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GPU合体式で薄カル・カッコイイUltarabook「Razer Blade Stealth」

アップルもデルも俺らについてきなよ、RazerのタンCEO

2016年05月27日 11時00分更新

文● 小林 久 編集●ASCII

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 昨日、国内でセンセーショナルなデビューを果たした「Razer Blade Stealth」はゲーミングデバイスで知名度の高いRazerが送り出す、12.5型のUltrabookだ。

 薄型で価格も手ごろ。黒の筐体に緑色のロゴ、そして虹色に輝くキーボードなど、見た目のインパクトも強い。しかし、最大の関心は「CORE」と名付けた、外部GPUユニットの存在だろう。USB Type-C(Thunderbolt 3)経由で接続する。ここにはデスクトップ用のビデオカードを収納可能で、外出先では携帯性に優れたモバイルノート、自宅に帰ればハイパフォーマンスなゲーミングパソコンが完成するのである。

RAZERの共同創業者でCEOのミン-リャン・タン氏

 このRazer StealthをRazerはどのように打ち出していこうと考えているのか? 来日したRazerの共同創業者でCEO・ミン-リャン・タン氏を取材した。

別にゲーマーだけがターゲットではないのだ

── アスキーの編集部ではRazer Blade2013年のモデルも2014年のモデルも直輸入で買って使ってます。ゲーミング企画などでいまでも活躍中です。

それはクールです。ありがとう。

── Stealthは携帯性に加えて、スペックも高いですが、どういう目的で決めましたか?

 根本的な話をすると、我々はスペックをデザインするということはしません。そうではなくて、ユーザーに合わせたスペックを選びます。3つの異なる視点のユーザーがいると考えて設計しています。それは「Razer Blade Pro」「Razer User」、そして「Razer Stealth User」です。

 Razer Blade Proというのは、ラップトップをデスクトップの代替として使いたいと思っている人です。ゲーム開発者やクリエイターが代表です。ゲーム開発には相応の処理能力が必要ですから、外出先でも性能には妥協したくないはず。

 一方Razer Stealth Userは、ビジネスプロフェッショナルや学生などを想定しています。外で必ずしも使う必要はないが、外に持ち出せる製品がいい。そのうえで家で使う際には、パワーをしっかり提供する。

 このようにユーザーの視点で何が必要かを考えて、設計して、スペックに落とし込む。これが我々の設計プロセスです。

自分で使いやすいと思えるノートでなくてはね

── では薄さについて。なぜこの薄さにしようと思いましたか?

 (少し考えて)私たちの最初の目的は「世界で初めての“真のゲーミング・ラップトップ”を作る」ことでした。数年前に私たちがノートの開発を始めたとき、ゲーミングノートと言えば厚くて、重いものしかなった。確かに高性能だけど、これは違うなと私は思いました。

 軽量で薄くて、自分でも使いやすくないといけないはずだ、と。

 そこで複数のマニュファクチャー(メーカー)と会話をし始めました。「最高のゲーミングラップトップを作りたいんだ」と。でも彼らが提案してくるゲーミングPCはどれも「超厚い、超重い、超パワフル」な感じのものなわけ。

 だけど僕がほしいのは違う。そうじゃなくて「超薄い、超軽い、超パワフル」なんだと言った。そして聞いたんです。「あんたたちゲームするの?」って。そしたら「しない」って言う。「ラップトップを作ってるけどゲームはやったことがない」って。

 だからRazerでは、2008~2009年ごろだと思うんですけど、世界トップクラスのラップトップ開発者を雇うことにしました。そして生まれたのが第1世代のRazer Bladeですね。言ってしまえば、自分自身がほしい製品を作ったわけです。

── そして完璧なものができたと。

 その通りです。

熱対策は3つやった、肝は熱を感じさせないこと

── 当初は熱の問題などもあったと思いますが。

 ハイパフォーマンスを追求すると、CPUやGPUから熱が出るのはしょうがないですよね。これは物理法則ですから。ただ熱をどう感じさせないか(サーマル・エクスペリエンス)は改善できる。この再定義がわれわれ最大の革新ですね。

 基本は3つ。最初は“ローカライズド・ヒーティング”と言うもの。手などユーザーが触れる場所から熱源をなるべく遠くするという考え方です。2番目はヒートパイプなど、放熱用のパーツすべてカスタムメイドの素材にしたこと。最後にこの目的を果たすために、インテルやNVIDIAと、かなり密なコミュニケーションをとるようにしました。

 多くの人々はラップトップは熱を持つものと理解していると思います。

 ただし重要なのは、ユーザーがそこに触れないことなんです。そこを誤解しないでほしいと思います。インテルやNVIDIAと組むことで安全かつ高品質で安定して使えるようになったし、ほかのメーカーもこのローカライズド・ヒーティングの考え方に刺激を受けて、われわれに追従してきたんじゃないかな、という自負もあります。

── Stealthの話に戻ります。“12.5型で4Kの解像度”はStealthの見所ですね。

 はい、IGZOの美しい液晶パネルを使っています。

── すばらしい画質ですが、タッチとノンタッチ両方ほしかった。

 我々はベストでプレミアムなものを提供したいと思っていて、あり得る可能性はすべて検討していきたいですね。シャープのIGZOパネルもそのひとつだし、Windows 10にはタッチが有益でしょう。だからみんなが求めるものになってると思いますよ。

Razer Blade StealthとRazer CORE

── 外付けのGPUユニットも用意していますね。

 Razer COREですね。

── StealthとCOREの組み合わせは、やはりヘビーゲーマーを想定したものですか?

