みました。メーカーが円盤、モーター、ヘッドといった主要部品をすべて自前で作れるようになった結果、Seagate、東芝、そしてウェスタンデジタル(以下、WDC)の3グループにまで集約されました。
先ほど話した世界最初のHDDは、IBMのRAMACというコンピューターに付属していたもの。それ以来IBMはHDD事業を手がけてきましたが、2003年に日立製作所に売却し、HGSTとなりました。そして2011年にWDCの傘下となり、現在に至っています。WDCはHGST以外にもいくつかの買収を実施しており、現在のWDCはコンシュマー向けHDDのWD、エンタープライズやNAS用HDDのHGST、SSDのSanDisk、そしてプロ向けの外付けストレージのG-Technologyという4つのブランドを持つグループとなっています。
Q:製品としてのHDDの変遷はどうでしょう?
A:技術革新の成果により、面積あたりの記憶容量が倍々ゲームのように向上していた時期は、ドライブのサイズをどんどん小さくする方向へと進んでいきましたね。5.25インチ、3.5インチ、2.5インチ、1.8インチ、1.3インチ、1.0インチの製品が登場し、最終的には0.85インチまでいきました。余談ですが、1インチ(25.4ミリ)のマイクロドライブは、コンパクトフラッシュのサイズに合わせるため、実は27ミリだったんですよ。
小型のHDDはiPodなどの携帯音楽プレイヤーに搭載されていた頃がピークで、年間1500万台が出荷されていました。その後はご存知のように、フラッシュメモリーの台頭で流れが変わっていきました。有効面積が小さい小径のドライブ(注)は淘汰されていき、現状では1インチは終了、1.8インチもほぼ終了しています。モバイルPC向けの2.5インチHDDも、今では半分以上がSSDに置き換わっていますね。
(注:スピンドル部分が一定のサイズを必要とするため、サイズの小さいドライブほど記録に使用できる部分の割合が少なくなる)
Q:それではHDDはどの領域で残っているのでしょう?
A:HDDは全部2.5インチに、と考えられていた時期もありましたが、今は3.5インチに戻っていますね。このサイズが最適な効率ということで、ビット単価で勝負をかけているというのが、この3、4年の状況です。
Q:2.5インチHDDにはデータセンター用の製品があったと思いますが、これらはどうなったのでしょう?
A:データセンター用の2.5インチHDDは、15,000rpmの高速品でした。HGSTでは10,000rpm、15,000rpmの2.5インチHDDを手掛けています。
エンタープライズでも容量を必要とする用途が3.5インチHDDの需要を支えています。具体的にはクラウド、そしてSNSのデータセンターで大量に使われています。おかげで容量ベースでの出荷量は年率2桁アップですが、その一方で価格は年率7~8%ダウンとなっています。
ストレージベンダーとしては、HDDとそれを置き換えるSSDの両方を備えていることが大切です。それにより、トータルでのご提案ができますから。WDC同様にSeagateもフラッシュの部門を持っています。
(次ページ、「HDDがこの先生きのこるには?」に続く)
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