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ASCIIネクストイノベーターズ「新型ラジオハードウェアHintの気配」 第1回

かっこよくて「気配」のようなラジオ「Hint」誕生の秘密を吉田アナが語る

2016年08月02日 09時00分更新

文● 西田宗千佳 編集●北島幹雄/ASCII STARTUP 撮影●曽根田 元

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 新しい「ラジオ」が出る。

 ラジオ、と聞いて興味を失った人、そうでない人、いろいろだろうとは思うが、このプロダクトはちょっと異例だ。発案者は、ニッポン放送の吉田尚記アナウンサー。商品企画はグッドスマイルカンパニー(グッスマ)が担当し、デザインはグッスマとの関係も深い、クリエイティブディレクターのメチクロ氏が手がける。そして、開発は数々の「変なIoT機器」を手がけてきた、ハードウェアスタートアップのCerevoが担当する。しかもこのラジオ、ニッポン放送が正式に自社のプロジェクトとして展開する、世にも珍しい「ラジオ局が作るラジオ」となる。

 「H!nt」(Hint)と名付けられ、7月21日からクラウドファンディングが開始されたこのラジオは、どのように生まれ、そして世に出て行くのだろうか。今回から出荷までの間、その流れを当事者へのインタビューの形で追いかけていく。

 トップバッターは、発案者である吉田尚記氏。ラジオを愛する彼は、なぜ「ラジオを作る」ことになったのだろうか。

ラジオが斜陽だなんて誰が決めた!

 「ラジオって成長産業だと思うんですよ」

 吉田氏はそう切り出す。ちょっと意外にも思える言葉だが、そこにはもちろん、吉田氏ならではの分析が存在する。

 吉田氏(以下敬称略):1950年代にテレビが出て以降、ずっとラジオは「10年後にはなくなる」って言われ続けてきたんですよ。でも、「ラジオを聴いている人はどのくらいいるのか」という調査をすると、必ず6~7%はいるんです。なくなってないじゃん、と。

 いま、世の中にマスといえる媒体はテレビしかない、と思っていますが、ラジオの話って、絶対にテレビで特集されないんです。ラジオ番組のCMをテレビが打つこともない。マス広告がないのに聴いている人が6%いるということは、「すごく力があるメディアだ」ということ。過去何十年にも渡ってマス媒体で広告されていないのに、6%の利用者を維持し続けているって異常なことだと思いませんか。

 一方で、日本では1週間に5分以上ラジオ聴く人は、30%から40%しかいません。これが欧米だと、同じ条件では90%に達します。なぜ日本はこんなに少ないのだろう?と考える一方で、まだ60%分の成長余地がある、すなわち「日本のラジオは成長産業」なんです。

 ただ同時に、僕らは一生懸命やっているけれど、やり損ねているんじゃないか、とも思うんです。いままで通りでいい、とはまったく思っていない。やり残していることが必ずあるんです。

とにかくかっこいいラジオが欲しいんだ

 ラジオを伸ばすためにやり残したこととは何か。それを吉田氏はずっと考えている。その中で思いついたひとつのアイデアが、「ハードウェアとしてのラジオのあり方」だった。

 吉田:ラジオってかっこよくないですよね。トランジスタラジオの登場以降、形が変わっていない。発想の飛躍が必要なんじゃないか、と思ったんです。箱ですらある必要がなくて、「音が出るかっこいいもの」がない、というのは、一人のガジェッターとして感じていたんですよね。

 その昔、ラジオが人気の家電だったときには、家電メーカーのトップエンジニアやデザイナーがラジオを作っていたはず。それこそ、「スカイセンサー」(ソニー)とか「クーガー」(松下電器産業、現パナソニック)が売られていた時代(1970年代)には。でも今、トップエンジニアとデザイナーはスマートフォンを作っています。それは、ニーズがないことに加え、そもそも作ろうとも思わないからでしょう。

 2015年夏のこと。吉田氏はグッドスマイルカンパニー代表の安藝貴範氏とFacebookのチャットで話したという。ちょうどその頃、グッスマはメチクロ氏[SF inc. /MHz]デザインによる変形ヘッドホン「THP-01」を製品化したところだった。吉田氏がグッスマ・安藝氏に呼びかけたのも、THP-01のかっこよさに魅了されてのことだった。

toon WORKSHOP THP-01

 吉田:安藝さんからは「これはヘッドホンだけで終わりじゃない、もっといろいろなものを作りたい」という話があったんです。

 そこで「ラジオのかっこいいのはどうですか?」と提案したところ、「面白い」ということでメチクロさんをご紹介いただいた、という形が最初です。メチクロさんからも「それは面白い」と言っていただけました。

 先ほども話した通り、いまは、トップデザイナーはラジオを作らない。でも、トップデザイナーをラジオ製作の第一線に引きずり出すことに成功したわけですよ。

ラジオに求められているのは「気配」だ

 吉田氏とメチクロ氏の間で交わされたのは「ラジオとは何か」という話だった。

 吉田:メチクロさんは「ラジオがどういうものか、を捕まえられれば、製品が作れる」と言うんです。トップデザイナーの発想ってすごいな、と思ったんですが……。

 みなさん気づいてないと思うんですけど、ラジオ番組では基本「みなさん」とは言わないんです。実は初歩の初歩なんですが。ラジオでは「みなさん」というと気持ち悪いんです。スピーチや講演、授業ではなく、「友達と電話している時に、友達を面白がらせるくらいの気持ち」がいい。

【吉田アナほか関係者の登壇が決定!】2016年8月26日(金)開催のIoT&ハードウェアスタートアップの祭典“IoT&H/W BIZ DAY 2 by ASCII STARTUP”ではHintのセッションを実施予定です。参加登録はイベントレジストまたはPeatixの申し込みページからお願いします。

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