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ベルリンフィルの演奏を、ドイツからロンドンを経由し、日本へ

世界初「DSD 11.2MHzライブ配信」の裏側、IIJが語る

2017年09月28日 06時00分更新

文● 小林 久 編集●ASCII

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 インターネットイニシアティブ(IIJ)は9月28日、DSD対応のストリーミング配信サービス「PrimeSeat」で先週実施した、ベルリンフィル・ハーモニー管弦楽団のDSDライブ配信について解説した。

試聴用にソニーのSS-AR1が用意された

 同社は先週、最新フォーマットDSD 11.2MHzによる、世界初のDSDライブ配信を実施した。同楽団の本拠地「PHILHARMONIE」で、9月16日(土)19:00(日本時間では9月17日2:00)に開演した演奏会を、専用開発した配信ソフトを使い、現地からリアルタイムかつ無料で日本のユーザーにストリーミング配信した。曲目はマレク・ヤノフスキ指揮のプフィッツナー『歌劇≪パレストリーナ≫より3つの前奏曲』、ブルックナー『交響曲第4番変ホ長調≪ロマンティック≫』。

 なおPrimeSeatは、6~7月にNHK交響楽団のコンサート音源をDSD11.2MHzで制作。DSD 11.2MHzによる世界初のオンデマンド配信も実施していた。

BROADCASTER。過去のDSD5.6MHz配信ではLimeLightというDSD専用のソフトを使っていたが、対応形式を増やした。外販などは未定だが、より広いユーザーが使える直感的なUIに改善している

 配信ソフトの「PrimeSeat BROADCASTER」は、コルグが開発したもので、DSDの信号はもちろん、44.1kHz/16bit~384kHz/24bitのPCM信号の配信にも対応する。

クリストフ・フランケ氏の作業風景

 ベルリンフィルは「デジタルコンサートホール」という映像付きの有料ライブ配信を実施している(PrimeSeatではそのマスターを利用した番組『ベルリンフィルアワー』も配信している)が、そこでは最大60本ものマイクが用いられる。しかし今回の配信では、客席1列目の上方にマイクを吊るし、ピンポイントで収録している。その調整は専属トーンマイスターのクリストフ・フランケ氏が担当した。10㎝の違いで大きな変化が出るほどシビアな調整だという。

天井からつるされたマイク

客席の1列目の上あたりにマイクが設置されているのが分かる

 現地の配信機材はシンプル。ホールに設置したマイクはゼンハイザー「MKH 8020」×2本、ここから得たアナログ信号をマイクプリアンプ(Merging Technologiesの「HAPI」)に通し、外付けのA/DコンバーターでDSD 11.2MHzのデジタル信号に変換。この信号をUSB接続したMacBookに取り込み、上述したBROADCASTERで配信した。

右のMacBookがPrimeSeatへの配信用、手前のWindowsノートにはPYRAMIXが接続されている

配信に使用した機器

 HAPIはA/Dコンバーターの機能も持ち、録音用にEthernetケーブル(Ravenna)で接続したWindowsノートとPYRAMIXにもデータを出力している。

配信中はPrimeSeatで問題なく再生されているかどうかを確認しながらの作業だった

 11.2MHzのDSDデータは、22.4Mbpsと膨大なビットレートになるため、ベルリンから一度、ロンドンにあるIIJの拠点(IIJ Europe Limited)に送った。そこで5.6MHzのDSD、96kHz/24bitのPCMのストリームを別途生成しつつ、IIJのCDNを使って日本のユーザーに配信した。ロンドンと日本の間には太いIIJバックボーンネットワークがあるため、長距離・高スループットの伝送が安定的に可能。配信サーバーのチューニングも合わせて実施したため、通常通信の倍近いスループットを得られたという。

長距離の安定した伝送をするため、ロンドンを経由

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