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特別企画@プログラミング+ 第8回

11/3~6 開催の「マジカル福島2016」のプレイベント

ドローンプログラミング教室+気鋭の研究者らによるロボットシンポ開催

2016年11月03日 20時40分更新

文● 佐藤 快

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自律飛行するドローン

自律飛行するドローン。なお、今回のワークショップでは仏Parrotのドローン「Rolling Spider」を使用


 いまや近所のスーパーにもPepperがなにげなく置いてあり、ドラマからバラエティ番組まで、ドローンで空撮した映像が出てこない日はないんじゃないかというくらい、ロボットやドローンといったものは身近になった。とはいえ、ドローンを実際に飛ばしたことのある人、それも自分でプログラミングして自律飛行させた経験のある人はどれほどいるだろうか。ロボットの研究や実用の最前線がどうなっているのか、どれくらいご存じだろうか?

 マジカル福島実行委員会は10月30日、ドローンとロボットの最新事情とこれからを考えるイベント「ドローン&ロボット シンポジウム」を、東京・飯田橋で開催した。同実行委員会が11月3日より展開する、映画上映会やアニメ制作体験会、コスプレ撮影会といったさまざまなイベントを福島県全域で行う「マジカル福島2016」の、プレイベントとして実施されたものだ。

 このドローン&ロボット シンポジウムは、第一部の親子ドローン教室と、第二部のシンポジウムの二部で構成される。第一部では小中学生の親子向けに、実際にドローンの飛行経路をプログラミングして、自律的に飛行させる教室を実施。そして第二部のシンポジウムでは、ロボットのクリエーターや研究者、ロボットアニメの制作者を招いて、災害支援ロボットなど、実用的なロボットの現状や展望、そしてロボットの未来が語られた。


ドローンのプログラミングはカンタンだった!?

「プログラミングで自動飛行 ~親子ドローン教室~」

 第一部「プログラミングで自動飛行 ~親子ドローン教室~」では、小中学生の親子が実際にドローンのプログラミングを体験。まず最初に、ニコニコ生放送でおなじみのネットタレント百花繚乱さんの司会で、今回の講師であるdotstudio株式会社 代表取締役の菅原のびすけさんから、ドローンとは何か、そしてドローンのプログラミング環境「Tickle」の使い方や、プログラミングそのものについてのレクチャーを受けた。

(写真左)司会のネットタレント 百花繚乱さん (写真右)今回のワークショップの講師である、dotstudio株式会社 代表取締役 菅原のびすけさん

 そして実際にiPad上でプログラムを組んでみるのだが、今回使用した「Tickle」※1は、ビジュアルプログラミング言語「Scratch」を応用した分かりやすいユーザーインターフェイスでドローンの飛行を簡単にプログラミングできるiPadアプリだ。このTickleを使うと、「宙返り」や「前に〇〇秒進む」といった動作を高度なプログラミングの知識がなくても指示でき、子どもたちには大ウケ。

Tickle

iOSアプリ「Tickle」。ブロックを組むいわゆるビジュアルプログラミング。

 序盤はシンプルな動きをプログラミングしていた子どもたちも、親やスタッフのアドバイスを受けつつ、次第に高度なプログラムに挑戦。「90度回転を〇〇回繰り返す→宙返りを〇〇回→写真を撮る」などといった、かなり複雑な動作にチャレンジしていた。

百花繚乱さん

百花繚乱さんもプログラミングを試してみたがうまく飛ばず、最後は念力で!?

 失敗しても失敗しても、何度もプログラムを修正してドローンを飛ばしている子どもたちは、終始楽しそうだった。

 また、ワークショップの模様を中継するニコニコ生放送には1万人以上の視聴者が来場。「タケコプターは何という種類のドローンですか」といったコメントに、菅原さんは「タケコプターは有人飛行なのでドローンではない」と回答した。

  1. ※「Tickle」は、11月3日現在バージョンアップによってドローンに関係する部分がグレイアウトしている。近くふたたび使えるようになる可能性はあるが、現時点で今回のようなプログラミングによる飛行はできないで注意のこと。

