90%の機能が20年前から変わらず
続いてBamboo Slateを横置きにして、A5横の大学ノートを使用して、少し細かな記述をしてみたが、スリムなペンは極めて普通のボールペンのように描き良い
Bamboo Slate Smallは一般的なリーガルパッドスタイルの縦置きでも、目的によっては横置きでも使用できる。書きやすいスリムなペンを採用することで、従来の他社製品よりも簡単に、詳細な記述も可能だ。
また、ページあたりに大量かつ詳細な記述を行なった後で、誤記入を発見した場合でも、目的のページを表示しているアプリ上のプルダウンメニューから「分割」を選択し、スライドバーを操作することで、記述内容が時系列にコミック動画のように再現されるので、ページの複数分割や目的ページ削除、複数ページの結合を組み合わせることで、不要箇所のカットや追記も容易だ。
上の動画はその様子を再現したもの。スマホ上のInkspaceアプリは、Bamboo Slateから送られてきた手書きデータを時間で管理している。
最終的なページにタイムバーを表示させて、同じ1ページ内のすべての筆跡データをボタン操作することによって、実際の筆記の経過と順序をリアルタイムに動画のように表示することができる。
この機能を応用することで、ページデータを複数ページに分割して、不要な記述コメントやイラストの一部を削除したりすることが可能となっている
ページ分割やページ結合など、デジタルのベクトルデータならでは便利さではあるが、これらの機能はすでに20年前のCrossPadでも、昨今のAnotoの製品でも標準的に採用されていた機能で、とりたて珍しいスーパー機能ではない。
この20年の紙を使用する手書きデバイスを振り返ってみれば技術の90%は20年前とそれほど大きな進化がないことは理解できるだろう。
昨今の手書きデバイスが20年前の手書きデバイスと大きく異なるのは、以前は唯一無比のパートナーであったパソコンが完全に影を潜め、その対象がスマホやタブレットになったこと。そして低速の有線シリアルケーブル接続だった手書きデバイスとパートナーとの接続がBluetoothになったことだ。
そして何より大きな変化は、ネイティブでネットワーク機能を持ったスマホやタブレットの先にあるクラウドサービスにもデータを保管して、仲間や時によっては企業間で手書きデータの共有が容易になったことくらいだ。
しかし残念ながら、これらは単に時代の環境進化をトレースしているに過ぎず、手書きデバイスそのものの進化ではない。
“真のアーキテクチャー”はユーザーと企業が
相互恩恵を受ける楽しい仕組み
最新の手書き→デジタル化の可能なBamboo Slate(左)と、100%アナログのただの大学ノート→たまに必要なページだけスマホカメラでただ撮影してDropboxにアップロードする……という組み合わせ(右)を並行して比べてみたい
筆者は、ワコムの提唱する“手書きインクデータの標準規格”である「WILL」が個人ユーザーにとっても楽しい結果を出してくれることに期待している。
“真のアーキテクチャー”とは、単に市場拡大と寡占を狙う企業戦略の一部を担う技術作戦ではなく、ユーザーや市場とともに、相互恩恵を受ける楽しい仕組みを提供するものだと考えている。
WILLが楽しいことを実現してくれるまでの間、筆者は標準付属するメモパッドをより軽量なノートに交換し、付属のペンリフィルをどこでも入手可能な67mm長、直径2.3mm、ちょっとボールドがグッドな0.7mmボール径の“ミディアム青インクリフィル”に交換して、いろいろ遊んでみるつもりでいる。
今回の衝動買い
アイテム:ワコム「Bamboo Slate Small」
価格:ビックカメラウェブにて1万5984円で購入
T教授
日本IBMから某国立大芸術学部教授になるも、1年で迷走開始。今はプロのマルチ・パートタイマーで、衝動買いの達人。
T教授も関わるKOROBOCLで文具活用による「他力創発」を実験中。

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