
今回のことば
「今後、ブラザーにとって、プリンターは収益強化事業になる。これまでとは違う視点であり、大きなチャレンジ。収益強化のためにはソリューション提案力が必要になる」(ブラザー販売・三島勉社長)
異例会見の裏にあるプリンター市場のマイナス成長
ブラザーは、A4モノクロレーザープリンター/複合機として、「JUSTIOシリーズ」5機種を、6月上旬から発売する。
会見の挨拶でブラザー販売の三島勉社長は、「いつもならば会見をやらないカテゴリーの製品。だが、この新製品の会見を開いたのには意味がある」という、意外な言葉で切り出した。
三島社長は2016年4月に社長に就任したばかり。社長として最初の製品が花形ともいえるコンシューマー向けプリンターでも、カラーレーザープリンターでもなく、モノクロレーザープリンターという、まさに文字通り地味な製品となったわけだ。だが、それにも関わらずこの製品の重要ぶりを強調してみせる。
ブラザーグループでは2016年4月から、新たな中期戦略「CS B2018」をスタート。これにより、「時代や環境の変化に対応し、生き残ってきたDNAを伝承し、未来永劫の繁栄に向けて、変革や成長領域に挑戦し続ける複合事業企業」を目指す。
三島社長は「これまでのCS B2015では、ヒューレット・パッカード、エプソン、キヤノンといった強い競合がいるプリンター市場において、プリンティング事業を拡大させることを主眼としてきた。だがプリンター市場がマイナス成長となり、プリントボリュームが減少するなかで、ブラザーグループを複合事業体として成長させていくこと、そして、プリンティング事業においては、プリンターを収益強化事業とすることを新たな中期経営計画で掲げた。これまでとは違う視点であり、当社にとって大きなチャレンジとなる」とする。
プリンティング事業を成長事業から収益強化事業へと舵を切った背景には、プリンター市場の大きな変化が見逃せない。
「この1年でプリンター市場が激変した。プリンター市場の成長が鈍化したどころか、マイナス成長に陥った。コンシューマーユーザーのプリントボリュームも減少している。プリンタービジネスを成長させることを主眼としていた戦略を見直さざるを得ない状況になる」というのは明らかだ。
新たな中期経営計画のなかで掲げたプリンティング事業の収益強化において、同社が取り組むのが、ビジネスソリューションの強化である。

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