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四本淑三の「ミュージック・ギークス!」 第152回

栃木県足利市からとんでもないデュオがきた

ジャンル分けできない強烈な音楽「てあしくちびる」って誰だ?

2016年06月25日 12時00分更新

文● 四本淑三

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おもしろいことをやりたいから聴きまくる

―― 習いごとでバイオリンをやられていた方としては、急にノイとかバウテンとか言われても困りませんか。

くっちー 音楽の型(かた)にこだわりはないので、おもしろい、カッコ良さそう、みたいな感じでやれました。それまで私は、クラシックがおもしろいと思って弾けていなくて。小さいときから、人前で話したりとか、表現することが苦手で。

―― あの、まったくそうは見えませんけど。

くっちー ホントですよ、一言も学校では喋れないような。それでバイオリンが唯一表現するものという感じで。でも、ただ単純に弾くのが好きで。だから、もっとおもしろいことをバイオリンでやってみたいなあと、ずっと思っていたので、別になんの抵抗もなかったです。

―― kawauchiさんは、このバンドの前は弾き語りをやってらしたわけですよね。その頃から音楽の趣味はそういう感じだったんですか。

kawauchibanri いえ、それまでは日本のアンダーグラウンドのフォークが好きでした。友川 かずきさんとか、遠藤 賢司さんとか、早川 義夫さんとか。いろんなきっかけがあって、20代の前半くらいから急にいろんな音楽を。なにがきっかけだったんだろう?

―― 自分でパフォーマンスをするようになって、音楽のボキャブラリーを増やそうと思った、とか?

kawauchibanri そう、そういう感じですね。弾き語りというやり方に行き詰まりというか、もっとおもしろいことをやりたいけど、どうやればいいか考えていた時期でもあったんです。それでインプットの量を増やしたんですね。でも自分はアコギしか弾けないし、そこでなにか新しい楽器をやるよりは、いまある自分の技量や持ち物で、そのときに刺激的だと思ったことをやれたら、もしかしたらおもしろいことになるんじゃないかなと。


*


 てあしくちびるの謎にせまる手がかりを、若干ながらつかめた気がする。ストイックに音楽を追求するkawauchiさんの姿勢と、おもしろい音楽ならなんでもやってみたいという、くっちーのいい意味でのこだわりのなさ。この2人の組み合わせでなければ、こんな世にも不思議な音楽は、間違いなく成立しなかった。次回は彼らの「地元」をキーワードに謎解きを進める。

カフェアリエ

 てあしくちびるへの取材は、新宿区百人町にあるカフェアリエで行なった。このカフェは、磯崎 新が設計し、美術家の吉村 益信が建築したアトリエ兼住居で、荒川 修作、赤瀬川 原平らによるネオ・ダダの拠点として知られた「新宿ホワイトハウス」を改装したもの。現在のカフェオーナーは、かつて川崎市市民ミュージアムで音楽のイベントを多数企画してきた方で、そのうちのひとつである野外フリーコンサートにソロ時代のkawauchiさんも出演している。アジア諸国やイスラム系の人たちが行き交う、雑多で、真に都市的な場所にこつぜんと存在するゆったりとした空間が、どこかてあしくちびる的だった。

店舗:カフェアリエ
場所:新宿区百人町1-1-8
時間:火曜~土曜 11:00~22:00(水曜のみ20:30まで)/日曜日・祝日11:00~18:00/月曜日定休
http://cafearie.com

 (次回に続きます)



著者紹介――四本 淑三(よつもと としみ)

 1963年生れ。フリーライター。武蔵野美術大学デザイン情報学科特別講師。新しい音楽は新しい技術が連れてくるという信条のもと、テクノロジーと音楽の関係をフォロー。趣味は自転車とウクレレとエスプレッソ

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