米国では興味深い調査も
Appleは7月22日に、ポケモンGOがApp Storeにおいて、「リリース後1週間で過去最高のダウンロード数」を記録したと発表しました。正確なダウンロード数や歴代“2位”に転落したアプリについては公表されていません。
米アプリ調査会社のSensor TowerによるとポケモンGOはすでに、iPhone/Androidの合計で7500万ダウンロードを超えていると見積もっており、Facebook以上の滞在時間を記録。スマホ以外の可処分時間を食い荒らしている様子が明らかになってきました。
Slice Intelligenceによると、ポケモンGOでのアプリ内課金が、他のすべてのゲームの課金を合計した金額を上回ったとのデータを示しており、アプリ内課金をしている人の4割が、過去6ヵ月に1度もスマホゲームにお金を使ったことがない人々だったとしています(https://intelligence.slice.com/poke-profits-game-purchases-pokemon-go-accounted-half-entire-mobile-game-market-launch-weekend/)。
また、金融アナリストのLaura Martin氏は、ポケモンGOのダウンロードの2/3がiOSであることを理由に、今後2年間にAppleはポケモンGOから30億ドルを稼ぎ出す可能性を指摘しています。
日本滞在中、家電量販店を訪れてみると、モバイルバッテリー売り場に人だかりができていて、バッテリーメーカーも非常に大きな需要への対応に追われていると言います。
このように、世界中で、人々の新たな行動を作り出している点で、ポケモンGOがこれまでのゲームとは異質なものであることがわかります。いままでのゲームは、以下にスマホの画面を占有するかでしたが、ポケモンGOは画面だけでなく、その人の行動まで占有するゲームだからです。
フィジカルに人が動くこと、ゲームに人が動かされることは、Ingressによって既に経験していた人もいますが、その規模が格段にあがって実現されている点で、社会現象と呼ばれる状態になったと考えています。
とはいえ、やはり考えてしまう、負の影響
筆者は米国に住んでおり、本連載でも何度か紹介してきたように、治安の悪さと隣り合わせです。特に今年に入ってからは、毎週半旗の米国旗を見ているのではないか、というほどに、追悼すべき事件が米国内外で発生しています。
そのため、つい想像してしまうのは、ポケモンGOを活用したテロの可能性です。たとえば、ポケモンGOの人気スポットでテロ事件が起きたら……。ルアーモジュールを絶えずさし続けるには、30分あたり1ドルしかかかりません。
実行犯がルアーモジュールをさし続けながら、ポケモンを捕まえるのに適した場所だという情報をTwitterなどで流して人を集めることができれば、ゲームを楽しんでいる人々が簡単に集まってしまうのが現在の状況だと思います。
個人的にもポケモンGOを楽しんでいるし、人々の行動を変える非常に興味深い「時代」を作るゲームだと見込んでいます。それゆえに、同じく人々を傷つけ、不安に陥れるこの「時代」のやりかたであるテロとの結びつきが起きないことを祈るばかりです。
筆者紹介――松村太郎
1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。米国カリフォルニア州バークレーに拠点を移し、モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。
公式ブログ TAROSITE.NET
Twitterアカウント @taromatsumura

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