学生1人に対して1台のSurfaceを貸与している奈良県の畿央大学。1650台のSurfaceが教育の現場になにをもたらしたのか? 畿央大学 教育学部教授を務めている西端律子さんに学内を案内してもらうと共に、タブレット教育の現状と課題を聞いた。
Surfaceのある畿央大学の教育現場を見る
古墳の多い奈良盆地に位置する畿央大学は2003年に設立された私立大学。健康科学部と教育学部の2つの学部で構成され、就職に強い大学として評価が高い。そんな同大学がSurface導入を決めたのは、今から2年前の2014年にさかのぼる。しかも、学校が購入したSurfaceを学生全員に在学期間中貸与するという思い切った導入施策である。現在は約1650台のSurfaceが学生の手元に行き渡り、授業に根付いているようだ。
学生が使っているSurfeceは、3年生がPro 2、2年生がPro 3、1年生はSurface 3で、それぞれWiFiモデル。学生たちはWordでレポートを書いたり、PowerPointやSwayでプレゼンを作ったり、いろいろな方法で活用している。利用制限は特にかけておらず、アプリのダウンロードも自由。学内の無線LANも通常のID・パスワードの運用で、利用制限などはかけていない。トップの方針もあり、基本的には学生の自主性に任せられているのが、運用の大きな特徴だ。「私が見ている限りでは、怪しいゲームをダウンロードしている学生はいません。授業中ではほかの学生と画面を共有して使うこともあるので、変なアプリが入っていたら、それなんやねんという話になる(笑)」と西端さんは説明する。
1650台という端末を利用するための強靱な無線LANインフラも2012年度から整備されており、教室や食堂、会議室などあらゆる部屋にAPが設置されている。上流の回線もキャパシティ面も配慮されているため、基本的にはストレスなく利用できるが、アップデートがかかるときはさすがにネットワークも重くなるという。
Surfaceを全員に貸与することで、大きかったのはすべての学生が同じ環境で課題に打ち込めるようになったことだという。「パソコンを持ってない学生がいなくなり、パソコン教室が空いていないといった問題が解消されました。みんな同じ条件なので、こちらも遠慮なく課題を出すことができるようになりました」と西端さんは語る。日々持ち歩いて使えるため、高校時代に生じた学生間のデジタルデバイド(情報格差)が1年生の間に解消し、日常のツールとして根付くという効果があるという。
もちろん、学校としても、パソコン教室が要らなくなり、空いたスペースを有効活用できるといったメリットがある。しかも同学は出席管理、学務、経理などのシステムをMicrosoft Azureのクラウドに移行しているため、サーバールームもない。40台のサーバーがなくなり、年間で700万円の電気代が節約できているという。モバイルとクラウドのメリットをフル活用しているわけだ。