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「ふるさとテレワーク」は地方を救うか!? 第8回

すべての企業に想像してみてほしい

田澤由利氏に訊く「ふるさとテレワーク」が絶対必要なワケ

2016年04月25日 06時00分更新

文● 川島弘之/TECH.ASCII.jp

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成功のために大事なこと

 2016年も「ふるさとテレワーク推進事業」はそれぞれの地域で継続されていく。ただ、田澤氏は「成功するのは簡単なことではない」と述べている。その上で「大事なこと」は何かについて、こう説明する。

 「ふるさとテレワークは単に建物を建てて、ICTを導入すればいいというものではない。重要なのは『地域と企業が結びつくこと』。仕事をする場として地域と企業がつながることは、これまでほとんどなかった。これをつなげていこうというのだから容易ではない。一番重要なことは『地域の魅力』。これがないと企業は来てくれない。それぞれの地域にどんな魅力があるのか、もしかしたら『え、そんなものが魅力になるの?』と思うものかもしれないけれど、地域の人が知恵を働かせ、努力をして、掘り起こす。いま地域が最も考えなければいけないことだと思う」(同氏)

 一方、今回の実証でこういう働き方を地域が知ったことは「大きな成果」と語る。今後の推進にあたって、自治体の参考となりそうな「何が企業のモチベーションとなるのか」も見えてきた。「福利厚生」「社員育成」「人材確保」「生産性向上」「その他」の5点だ。

企業のモチベーション

 自治体はどのような姿勢で臨むべきか。田澤氏は「費用も含め、自治体が力を入れて、地域全体で受け入れることが重要。地域に企業がきたのに誰も“おもてなし”しなかったら――? リピートはあり得ない。これは観光と一緒。特にキーパーソンの存在が大切になる」と語る。

 さらに「もちろん企業もテレワーク制度を作って、意識を変えていかなければいけない。それを支える政府の支援や規制緩和も重要。これだけたくさんのことをやっていかないと『ふるさとテレワーク』は成功しない。簡単ではないですよね。ただ、逆にこういったことをしっかりやれば、地域と企業はつながっていけると、今回の事業でかなり実証できたのではないかと思う」としている。

「成功は簡単ではない」(田澤氏)

今後の方針

 今後はどう進められるのか。4月22日に、各実証地域の成果を報告する「ふるさとテレワーク推進会議(第5回)」が開催され、2016年度の方針が説明された。総務省は「平成28年度ふるさとテレワーク推進事業」として事業を継続し、計7.2億円の予算を計上。推進したい自治体を対象に、上限4000万円の定額補助として、古民家・廃校・公営住宅などの既存施設をサテライトオフィスに改修する初期整備や、ICT導入整備などを支援する。

 「地方創生加速化交付金」なども始まっており、働き方改革、ワークライフバランスの実現といった事業が交付対象となるため、アイデア次第で「ふるさとテレワーク」の補助金と組み合わせることも可能だ。そのほか、事業者・利用者の意識を改革してテレワークの裾野を広げるため、事例紹介やセミナーを実施。「女性の活躍推進」や「介護離職ゼロ」に向けて、本格的な全国展開を図るとしている。

ふるさとテレワーク推進会議(第5回)の様子

 一方、田澤氏は今後の方針をこう描く。「ふるさとテレワークにはいくつかの段階がある。第1段階では、地域と企業がつながる。すると地域はもちろん、企業にとっても、今までになかったメリットが創出される。企業のメリットは“企業のモチベーション”として挙げた5種類だが、この段階ではまだ、1つの地域と企業が繋がった状態」(同氏)。

 「第2段階では、メリットを感じる地域と企業が増えて、復数の地域と企業のつながりが生まれてくる。国も“最低でも47都道府県ごとに1つの受け入れ自治体”を目指しているが、こうなると別の動きが出てくる。例えば、親の介護で社員が故郷に帰る場合、社員それぞれが自分の故郷に近いサテライトオフィスを使うことで、継続勤務が可能となる」(同氏)

 各都道府県に用意されたサテライトオフィスを、さまざまな企業の社員が共同利用する形だ。これまで「ふるさとテレワーク」のような働き方は、「諸事情を抱えた社員だけ特例」というケースも多かったと思われる。より柔軟なこの状態となれば、企業や地域による「オープンイノベーション」も加速していくだろう。

このほか、日本版CCRC(生涯活躍のまち)構想とふるさとテレワークの融合も可能性として考えられるという。高齢者が会社を退職してからではなく、退職せずにテレワークで地方へ移住する

 「第3段階はわたしの夢ではあるけれど」と田澤氏は続ける。

 「地域に都市部と同様に働ける拠点ができれば、地域の子どもたちがそこへ就職を目指す時代がくる。テレワークで働くための教育も始まり、東京で数年働いて成長したら故郷に帰る“北見市のサケモデル”も現実的な生き方になる。都心部の企業が『子どもが2~3歳の頃は自然の中で子育てしたい』という社員のリクエストに応えても、それが企業のデメリットとならないような、そんな状況を理想としている」

 そこへ向けて――。

 「今回の実証事業が始まるまでは“ゼロ”の状況だった。本当に企業が仕事できるのかと多くの地域が疑問だったと思う。けれど、何もしなければ何も起こらなかった中で、まず15地域でやれたのが、何よりの実績。もちろん課題も多いけれど、2016年度にもつながっているのは本当に素晴らしい。ふるさとテレワークは“企業と地域がつながる”ことが一番大きなことだけど、最初は短期間だけ企業がやって来るのでもいいと思う。そこからいい場所だと思ってまた来てくれる、人に紹介してくれる、新しいビジネスが生まれる、移住者が生まれる、企業もどうせ発注するなら地域の人に発注してくれる。そんな好循環となる“大きな一歩”が、2015年度の実証事業だったと思う。これからもぜひ、地域が地域の特色を活かしながら、一社でも多くの企業がやってくるよう取り組んでいってほしい」(田澤氏)

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