確定申告の締め切りが迫っている。個人事業主やフリーランスのみなさんは特に去年の収支を振り返るタイミング。変化の多い時代、これはいま自分がどんな仕事をしていて、これからどうやって生きていくべきかを考えなおすタイミングでもある。
『ブラックジャックによろしく』作者の佐藤秀峰さんは、漫画家でありながら、三鷹に事務所を構える有限会社佐藤漫画製作所の代表でもある。現在の収入は「漫画制作」「電子書籍の取次販売」「電子雑誌の発行」の3本柱。漫画家としての近著には回天特別攻撃隊の青年たちを描いた『特攻の島』(芳文社『週刊漫画TIMES』連載)がある。
佐藤さんは『漫画貧乏』(2012年)で、原稿料・印税・制作原価など、いわゆる“紙の出版社”とだけ契約していた漫画家時代の台所事情を明かした。漫画家は漫画の制作スタッフを雇うなど経営能力も必要になる。大企業1社の裁量次第で商品の売れ行きが左右され、経営が不安定になってしまう受託事業は、会社としてのリスクが高いと佐藤さんは感じていた。
佐藤さんは漫画配信サイト『マンガonウェブ』を立ち上げ、大企業によりかかることなく、漫画をビジネスにする道の模索を始めた。経営は2年間停滞が続いたが、昨年、会社の収支は「紙の書籍なし、電子書籍関連ビジネスのみ」で大幅な黒字化を達成したという。5期分の損益計算書を参照しながら、佐藤さんに5年間の軌跡を聞いた。
1年目……このペースで経営を続けたら良くないな
【平成23年11月1日
~平成24年10月31日】
売上 82,677,271円
利益▲10,791,242円
── まずは5年前から振り返っていきましょうか。
平成23年~平成24年(2011年~2012年)ですね。売上は約8300万円でした。
── 8300万円売り上げても、利益は出ていません。
そうですね、約1000万円の赤字です。売り上げの数字としては悪くないんですけどね。
── 業績が見通しを下回り、予算オーバーしたと。
はい。基本的な経費としては、人件費として従業員が数人と、役員報酬で、年間4000万円くらいですかね。家賃等諸経費で1000万円かかるとなると、毎年5000万円くらい定期的に入ってこないと会社が回らないということになります。言い換えると、毎年5000万円稼げば問題ないとも言えるのですが、この年は前年の売り上げが好調だったので、売り上げの見込みを1億円くらいに設定して、それに合わせて予算を組んだんですよ。でも、そこまで届かなかったので赤字です。
── 漫画制作にかかる経費って、人件費と家賃以外はあまりないんですか?
材料費がほとんどないので、パソコンを2~3年に1回買い換えるくらいですかね。
── 取材費・資料費・交際費などは?
一応はかかりますけど、人件費と事務所代がほとんどです。交通費で1万円使いましたとか、接待で2万円使いましたとか、それが月に数回ありましたとか、それくらいですね。それだけで1000万円超えましたとか、そういうことはないです。
── 収入は漫画がほとんど。
出版社からいただくお金と、電子書籍関連の収入でした。
── 1000万円の赤字なので、赤字幅としては小さい方でしょうか。
赤字のほうが税金を払わなくて済みますし、このくらいだと「予算の立て方を失敗したなあ」で済むんですが、ただ、実際に会社の貯金が1000万円減りますからね。このペースで経営を続けていったら良くないな、黒字を出さなきゃなあと思っていました。








