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モバイルガジェット黄金時代への道 第2回

Palm - 新たな神、新たなユーザー、新たなエコシステムを生み出したモバイル界の覇者

2016年08月19日 12時00分更新

文● 塩田紳二 編集●ハイサイ比嘉

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小型モバイルガジェットというと、最近ではスマートフォンやタブレットをイメージする方が多いはずだが、 それらは何の前触れもなく突然生まれたわけではない。過去に名機と呼ばれる数々の小型製品が市場をにぎわし続け、現在につながっている。 この連載では、そんな話題・人気となった小型モバイル機器、また関連する往事のトピックなどを紹介していく。

モバイル系のエコシステムは、すべてPalmで成立した

 Palmは、OSのライセンスで多数の互換機が登場、1996年から2000年代の前半ぐらいまでの約10年間にモバイル界を席巻したデバイスだ。Palmシリーズとその互換機(以下Plam機と表記する)は、現在のスマートフォンなどモバイルデバイスのコンセプトのほとんどを実現した。現在のスマートフォンなどにある機能でPalm機になかったものを探すのが難しいぐらいだ。

 それまで別の機器だった携帯電話と組み合わせたいわゆるスマートフォンとして、スマートウォッチもあれば、折りたたみ構造、SDカード、拡張スロット、モバイルカメラ、GPSと地図アプリなど、今のモバイルデバイスの大枠は、1996年から始まるPalm機で実現された。

 また、Androidなどのように、Palm OSのライセンスにより、ソニーやSamsung、IBM、Qualcommといったメーカーが参入、ケースなどのサードパーティが成長した。モバイル系のエコシステムはPalmで成立したといってもいいかもしれない。今回は、このPalm機を振り返ることにしよう。

"ユーザー"のあり方が大きく変わった

 Palm機の最初は、1996年に登場した「Pilot 1000/5000」だ(表にスペックを示す)。1996年は、インターネットに対応できる「Windows 95」の登場直後。インターネットが一般に普及し始める年でもある。Plam機の普及は、インターネットが加速したといってもいいかもしれない。というのも、インターネットにより、アメリカの企業の情報も直接入手できるようになっていたからだ。

U.S. Robotics「Pilot 1000/5000」。月刊アスキー 1997年3月号より(当時の誌面を複写)

「Pilot 1000/5000」専用ケースを装着した状態。「Pilot 1000/5000」自体が約120×80×18mmと小型なため、カバーを着けた状態でも片手で持ちやすかった。月刊アスキー 1997年3月号より(当時の誌面を複写)

主なスペック
製品名 Pilot 1000/5000
発売年 1996年
CPU Motorola dragonball MC68328(68EC000コア)16 MHz
RAM Pilot 1000:128KB Pilot5000:512KB
ROM 4MB
画面 160x160ドット(4階調モノクロ)
拡張スロット メモリ拡張スロット
I/O ホットシンク用シリアルポート(クレードル接続コネクタ)、圧電スピーカー、感圧式タッチパネル、ハードウェアボタン
OS Palm OS 1.0
電源 単四乾電池×2
サイズ 約120×80×18mm
重さ 約160g

 初代のPalm機からSDKが公開され、サードパーティアプリを利用できるようになっていた。そのアプリもインターネットを通じて配布や販売が行なわれた。比較的単純な構造の「Palm OS」では、システム側の機能拡張も容易で、日本語化などはユーザーの手で行なわれた。これもあってPalmが日本市場に進出する前の1997年頃にはユーザーが増え始めた。インターネットは、ユーザーのありかたも変えたのである。

Palmといえば、“Palmの神様”こと山田達司氏の貢献が非常に大きい。山田達司氏が開発した「J-OS」をはじめとする日本語環境のおかげで日本語が扱えるようになり、かな漢字変換などの日本語入力も可能となった。月刊アスキー 1997年3月号より(当時の誌面を複写)

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