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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第386回

業界に痕跡を残して消えたメーカー BIOSで功績を残したPhoenix

2016年12月12日 11時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII.jp

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ライバルのAwardを買収

 健全化した財務状況の下で、最初に買収したのがQuadtel Corporationである。ここはPhoenixよりも優れたBIOSコードを保有している非上場企業で、株式交換の形で買収。QuadtelのBIOSをベースに1993年にPhoenixBIOS 4.0をリリースした。

 このPhoenixBIOS 4.0によって、他社のBIOSに比べて見劣りしていた部分の補完に成功、結果として大分シェアを戻すことができている。また1993年からは海外拠点を増強し、日本を含む複数のアジア拠点も立ち上げている。

 こうした復調への筋道が立ったとみたのか、1995年にFisher氏は辞任、後継は1990年から同社の海外営業部門のトップを勤めていたJack Kay氏が昇格した。Kay氏もまた順調に会社を伸ばしてゆく。同じく有価証券報告書では以下の数字が並ぶ。

1996~2005年の売上と営業利益
年号 売上(License) 売上(Service) 売上(合計) 営業損益
1996年 7537万ドル 1084万ドル 8621万ドル 1568万ドル
1997年 8988万ドル 1561万ドル 1億0550万ドル 2034万ドル
1998年 1億 34万ドル 2254万ドル 1億2289万ドル 72万ドル
1999年 1億 333万ドル 2250万ドル 1億2583万ドル 180万ドル
2000年 1億2582万ドル 1857万ドル 1億4439万ドル 2090万ドル
2001年 9023万ドル 1213万ドル 1億 236万ドル -1800万ドル
2002年 8481万ドル 828万ドル 9308万ドル -489万ドル
2003年 8131万ドル 410万ドル 8541万ドル -2665万ドル
2004年 8318万ドル 357万ドル 8675万ドル 45万ドル
2005年     9954万ドル 27万ドル

 1998年と1999年に損益が大分減っているのは、大きな買収があったためだ。このうち1998年のものは、かつて競合だったAward Software International Inc.を株式交換の形で買収した。

 Awardは1996年には株式公開するなど頑張っていたが、ちょうどPhonenixBIOS 4.0と入れ替わりになるように次第にシェアを落としつつあった。

 そもそも買収できた、つまり独占禁止法に引っかからなかったというあたりが、Awardにすでに往年の勢いがなくなっていたことの表れでもあるのだが、それでも低価格向けを中心にAwardは根強い人気があり、PhoenixBIOSとAward BIOSの2枚看板とするのは、悪くない状況だった。

 また1996年からは新たにServiceという部門の売上が立っている。これはSemiconductor IP Divisionという部門の売上で、ここはUSBやIEEE1394といった周辺回路類のIPを提供するビジネスを行なっている。この部門の増強のために、1998年にはIPベンダーであったSand Microelectronics Incを2750万ドルで買収している。

 これに先立ち1996年にはVirtual Chip Inc.という、やはりIPの会社を買収しており、これらのIPビジネス部門は1999年に統合され、inSilicon Corporationとして子会社化された。

 この会社の立ち上げなどで1998/1999年にはだいぶ利益を落としたが、その結果としてずいぶん売上が増えたことになる。またこの頃はY2K(2000年問題)に向けてPCの入れ替え需要が急増した時期であり、当然同社の売上は伸びた。

 1999年6月にKay氏も退任。後継にはRSA Data Securityで社長を務めていたAlbert E. Sistoが就くが、このあたりからY2K問題の反動で業績は急激に悪化する。

 悪化した業績を支えるため、せっかく子会社化したinSiliconをSynopsisに売却するなどいろいろ策を講じた(この結果としてServiceの売上が2002年以降急激に減っている)が、これを補うべくセキュリティー関連などに力を入れていくようになる。

UEFIの出現でBIOSはお役御免

 ただ長期的に見るとPC自身の売上の鈍化や、BIOSそのもののニーズの低下などから、同社の売上は次第に減少していった。このうちBIOSのニーズの低下とはなにかというと、UEFIの出現である。

 UEFIはいろいろメリットがあるが、大きなものとしてプログラムサイズの制約が大幅になくなったことが挙げられる。従来のBIOSは、極めて限られたメモリー量の中に必要な処理や設定を全部盛り込む必要があり、最適化には高度な技術が必要で、そこらのエンジニアがぽっと作れるようなものではなかった。

 ところがUEFIではこのあたりの制約が全部取っ払われてしまい、高級言語とライブラリーを使ってGUIまで利用できるという便利な環境になった。

 こうなると、最初にツールキットさえ購入すれば、あとはBIOSメーカーに頼まなくてもマザーボードメーカーが自社でBIOSの開発やメンテナンスが可能になるというわけで、すでにマザーボードの数量が出ても、同社の売上に結びつきにくい状況に陥ってきたわけだ。

 結局同社は2010年、Marlin Equity Partnersというプライベートファンドに買収されて非上場企業化している。買収金額はおよそ1億3900万ドル。買収直前の株価は3.02ドルというあたりであった。

 2010年の第3四半期(2010年4~6月)の売上は1370万ドルで、単純に4倍しても5500万ドル未満といったあたりでしかない。それでもまだしっかりビジネスが続いているあたりはたいしたものである。

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