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Xperia X Performance開発者インタビュー【前編】

Xperia X Performanceの背面メタル採用とFeliCaアンテナの移動による恩恵が明らかに

2016年07月23日 15時00分更新

文● 石野純也 編集●ゆうこば

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メタルに変えたことで「熱問題」にも好影響
FeliCaアンテナ移動による意外なメリットも

Xperia X Performanceの分解モデル。中央のモデルでヒートパイプの本数がわかる

──次に、Xperia X Performanceの中身について教えてください。筐体が小さくなっていることもあって、放熱などは苦労されたのではないでしょうか。

機構設計担当 金子文稔氏

金子氏:ヒートパイプについては、Xperia Z4までが1本、Xperia Z5からは2本を内蔵しています。Xperia X Performanceについてもここは同じで、2本です。基板で言うと、CPUの部分から、熱が下部に落ちるように設計しています。この部分に関して言えば、特別に大きな変更を加えたわけではなく、基本的には従来機の踏襲です。

 一方で、企画の当初から、背面をメタルにすることが決まっていました。実は、メタルは、放熱に対してもプラスの効果があります。ガラスは熱伝導率が低く、拡散もしてくれません。一方、熱伝導率が高いアルミは熱を拡散することができますからね。これによって、熱を大きく下げられました。

 また、背面をメタルにしたことで、NFC/FeliCaのアンテナが正面部分にきています。その代わりに、元々アンテナがあったところに、グラファイトシートをはることができました。メタルとグラファイトシートの両方で放熱することができるようになったため、Xperia Z5に比べても熱的な余裕が出ています。

――なるほど。素材が変わったのと同時に、アンテナ設計の変更が熱にプラスになったということですね。

金子氏:はい。メタルだと、裏側にはアンテナを持ってこられないですからね。どこに配置するのかは色々とありましたが、フロント側に持っていくことになりました。

──おサイフケータイの利用シーンを考えると、無理に背面になくてもいいのでは……という気はしています。前面に配置することでFeliCaマークがシールになり、自分で外せるのもいいですね(笑)。

金子氏:お客様によってはFeliCaを利用する際に、画面が見えるのが嫌だという人もいますからね。正面にあって、(そちらをタッチすることで)画面が見えていない方がいいという方もいます。

染谷氏:ただ、ここはお客様によって好みが分かれる部分でもあります。前にあった方がいいという人もいる一方で、やはり後ろがいいという人もいます。

矢部氏:背面をタッチしてまったく使えないわけではありませんが、(アンテナのある部分をタッチするよう)配慮はしています。メーカー側からのオススメは、おっしゃったようなシールやUIのメッセージで説明するようにしました。いままでのクセや慣れで、背面をタッチしてしまう人もいますらかね。

初回起動時などに表示されるFeliCaアンテナに関するメッセージ

SoCはSnapdragon 820に
SIM&SDカード用新型トレイにもヒミツが

──SoCも、Snapdragon 810から820になったことは効果があったのでしょうか。

金子氏:はい。最新のチップセットでは熱も下がっています。

矢部氏:一方で、クアルコムさんも、チップセット比較で、2倍に性能が向上したとおっしゃっています。弊社から具体的な数字はお伝えできませんがが、やはりベンチマークテストの結果もいい。ゲームなどをされるお客様も多いと思いますが、ローディングが速かったり、サクサク感などもZ5より上がっています。

──逆に、画面サイズが小さくなったぶん、容積はXperia Z5より減っているのではないでしょうか。設計という意味では、難しかったと思いますが、いかがでしょう。

金子氏:確かに大変でした。実際、0.2インチぶん小さくなってますからね。どう効率よくマウントするか、どうすれば基板を小さくできるかは試行錯誤しました。(解決策は)何かを大きく削るというより、小さいことの積み重ねです。

 たとえば、nanoSIMカードとmicroSDカードのトレイとフタを一体化したところもそうです。いままではキャップ部分にヒンジが入っていましたが、それが本体の中に入っていました。そうすると、その領域には実装ができなくなってしまいます。

──そういうところで、少しずつ実装できるところを増やしていったということですね。

金子氏:ほかには、チップ同士の距離を詰めたり、レイアウトを変えることで対応しています。こちらを増やすとこちらが減るなどもあり、バランスを考えながら基板のサイズを小さくしています。

田代氏:それと同時に、部品サイズ1つ1つも、小型化を進めていきました。

長寿命バッテリーやメモリークリーナーなど
新搭載のインテリジェンス機能

――バッテリーも小さくなっていますが、これで余裕が出たということもあるのでしょうか。

金子氏:そこでもチップセットとのバランスを見ています。チップセットの熱も下がり、電力効率が上がったことで、逆に電池を多少小さくしても、お客様に提供できるスタミナはいままでとそん色ないということで、変更をしています。

矢部氏:電池に関して、より長く使っていただくことも重視しています。いまのお客様は平均利用期間も伸びていて、25〜30ヵ月ぐらい使うようになっているとも言われています。

 1日、2日といった電池の持ちにこだわるのと同時に、長く使っていただけるよう、Qnovoさんと一緒に、長寿命なバッテリー充電技術も搭載しました。Xperia Z2比では、寿命も2倍長くなっています。

──バッテリーにも、インテリジェンスを入れたということですね。実際、どのくらい効果があるのでしょうか。

矢部氏:1年から1年半ほど使うと、100%からの減りが速くなりますが、その感覚が倍ぐらい違ってきます。お客様の購入動機を見ると、やはりバッテリーのヘタリは大きい。バッテリーの持ちのカタログ数値が、1年後には実現できなくなることが不満点として挙がっていました。そこに対して、より長く使っていただけるアプローチを取っています。

染谷氏:インテリジェンスという意味では、新しく入った機能で、「スマートクリーナー」というものもあります。これは、メモリーの使用量を自動的に判断して、クリーンアップしてくれるものです。

新搭載の「スマートクリーナー」。オンにしておけば、そのほかにユーザーが意識して操作することはない

 同じようなサードパーティー製アプリもありますが、こうしたアプリは、ある程度メモリーがいっぱいになってきたときに、手動で操作する必要があります。それに対し、スマートクリーナーは自動的に残量を見て、一定の容量を確保するため、常にサクサク動いてくれます。

 これは、ユーザーの一定期間の使用率などを見て、計算して先読みしているからできることです。空いているスペースが足りないと、その余力をつくるために時間がかかってしまいますが、常に一定量のメモリが空いていることで、カメラなどもすぐに起動できます。

──メモリーにもインテリジェンスということですね。


7月24日公開予定のインタビュー後編では、新カメラ機能「先読みオートフォーカス」搭載のワケや、音楽関連の意外な進化点、ディスプレーと正面カラバリに関する開発秘話が明らかに!

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