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高橋幸治のデジタルカルチャー斜め読み 最終回

「これほど身近な時代はない」ネットと法律はどう関わるのか

2016年07月12日 09時00分更新

文● 高橋幸治、編集●ASCII.jp

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人類はいま、史上最も法律に触れている

高橋 誰の本に書いてあったのか失念してしまったんですが、昔、公園の設計に関するおもしろいエピソードを読んだことがあって、それは、遊び方が規定された遊具ばかりを取り揃えた公園というのは子供たちがすぐに遊ばなくなるそうなんです。

 むしろ無造作に棒が立っていたり、意味なく石が置かれていたり、ある種のいい加減さ、ユルさ、おおらかさみたいなものがある公園のほうが子供たちが自分で遊びを開発していくらしいんですね。

水野 そういう感覚は重要だと思います。いかにいろんな人が公共圏や公共財を使いやすいようにコモンズをデザインし、編集し、プログラミングしていくかということですね。

 僕自身もよく自分の仕事をプログラミングに例えることがあるんですが、毎日のように企業の契約書やサービスの利用規約を作成していると、良好な人間同士や社会をどうプログラミングしていくか、という感覚があります。いかに企業の権利や利益を守りつつ、ユーザーの自由を奪わないか、社会全体でWin-Winの関係性を維持できるかということに気を使いますね。

高橋 ホント、水野さんのお仕事は法律をデザインし、編集し、プログラミングしているという感じですね。

水野 よいプログラムを書けばそのコードが実行される環境はよいものになるでしょうし、法律や契約は社会のOSと言える存在なので、大仰な言い方かもしれませんが、社会のOSを開発しているとも言えるのかもしれません。

 契約なんていうとみんな自分の生活とはほとんど縁のないことのように思ってしまいがちなんだけれども、有史以来、これほど人間が日常的にさまざまな場面で法的なものに触れている時代ってないんですよ。

 身近な例で言うとTwitterにおいてすら、ツイートのひとつひとつが著作物になり得るわけですからね。だから、僕らは毎日インターネット上でさまざまな企業やサービスと契約をかわしているということなんです。

高橋 単に僕らが読んでいないだけで(笑)、実はあらゆるSNSにも利用規定がありますもんね。

パソコンでTwitterにアクセスする際には常に表示されているがほとんどの人がクリックしたことすらない「Twitterサービス利用規約」。実際に読んでみると、何気ない日々の利用がTwitter社とユーザーとの契約の上に成り立っていることがわかる

水野 それと同時に、有史以来、実態と法律がこれほどかけ離れてしまっている時代もないわけです。あらゆるものがとてつもないスピード感で変化してしまっていますから、現状を汲んで作成した法律でもあっという間に実情と齟齬が生じてしまう。

 そういう意味では法律家の仕事がいまほどおもしろい時代はないと思うんですよね。法律のクリエイティブな解釈が求められている時代と言ってもいいと思います。読み方やとらえ方次第であらゆる可能性が開ける。だからこそ変わらない人間の普遍的で本質的なものを見極めなければいけないという側面もありますけどね。

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