ロボットのいまとこれからを語るシンポジウム

 第二部のシンポジウム「ロボットができること ~今とこれから~」は、2つのパートで構成。パート1には、早稲田大学次世代ロボット研究機構 機構長の山川宏氏、千葉工業大学未来ロボット技術研究センター(fuRo)所長の古田貴之氏、福島ガイナックス代表取締役の浅尾芳宣氏、メカニックデザイナーの吉田徹氏が登壇。角川アスキー総合研究所 遠藤 諭主席研究員の司会で、災害支援や産業用ロボットについて語った。

シンポジウム

シンポジウム「ロボットができること ~今とこれから~」パート1

山川氏

早稲田大学次世代ロボット研究機構 機構長 山川宏氏

古田氏

千葉工業大学未来ロボット技術研究センター(fuRo)所長 古田貴之氏

 パート1は、ロボットを研究・開発されている山川氏、古田氏と、アニメ制作の浅尾氏、吉田氏によるいわば、リアルワールドとコンテンツワールドが向き合った形のセッション。

 最初に、山川氏が70年代から二足歩行ロボットを開発してきた早稲田大学の取り組みを紹介。災害対応ロボティクスの研究がされており、「Octopus」と名付けられた四腕式極限作業ロボットを紹介。その開発に関連してフューチャーロボティクス社を立ち上げており、福島県南相馬市に事業所を置くとのこと。ほかには、雪の中に砂地・水の中にも入っていけるWAMOTという測定用ロボットなどが動画で披露された。

オクトパス

4つの走行ベルトと4本の手足を持つ「オクトパス」

 次に古田氏が、「私はこのあたりにいる」と、ロボットの研究・開発だけでなく、コンテンツ分野との連携も行っていると自己紹介。千葉工業大学の未来ロボット研究センター「fuRO」の活動として、福島原発の1階から5階までを走破して3次元の放射線マップを提供したことや8本の脚が協調して動く「Halluc IIχ」を、こちらも動画で紹介。



 その動きには、シンポジウム参加者から感嘆の声が漏れたが、古田氏は「5人だけで、1ヶ月で作ったんですよ」とfuRoの技術力をアピール。さらに、乗り物でありながら、カートやキックボードなど4つの形に変形する三輪車「ILY-A」を紹介。これは、ロボットというよりも生活ツールの位置づけだと説明した。

 また古田氏は、まだ開発段階だが超人的な機動性能を持つロボット「V-MAXシステム」についてもコメント。

 これにメカニックデザイナーの吉田氏が反応した。「V-MAXは32年前に、『蒼き流星SPTレイズナー』で描いたもの」と言うと、古田氏も実は「『レイズナー』が好きでV-MAXを作った」と回答。吉田氏がメカニックを担当したアニメが、現実のロボット技術者に影響を与えている。

吉田徹氏

メカニックデザイナー 吉田徹氏

浅尾芳宣氏

福島ガイナックス代表取締役 浅尾芳宣氏

 続いて、浅尾氏は福島ガイナックスとして、地元の伝承や伝説をうまく組み合わせたアニメによる発信に取り組んでいる。そうした中で、災害をテーマにしたアニメ作品の制作に入っているとコメント(後述の『レスキューアカデミア』)。浅尾氏、吉田氏ともにロボット研究のお二人と直接対話できたことで、非常に刺激を受けたと感想を述べた。


パート2「ロボットの広がり、未来について」

 シンポジウム パート2のテーマは、「ロボットの広がり、未来について」。超人スポーツ協会の共同代表も務める東京大学先端科学技術研究センターの稲見昌彦教授、アスラテック株式会社 取締役兼チーフロボットクリエイターの吉崎航氏、医学博士で株式会社Mediaccel代表取締役、国際福祉大学大学院医療福祉学研究科の杉本真樹准教授の3名が登壇。

稲見教授

東京大学先端科学技術研究センター 稲見昌彦教授

 まず、稲見氏が、『攻殻機動隊』の“光学迷彩”を実現するなどいままでの研究例を紹介したあと、「人馬一体」ならぬ「人機一体」を実現する「自在化技術」に取り組んでいると自身のテーマを紹介。やりたくないことは、ロボットやAIにまかせて、やりたいことを拡張することが大切だと述べた。

