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ベルリンフィルのハイレゾ配信を支えるIIJの鈴木会長:

4K放送できるテレビ局はNHK+0.5局ぐらいしかない

2016年04月08日 22時39分更新

文● 小林 編集●ASCII

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 IIJとベルリン・フィル・メディアは4月8日、東京文化会館で記者会見を実施した。IIJはベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の映像配信サービスデジタル・コンサートホールのストリーミングパートナーになる契約を1月1日に締結している。その成果のひとつであり、開始したばかりのハイレゾストリーミング配信サービスを紹介した。

まずはベルリンフィルの自主制作盤3作品をハイレゾ配信

 デジタル・コンサートホールは、インターネットを通じて世界中でベルリンフィルの演奏を楽しめる映像配信サービス。年間利用料は149ユーロ(約1万8500円)で、年間40本のライブ中継のほかアーカイブ映像やインタビュー映像なども用意している。

 今回このサービスのひとつとして、最大192kHz/24bitのハイレゾ音源(FLAC形式でビットレートは最大4.5Mbps)をストリーミング再生できる新コーナーを開設。本日4月8日からデジタル・コンサートホールの会員向けに、ベルリンフィル演奏のハイレゾ音源を提供し始めた。これは日本限定の試みで、まずはすでにパッケージ販売されているベルリンフィルの自主製作アルバム3枚に収録された22曲を配信。今後はグラモフォンやソニーといった他レーベルの楽曲にも範囲を広げて配信していく計画だ。

 
DIGITAL CONCERT HALLのハイレゾ配信画面(IIJのロゴが右上に見える)

 音源の再生はブラウザー上で行なうため、特別な再生ソフトのインストールは不要だ。今後の展開として、USB DACとの接続ややAirPlay、Chromecastなどを通じた外部機器連携、プレイリストや検索機能の強化、再生中に楽曲の背景やスコア、字幕などを表示する機能なども追加していく計画とのこと。IIJはデジタル・コンサートホールのスポンサーとなり、ストリーミング配信の基盤提供など技術面でもベルリン・フィル・メディアと協力していく考えだ。

IIJのPrimeSeatでもベルリンフィルの演奏を積極的に配信

 IIJは“PrimeSeat”と呼ばれるハイレゾストリーミングサービスをすでに提供しているが、このPrimeSeatでもベルリン・フィル・メディアと協業する。提供を受けたベルリンフィルのコンテンツをPrimeSeatのインターネットラジオ番組“ベルリン・フィル アワー”を通して配信する。初回放送は4月16日になる見込みだ。直近の配信日時と番組名は以下の2つ。ともに48kHz/24bitのPCMで配信する。

 またPrimeSeatでは「東京・春・音楽祭」のベルリン・フィルメンバーによる公演のDSD配信も4月9日に実施する。

第1回配信:4月16日19:00
『ラトルのマーラー「巨人」、ベートーヴェン「第4」』

第2回配信:4月23日19:00
『アバドのシューマン「第2」 ベルク「ヴァイオリン協奏曲」のソロはファウスト』

DSD配信:4月9日19:00
「ベルリン・フィルのメンバーによる室内楽」(メンデルスゾーンのピアノ三重奏曲第1番 ニ短調 op.49、チャイコフスキーのピアノ三重奏曲イ短調 op.50≪偉大な芸術家の思い出に≫)

4K放送できるテレビ局はNHK+0.5局ぐらいしかない

 IIJの代表取締役会長の鈴木幸一氏は、会見の冒頭で「IIJは、すべてのコンテンツの配信はネットワークを経由すると考え、ストリーミング配信のサービスに従事してきた。1995年に始めて、1996年にはYMOのライブをニューヨークから中継。1999年には小澤征爾指揮のサイトウ・キネン・オーケストラによるマーラーの交響曲第9番の配信などにも取り組んできた」とした。

 さらに2015年にはドイツにあるベルリンフィルのホールからDSD5.6MHzの品質で演奏をライブ配信。その取り組みが今回のパートナーシップのきっかけになった。鈴木氏も「動画を見るぐらいのリッチな帯域を使って、高音質な音だけを配信するきわめて画期的なサービスである」とアピールした。

中央がIIJの鈴木幸一代表取締役会長。左がベルリン・フィル首席チェロ奏者でベルリン・フィル・メディア代表のオラフ・マニンガー氏、右がベルリン・フィル・メディア取締役のローベルト・ツィンマーマン氏。

 IIJがハイレゾのストリーミング配信に取り組む意義としては、まず最初に「将来の世界を予見させるような配信サービスの体験を重ねる」ためと鈴木会長は言及。「世界的な名声を持つベルリンフィルは、配信の技術や経験も世界の最高水準」としたうえで、将来あらゆるコンテンツを運ぶ経路としてインターネットが重要になるとコメントした。同時に以下のようにも話す。

 「既存のテレビ放送の帯域を4K配信に使う場合、空いているのはせいぜい1.5局程度分。となると(リッチなコンテンツは)ネットワーク配信が主流になる。放送に価値があるのか?というと総務省から黙れと言われてしまうが、要はそれ(今回のような試み)が日本を変えるきっかけになる。アメリカではネットワークとか配信などとはすでに言わない。コンテンツディストリビューターと言う。世界に遅れないためにもこういう経験を重ねていく必要がある」

 ベルリンフィルの主席チェロ奏者でもある、ベルリン・フィル・メディアのオラフ・マニンガー氏は、世界の中で日本を選んだ理由として「音だけを提供することに対して、どういう受け止め方をするのか。音楽ファンがいて、技術にもつよい日本で検証したいという気持ちがあった」とコメントした。

 会見後の質疑応答で、収益面でのメリットを聞かれた鈴木氏は「すぐ商売になるようなプロジェクトは、あまり大きくならない」と前置き。「高品質の配信は我々の事業の柱になると20年前に想定したが、まだ事業にはなっていない(笑)。しかし新しい姿が予見できる」とユーモアを交えて回答した。同時に「(ストリーミング配信の取り組みは)20年続けてやっとここまで来れたという実感がある。日本には技術もその運用に対するノウハウもある。しかし、それを利用しよう、取り組もうとする政策がないのも日本である。電波事業法の話ではないが、今後コンテンツのクオリティーを求めていこうと思うと、従来の技術では限界があるとも感じる。その実験と普及のために一番いい場所ではないかと考えている」とした。

 今回の契約はベルリン・フィル・メディアに対するスポンサー契約と、配信基盤の提供となるが、これはベルリン・フィル・メディアに対する一方的な支援だけでなく、来るべき高品質な映像・音楽の配信が当たり前となる時代に向けたIIJの準備であり、実験であるということだろう。

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