このページの本文へ

AWS Summit 2016 New Yorkでの新発表を説明

AWSJ、ALBやKinesis Analyticsなどの新サービスを説明

2016年09月13日 07時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

9月12日、アマゾン ウェブ サービス ジャパン(AWSJ)は最新のサービスアップデートに関する発表会を開催した。登壇したAWSJの瀧澤与一氏は、8月に行なわれたAWS Summit 2016 New Yorkで発表された内容を中心に新機能を紹介すると共に、11月28日から開催されるre:Inventについても告知した。

国内のユーザー事例も続々登場したAWS

 登壇したアマゾン ウェブ サービス ジャパンの瀧澤与一氏は、最新のアップデートを披露した。現在、AWSはグローバルで100万のアクティブカスタマーを抱えており、グローバルではAWSが占める売り上げは29億ドル、昨年度比で58%増加しているという。日本でも数万以上の企業が利用しており、8月にPRESOL、岡三オンライン証券、ミクシィ、KDDI、エプソン販売、ファームノート、レコチョク、9月に大阪ガス、ジャパンネット銀行、ウェルスナビなどの事例をWebで公開しているという。

アマゾン ウェブ サービス ジャパン 技術本部 エンタープライズソリューション部 部長/シニアソリューションアーキテクト 瀧澤与一氏

 ジャパンネット銀行では、全社員が利用するActive DirectoryやExchange、ファイルサーバーを含めたすべてのOAサーバーをAWSに移行し、5年間で20%のコスト削減を実現する。また、Fintechスタートアップのウェルスナビは、FISCのガイドラインに沿ったセキュアなシステム構築をAWSで実現しており、金融庁からの認可を取得したサービスを開始できたという。

 さらにモンスターストライクがヒットしているミクシィはAWSの導入により画像データの増加にあわせたストレージサーバーの増設が不要になり、インフラ運用のコスト削減、突発的なアクセス増にも貢献したという。100種類以上のサービス、2000サーバーがAWS上で利用されているという。

100種類以上のサービス、2000サーバーを利用しているミクシィ

 新機能もかなり速いペースで進めており、2014年で516、2015年は722の新機能とサービスを発表し、2016年も8月の時点で524となっている。10年間で2120の機能を追加したという。リージョンの拡大も進めており、6月27日には13番目のリージョンとしてアジアパシフィック(ムンバイ)リージョンをスタート。各リージョン内のAZの数は35に達しており、「中国の第2リージョンやロンドンなどにも計画が進んでいる」(瀧澤氏)。こうしたインフラに支えられたサービス数は70になっている。

新ロードバランサーALBやKinesis Analysticの導入

 続いて瀧澤氏は新サービスについて説明する。8月に開催されたAWS Summit New Yorkでの発表の目玉はやはりロードバランサーであろう。従来、AWSではECB(Elastic Load Balancing)と呼ばれるロードバランサーを展開していたが、今回新たにレイヤー7のコンテンツベースのロードバランサーである「Application Load Balancer(ALB)」が追加された。これにともない、複数のEC2インスタンスに負荷分散を行なえる従来のELBは「Classic Load Balancer(CLB)」にリネームされ、ALBとCLBを合わせて「Amazon Elastic Load Balancing」というサービスに再ラインナップされた。

Amazon Elastic Load BalancingではCLBとALBの2種類のサービスを用意

 従来型のCLBは複数のEC2インスタンスにレイヤー4で負荷分散するものだったが、ALBはレイヤー7のコンテンツをベースにターゲットグループに対してルーティングを提供する。WebSocketやHTTP/2にも対応するが、現状はHTTPヘッダのうちURLでの負荷分散のみサポートするという。複数のAZにまたがった耐障害性の確保やALB自体のキャパシティ増減は従来のCLBと同様。

 料金体系は起動時間と使用量の従量課金であることは変わらないが、ALBでは課金単位として新規接続数やアクティブ接続、帯域幅などをベースにした「ロードバランサーキャパシティユニット(LCU)」が導入されているという。

ALBの料金は起動時間と時間後とのLCUで算出される

 また、ストリーミングデータを収集・処理・配信するためのAmazon Kinesisについても紹介された。Amazon Kinesisはストリーミングデータ用のアプリケーションを構築するためのKinesis StreamsやAmazon S3、Redshift、EFSなどにデータを直接ロードできるFirehoseがラインアップされていたが、今回ストリーミングデータを標準的なSQLクエリで分析できる「Amazon Kinesis Analytics」が発表された。秒以下のレイテンシーでストリーミングデータを連続的に処理でき、スループットに応じて弾力的にスケールするという。

ストリーミングデータに対してSQLで分析をかけられる「Amazon Kinesis Analytics」

 その他、紹介された新機能の概要については以下のとおり。

Amazon Import/Export Snowballの拡張
データ可搬用の物理アプライアンスであるSnowballにジョブ管理用のAPI経由が追加された。新たにS3アダプタも用意され、SnowballアプライアンスをAmazon S3のエンドポイントのように扱えるという。
Amazon API Gatewayの利用プラン強化
APIの作成や管理、監視などが可能なAmazon API Gatewayに利用プランが追加され、スロットリングやクオータ、API/ステージなどを元にAPIに対するコントロールが可能になった。これらを用いることで、使用量に応じた柔軟な課金が可能になるという。
EBSアップデート、スナップショットの値下げ
EBSのIOPS/GB比率が改善。2万IOPSを稼ぐため、今までは最低667GBの容量が必要だったが、400GBを用意すれば可能になった。さらにEBSスナップショットの費用を47%値下げした。
Amazon S3でIPv6をサポート
Amazon 33バケットのオブジェクトがIPv6アドレスでの利用に対応。IPv4とIPv6のデュアルスタックのエンドポイント経由でアクセスできるという。
AWS KMSでBring Your Own Keysが可能に
データの暗号鍵を管理するAWS Key Management Serviceで、ユーザーでの暗号鍵の持ち込み(Bring Your Own Keys)が可能になった。オンプレミスで管理している暗号鍵をAWS上で管理できるようになっている。
AWSソリューション-Transit VPC
2つ以上のAWSリージョンにまたがるプライベートネットワークを容易に構築できるCloud Formationのテンプレートを提供する。「CiscoのCSR(Cloud Service Router)のサービスがマーケットプレイス上に用意されているので、テンプレートを用いるとフルメッシュのネットワークを容易にに構築できる」(瀧澤氏)とのこと。複数のVPCでさまざまなネットワークを共有できるほか、分散したVPCとAWSのリソースを複数のAWSアカウントに収めることができるという。

2つ以上のAWSリージョンで柔軟なプライベートネットワークを組めるTransit VPC

Amazon WorkSpacesで時間単位の利用やWindows 10 BYOLが可能に
クラウド型のVDIであるAmazon WorkSpacesにおいては、常時実行で月額払いのAlwaysOnに加え、ログイン時点で課金が開始され、切断状態が続くと自動的に停止するAutoStopの課金体系が選択可能になった。また、ルートボリュームが60GBから80GBに拡大。さらにWindows 10 DesktopのライセンスをWorkSpacesに持ち込むことが可能になったという。

 最後に瀧澤氏は11月28日からネバタ州で開催される「AWS re:Invent 2016」について告知。今年は会場が2つになり、昨年の2倍のブレイクアウトセッションが用意されるという。また、11月29日の夜にはAWSのジェイムス・ハミルトン氏によるスペシャルイベントが用意されているという。過去、ほとんど公開されたことのないAWSのデータセンターについて講演したことのあるハミルトン氏のセッションだけに、本番が楽しみだ。

カテゴリートップへ