7月末にさくらインターネットの特設サイト「さくらの熱量チャレンジ」がスタートし、早くも3ヶ月が経った。この特設サイトで、アスキーとさくらインターネットはどんなコラボレーションを繰り広げるのか? クラウド市場の動向とともにTECH.ASCII.jpの大谷イビサが説明していく。
クラウド業界の人材のブラックホールになっているさくらインターネット
さくらインターネットがなんだかすごいことになっている。なにがすごいって人材がすごい。
もともとさくらインターネットはエンジニア社長の代名詞ともいえる田中邦裕さんを筆頭に、優秀な人材が集積している。私が過去に取材した限りでは、さくらインターネット研究所 所長 鷲北賢さんや大久保修一さん、執行役員副社長の舘野正明さん、技術本部の加藤直人さん、高火力コンピューティングを手がける須藤武文さんなどなど。特定分野への造詣が深く、われわれが考えるよりもはるかに深く物事を突き詰めるプロフェッショナル集団の集まりだ。これは過去の多くの取材で、長らく実感してきたことだ。
これに加え、数年前から新しい血がどんどんさくらに入り込んでいる。歩くコミュニティとも言われる日本UNIXユーザ会の法林浩之さん、3・11のヤシマ作戦でおなじみのインフラサービスや情報セキュリティのプロフェッショナルが集まっているゲヒルンの石森大貴さん、さくらインターネットの創業メンバーで昨年出戻った小笠原治さんのほか、最近ではエンジニアCROSSの実行委員を長らくつとめる元ニフティの山口亮介さん、弱冠25歳で執行役員に就任した江草陽太さん、インフラエンジニアの星でもある元テコラスの伊勢幸一さんや元クリエーションラインの前佛雅人さんまでさくらにジョインしてしまった。業界動向をウォッチしている人であれば、このすごさが伝わるのではないかと思う。
まさにクラウド業界の人材のブラックホール。一騎当千とも言える強力な人材がさくらの引力にどんどん引き寄せられているさくらインターネット。ここまで来ると、さくらは若手・ベテランの総力を結集し、日本のクラウド業界を刷新しようと考えているとしか思えない。
椅子穫りゲームで生き残りをかけた国内のクラウド市場
さくらがこうした総力戦に挑む背景には、当然ながら国内のクラウド市場の勢力図がある。現在、パブリッククラウドに関しては、圧倒的な勢いでAWSとMicrosoft Azureへの寡占化が進んでおり、国内の事業者はじわじわと追い詰められている。さくらの田中社長は、3年前から「ドメスティックな事業者は2~3社しか生き残れない」と明言しているし、実際オオタニの肌感覚からしても、今後椅子穫りゲームで座れるのはほんの数社なはずだ。
しかし、IT市場が完全にクラウドに進んでいるかというと、意外とそうでもないようだ。どの調査レポートを見ても、国内でのパブリッククラウドの普及率は2割~3割といった具合。特に国内の多くを締める中小企業に関しては、既存のオンプレミス商材のリプレースや仮想化の導入にまだまだ投資している状況と言える。導入されているクラウドも、メールやクラウドストレージなど汎用性の高いアプリケーションで、多くの情報系・基幹系システムはオンプレミスで運用されている。少なくとも、日本においてはオンプレミスからクラウドへの過渡期が続いており、しかも思いのほかその期間が続いているという感覚がある。
こうした中、さくらはモノ(データセンター)の投資から人材への投資に大きく舵を切り、国内のクラウド市場で生き残っていく作戦に出たと言える。まず垂直方向には自前のデータセンターインフラをベースにしたサービスの価値を最大化すべく、IoTやブロックチェーン、計算資源集約型サービス(高火力コンピューティング)などに注力する。質の高いコモディティサービスを提供してきたさくらにとって、新しい需要を創出していくこれらの施策は明らかに新しいチャレンジになる。そのため、水平方向でのパートナーシップやサービスの価値を高めるコミュニティを担える人材が重視されるようになったのだろう。
さくらの熱量を追うアスキーとのコラボ
さて、7月に立ち上げたアスキーとさくらインターネットのコラボレーションサイトは、こうしたさくらの新たなチャレンジを追うものだ。テーマに据えたのは、もちろんここ数年でさくらが標榜してきた「熱量」である。
グローバルクラウドベンダーが国内進出を本格化し始めた3年前、さくらインターネットには大きな2つの選択肢があった。1つは40万を超える顧客基盤をベースに粛々と運用をきわめて行く方向性、もう1つは虎の子のデータセンターを軸に新たなビジネス創出にチャレンジする方向性だ。
インフラに強いエンジニアの多いさくらにとって、前者の方向性は手堅い道である。現在もホスティング市場は安定的に成長を続けており、パブリッククラウドではカバーできない中小企業のITアウトソーシング需要を確実にカバーしている。自前でのサービスをあきらめるSIerが増える中、ハウジングからホスティングサービスの移行を堅調に増やしているさくらが運用の道を極めれば、他社の事業を巻き取り、安定的に収益を伸ばすことができるはずだ。
しかし、さくらインターネットはあえて茨の道である後者を選んだ。前述の通り、IoTやブロックチェーン、計算資源集約型サービスなど、インフラ事業者として未知数の市場に賭けた。しかも、それら新規事業の原資は、自社資本から生み出しているのだ。これをチャレンジと言わずになんと言えるだろうか。オオタニがさくらを応援したいと考えたのも、このチャレンジに対する熱量があるからこそだ。
ご覧いただければわかるとおり、「さくらの熱量チャレンジ」では「高火力コンピューティング」と「さくらのIoT Platform」という大きく2つのサービスをフィーチャーした記事を掲出している。発表会記事やIoTチームへの取材はもちろん、Ponanza、PFN(Prefered Networks)やABEJAなどの共創パートナーとの対談も掲出させていただいた。
また、さくらインターネットの最新情報を追う「さくらニュース」のほか、高火力コンピューティングがフォーカスしている機械学習の最新トピックを追う「高火力ニュース」も連日ご好評いただいている。今後は「さくらの熱量IoT」と題した動画コンテンツも投入していく予定なので、引き続きさくらの熱量チャレンジをチェックしていただきたい!

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