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Windows情報局ななふぉ出張所 第43回

日本から撤退したはずの「eBay」が京都発の海外通販を支援

2016年08月12日 09時00分更新

文● 山口健太 編集●KONOSU

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 世界最大級のオークションサイト「eBay」の日本法人であるイーベイ・ジャパンが、京都の伝統工芸品を世界に向けて販売する「越境EC」についての説明会を開催しました。

 筆者は米国のeBayを長年使っており、アカウント登録はなんと2001年。15年前から、日本で売っていないものを個人輸入してきました。

日本でオークションといえばヤフオクだが、海外ではeBayが広く使われている。

 一方、最近の日本国内におけるeBayの活動はあまり知らなかったこともあり、興味を引かれました。

日本ではオークション運営から越境ECにシフト

 2000年ごろには日本にもオークションサイトの「eBay」があったものの、後に撤退。日本法人のイーベイ・ジャパンは、日本から海外に向けて出品する「越境EC」の支援事業を2008年から開始したとのこと。

 具体的には、商品の在庫管理や言語、ロジスティクス面で国内のセラー(eBay用語でいうところの出品者)を支援し、関係を強化してきたといいます。

国内事業について語るイーベイ・ジャパン事業本部長の佐藤丈彦氏。

eBayを通した越境ECにおいて、さまざま事業パートナーと提携している。

 eBayからのアクティブな購入者は世界で1億6400万人、eBayのサイトには常時10億点が出品されており、四半期の流通総額は210億米ドル(約2兆1500億円)とのこと。特に日本から米国、英国、オーストラリアといった国々への販売額が記録的に伸びているとしています。

 ちなみに筆者がeBayを使う場合、欧米だけでなく、中国や香港からも商品が買えることにメリットを感じています。中国から直接買うのに比べると、eBayに出品している業者は英語が通じることが多く、PayPalが使えるという安心感もあります。

京都の伝統工芸品をeBayで販売

 海外需要という意味では、最近まで日本を賑わせてきた訪日外国人による「爆買い」ブームがありました。最近では円高の影響もあり、一段落したことが報じられています。

 とはいえ、わざわざ日本に来てまで買ってもらえるのなら、ネット通販を充実させることで、広く世界中の人に買ってもらえるのではないか、とも期待できます。

 これまで中国からの観光客に人気があったのは、質の高い日本の食品や生活用品でした。これに対して欧米圏からの旅行者は、日本の伝統工芸である着物や民芸品に関心があるといいます。

着物や民芸品への需要の高さを語る、イーベイ・ジャパン ビジネス開発部 部長の岡田朋子氏。

2020年までに訪日外国人の増加と消費額は大きく増加する見込み。

 そこでイーベイ・ジャパンは、伝統産業の多い京都に注目。越境ECを支援してきたノウハウを活かし、京都の着物や民芸品をeBayの特設サイトで販売するという、新たな施策を発表しました。

出品や発送業務はフォネックス・コミュニケーションズが、決済面では2015年までeBay子会社だったPayPalが支援する。

 説明会には京都市長である門川大作氏も訪れ、「観光客で京都は賑わっているが、伝統産業は厳しい状況にある。京友禅の出荷額は40年前の2.5%、西陣織は7%にまで落ち込んだ」と窮状を訴えました。

京都市長の門川大作氏。「京都のタクシー運転手は西陣織にも詳しいと評価が高いが、これは職人が本職ではないタクシー運転手をしているから」とのエピソードも。

「京都の老舗は、宣伝するのではなく良いものを作れば分かってもらえる、と考えている。だがいまの時代、積極的に説明し、アピールしなければ売れない」と指摘し、eBayへの期待を寄せました。

eBay内に開設された特設ページには、着物や茶器、お茶などの販売が始まっている。

海外通販の壁を超えられるチャンスか

 海外市場の可能性は大きいとはいえ、一般に海外発送に対応したネット通販サイトというのは少ないものです。ガジェットの世界でも、英国のCloveや米国のB&Hといった通販業者が知られていますが、逆にいえば、ほとんどの業者は国内市場に特化しています。

 その背景として、海外通販は買う側にも売る側にも、さまざまな障壁があることが挙げられます。文化や規格の違いにより国内でしか役に立たない商品もありますし、商品説明やサポートに用いる言語の壁、代金の受け渡しという決済にも壁があります。

 物理的な距離の遠さや、送料も問題です。外国の住所までちゃんと届くのか、いざというとき返品できるのかといった不安はつきものです。

 ただし、海外通販のノウハウがある業者のサポートを受けられるならば、挑戦してみたいというメーカーや生産者は多いのではないでしょうか。うまくいけば「爆買い後」の日本を支える鍵のひとつになるかもしれないと筆者も感じています。

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