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嘘偽りのない音楽を──「G4・IV」発売記念インタビュー

GLAYでアニメMV HISASHIさんの本気

2016年02月25日 11時00分更新

文● 盛田 諒(Ryo Morita)

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 目をさまされた思いがした。いまわたしたちが生きているのは、音楽そのもの、生身の人間そのものと向き合うことのできる幸福な時代なんだ。

 GLAY通算53枚目のシングル「G4」シリーズ4作目「G4・IV」。1月27日に発売し、オリコン週間1位を記録した。「彼女はゾンビ」「Scoop」「Supernova Express 2016」「空が青空であるために」4曲入りで、全曲タイアップソング。アルバムのような構成でおもしろい。とくにぶっとんでいるのが1曲目、HISASHIさん作詞作曲の「彼女はゾンビ」だ。


 まずMVが美少女ゾンビアニメだ。金髪ツインテール、セーラー服を着てほほえむカラフルでポップな世界。曲はサイケロックというのか、拍子も曲調も独特でおもしろい。詞は最初こそ普通のラブソングなのに、途中から『サンゲリア』などゾンビ映画のタイトルを羅列しはじめたりする。

 ボーカルはもちろんTERUさん。わたしがさえない学生生活を送った1990年代、GLAYといえばポピュラーソング、リア充の象徴のような存在だった。そのGLAYからここまで「攻め」の曲が出てきたことは衝撃的だった。

 じつは、HISASHIさんがオタクであることはファンのあいだでは有名な話。しかしここまで思いきった作品をよく1曲目に持ってきてくれました。ここまでやるなら、オタク気質のアスキーがインタビューしてもいいですよね? そう気軽にオファーしたら、やはり気軽にオーケーが出た。

 なんだか友だちの家に遊びに行くような気分。当日もHISASHIさんは本当の友だちのように気持ちよく話してくれた。好きなアニメの話、パソコンの話、そしてこんなに攻めた音楽づくりが「今だからこそできること」であり、それは同時に「かつて感じていた音楽そのもの」だったということを。

 同じ時代を生きてきたあなたに、この感動が届いたらとてもうれしい。

初めて触れたのは「PC-8001mkII」

── 今日はオタクとして話を聞きますよ。まず子供時代の話からいきましょう。

うちの父親が内科医で、ガジェット好きもそのへんから来てたりします。

── お父さんPC好きだったんですか?

PCというかマイコン……「TK-80」※あたりからですか。

※TK-80:NEC製のマイコントレーニングキット。CPUはIntel 8080、マシン語をメモリに読み書きさせるシンプルなコンピュータ。アスキーもちょっと前「復活! TK-80」というWindowsシミュレーターをCD-ROMつき書籍として出していたんです

TK-80

── TK-80!

家族的には「なんでそんな計算もできないもの」って非難轟々だったんですけど。あと、自作スピーカーとかもやっていたりしてましたね。そのあと普通にマイコンブームがやってきて、全盛期にはあれこれ与えてもらいました。

── 初めて触れた1台は?

「PC-8001mkII」ですね。

── 鉄板ですね。

そこでBASICを学び、いろいろやってました。

── もしかしてゲームとか作ってました?

作ってましたねえ。『マイコンBASICマガジン』とか読みながら。1個上の兄の友だちとかパソコン好きが集まってて、アドベンチャーゲームとか作ってました。

── プログラムの投稿もしてたり……。

いやー、さすがにそこまではできなかったですけどね。

── パソコンと同時期に音楽にも触れていると思います。

(1980年代)当時はベストテン番組とかをやってたので、中でもロック色が強いミュージシャンに興味を持つようになりましたね。それと、北海道はメタル文化も強く、ちょっと湾曲した情報が流れていて。

── 湾曲した情報って……。

パンクもメタルもスラッシュも一緒に楽しもう、みたいな感じです。E・Z・O前身のFLATBACKERなんかも札幌を拠点に活動していて(日本のメタルバンド。E・Z・OはKISSジーン・シモンズのプロデュースでアメリカにも進出した)、ちょっと変わったジャンルが発生していた。そこにぼくらも影響を受けた。メタルもパンクも、分け隔てなく聞くような環境だったんです。

Image from Amazon.co.jp
EZO (紙ジャケット仕様)

── そこにもお兄さんのお友だちの影響が?

ありましたね。ぼくたちがビジュアル系を聴いていたころ、ニルヴァーナとか1990年代の音楽を率先して聴いていたりしたので。アニメに関しても影響を受けました。

── いきなりアニメ入ってきましたけど。

そうなんですよ。押井守監督の作品がすごく好きになって。

── 当時だと「劇場版パトレイバー」ですか?

そうです。「うる星やつら」とかもですね。まだインターネットの環境が整ってない時代にコンピューターウイルスを題材にした原作無視の映画をやってしまうというのが、見ていて意味はわからなかったけど、すごく魅力がありました。

── アニメは未来を予見させるかっこいいもの、という感覚が。

今でいえば人工知能とかに近いのかもしれないです。結果的に人間がだまされる、支配される。使うか、使われるか、みたいな。しかも押井監督のアニメって、メカも出なければ美女も出ない、おじさんが立ち食い屋でボヤいてるだけの話でしょ。それがなんて魅力があるんだろうと。一言ずつセリフを調べたりしてました。

── パソコンにアニメにメタルにパンク、なんでも吸収しますね。

クリエイティブなものが好きだったんですよね。モノをつくるということそのものが。その究極のものとして、音楽にたどりついたのが1988年でした。

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