 人間の拡張の有効性については、雲仙普賢岳の噴火のときに活躍した建機の遠隔操作について触れ、上半身ロボットとVRの組み合わせで特別な訓練をしてない操作者でも扱えるとのこと。また、「超人スポーツ協会」では、テクノロジーと組み合わせた新しいスポーツを開発。東京オリンピックの開かれる2020年には、いろいろなスポーツが生まれているのではないかと述べた。

 そして、次にプレゼンした吉崎氏は、実写版『パトレイバー』にも登場した水道橋重工の巨大ロボット「クラタス」の、OSの開発者だ。アスラテックでは、あえてハードの開発はせずソフトウェアを作っているという同社の特徴を紹介。変形ロボット、受付やステージ用ロボット、ここでも人型ロボットによる建機の無人化などに貢献しているという。

吉崎 航氏

アスラテック株式会社 取締役兼チーフロボットクリエイター 吉崎 航氏



 吉崎氏の考えるテーマは「社会の脇役になれるロボット」。コスト面や法令など商品化実現での壁を打開するため、ロボットメーカーではなく、たとえば介護機器メーカーが作るものを決めて、そこに技術を提供する形がよいのではないか? たとえば、御社の車椅子に「手」だけ付けたらどうですかといった提案がありうると述べた。

杉本真樹准教授

国際福祉大学大学院医療福祉学研究科 杉本真樹准教授

 最後に、ハイテクを活用した医療で注目を集める杉本氏がプレゼン。まず、患者の腹部に小さな穴をあけて遠隔で操作する手術支援ロボットの実際を紹介。映像を使いながら、2本の指だけで操作することに慣れることや臓器の弾力は視覚によってほとんど認識しているといった興味深い現象を紹介。また、杉本氏自身が行った、世界初の8K映像を利用した手術の様子も映し出された。8K映像によって、0.01ミリの毛細血管まで見えるので、いままで切ってから出血していたものが切らなくて済むようになるという。

骨盤VR映像

人間の骨盤のVR映像。ちなみに杉本氏本人の体内を映している

 VRによって、手術の1時間前に同じオペ室で手術をシミュレーション可能になる。CTスキャンで作られた自分の3D映像に入り、VRで体内を自由に移動することもできるといったことも紹介された。

 各々のプレゼンのあとは、身体とロボットについてのディスカッションがなされた。なお、今回のシンポジウムもすべてニコニコ生放送で生中継されたが、3万人弱が来場する盛況ぶりだった。なお、当日のようすは、以下の番組で視聴できる。

■番組概要
・本気(マジ)だぜ福島!マジカル福島 2016【アニメ『レスキューアカデミア』制作発表会】&【ドローンレース】
放 送 日 時 :11月6日(日)10:00 ~
視 聴 U R L:http://live.nicovideo.jp/watch/lv278015775

・マジカル福島 2016 プレイベント【プログラミングで自動飛行 ~親子ドローン教室~】&【ロボットができること ~今とこれから~】
放 送 日 時 :10月30日(日)10:00 ~
視 聴 U R L:http://live.nicovideo.jp/watch/lv278015474



『レスキューアカデミア』については、マジカル福島の「ロボテスわっしょい秋祭り」で制作発表会が行われる。また、同時開催の「ドローンレース×神旗争奪戦」は世界トップクラスの操縦者がドローンレースを行うほか、一般参加客もドローンの操縦体験ができる。

 マジカル福島では上記以外にも「名探偵コナン連載20周年記念 コナン展」や現代美術のアートイベント、会津鶴ヶ城をバックにしたコスプレ撮影会なども開催される。詳しくは「マジカル福島2016」の公式サイトをチェックしてほしい。

マジカル福島2016 開催概要

期間: 2016年11月3日(木)~6日(日)
会場: 福島県内12市町
    (福島市・会津若松市・郡山市・いわき市・白河市・喜多方市
     ・二本松市・田村市・南相馬市・伊達市・三春町・小野町)
主催: マジカル福島実行委員会
入場料:会場によって異なります
URL: http://magicalfukushima.com/

【関連サイト】

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