 いえ、実際のStealthのターゲットは、おそらく“ピュアに持ち運びやすいも”のを求めてる人になるんじゃないかな。家に帰ったら電源につないで、よりパワフルに使うって感じです。

 ただ別のストーリーもある。「Razer Blade」や「Razer」というブランドは、ゲーマーのためのものっていう意識が強いと思うけど、意外と我々には仕事や学校で使えるものがほしいって意見が寄せられるんですよ。

 だからRazer Blade Stealthを開発する際には、より広い裾野──つまりメインストリームを取り込めるような開発をしようと思いました。そして、できれば普段ゲームをやっていない彼らをゲーマーにしてしまいたいと思っています(笑)。

 そういう意味ではStealthはあくまでメインストリーム向けの製品です。けれど、ゲーマーに対してはStealth+COREとの組み合わせにすれば高性能が出せるという提案もしていきます。

インテル、NVIDIA、AMD、そしてRazerで新しい標準を作りたい

── StealthとCOREの開発にはどのぐらいの時間をかけましたか?

 5~6年はかかっていると思います。開発初期は、外部にビデオカードユニットを接続するために、特別なポートが必要で、大きくて見た目もよくなかった。動作も不安定だし、抜き差ししているうちに壊したり、OSがクラッシュしたり。そういう品質で出している他社の製品もあったけど、でも「これじゃはRazerのおもてなしではないな」と。

 試作を繰り返しているうちに、Thunerbolt 3が出てきて、USB Type C接続ができるようになった。だから、我々は世界初のパイオニアとして、インテル、NVIDIA、AMDと一緒に新しい標準を作っていこうと考えました。

── USB Type-Cの規格についても、中心的な役割を果たしたのですか?

 Thunderbolt 3やUSB Type-C上でExternal Graphicsを動かす、という部分ではリーダー的な役割を果たしましたね。この規格は当社で作って、公開した形です。

── 接続の難しさの話が出ました。性能は当初からきちんと出たのですか?

 結果は予想以上でした。われわれは基本的にユーザーの視点に立って開発を進めています。接続前にわざわざ電源をオフにして、再起動して……みたいなのは、普通のラップトップの使い方とはかけ離れてますよね。家についたら、電源を付けたまま、あついはハイバネートしたまま直接つないで、すぐ使えるようにしたかった。そういう真のPlug&PlayをRazerの考える基準で実現できたと思っています。

度肝を抜くものやっていきたい

── Core i7も搭載して非常にハイスペックですが、モバイルノートでもやはり性能は追求すべきなのでしょうか。また今後も上げ続けられるでしょうか?

 Razerはイノベーションによって、リミットを破ってきた経緯があります。だからその余地は常にあると信じてますね。いま2つの製品が計画されていますが、それもユーザーの度肝を抜くんじゃないかな。

── 最後にBladeやStealthのポートフォリオと、COREを他社のUltrabookでも使えるようにしていくのかという2点を教えてください。

 すでに述べたようにStealthはメインストリームユーザー、オフィスで働くする人や大学の学生など広い層をターゲットにしていきたいです。日本語キーボードも用意できたので、日本でも大々的な発表会をすることにしました。日本人はデザインや品質への要求が高いけれど、Stealthなら絶対に受け入れてもらえると思っています。

 COREの技術も積極的に外に広めていきたいですね。誰もが使える薄くて軽いラップトップを、初めて作れた。しかも絶対的に高い性能も持っています。一方で、MacBook AirやデルのXPSみたいな薄いマシンのUSB Type-Cから出力すれば、より高いグラフィックス性能を得られるんじゃないの?って聞く人もいます。我々としては、オープンスタンダードとして、この技術を共有していくので、Appleやデルにもこの技術を使ってほしいと思っています。

 だからクローズな技術ではありません。ただインテグレーションをするにはそれなりのノウハウも必要です。サードパーティの腕の見せ所ではないでしょうか。そういう意味ではつながるけど、つなげばすぐ使える感じにはならないかもしれない。我々は真のPlug&Playだけど、例えば一度電源を落とさないとダメとかね。そういうノウハウを蓄積しているのがわれわれの強みになると思います。

── 確かにいいできです。日本での成功をお祈りしています!

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