日本マイクロソフトと関電システムソリューションズとの提携は、これまではマイクロソフトの製品やサービスを利用するユーザーであった企業が、自らのソリューションをMicrosoft Azure上に展開したり、日本マイクロソフトの製品を再販したりする販売パートナーへと転換する「パスタマ」の好例として捉えられている。そして、これこそが、クラウド時代のベストパートナーシップのひとつの形だと、日本マイクロソフトは捉えている。
両社が結んだ4つの協業によって、パートナーシップはどう進化するのか。日本マイクロソフトの平野拓也社長と、関電システムソリューションズの山元康裕社長の対談の後編をお送りする。
対談の前編にあたる「電力自由化、料金は関電とAzureで安くなる -関電システムSOL 山元康裕社長・日本MS 平野拓也社長対談」で触れたように、関電システムソリューションズは、オンプレミス用に開発した電力業界向けCISパッケージである「NISHIKI」を、Microsoft Azure上で稼働させ、これを新電力と呼ばれる新規参入事業者に販売していく。だが、両社の提携はこれだけに留まらない。関電システムソリューションズのデータセンターとMicrosoft Azureを、専用線・閉域網接続であるExpressRouteによって結ぶことも発表した。
山元康裕社長(以下、山元) 今回の日本マイクロソフトとの提携の中で、もうひとつ、重要な取り組みが「ExpressRoute」です。2015年12月から、ExpressRouteを開通させ、当社のデータセンターとMicrosoft Azureとを専用線・閉域網で接続することで、セキュアで、高速接続が可能な環境を実現できました。これは、西日本のデータセンター事業者として初めての接続となり、大きな差別化になります。
平野拓也社長(以下、平野) 昨今、セキュリティに関心が高まっています。マルウェアの脅威や、サイバーアタックなどが注目を集めているように、クラウドサービスを活用するユーザーにとっても、セキュリティは重要な課題となっています。
この点に関しては、関電システムソリューションズにおいても、日本マイクロソフトにおいても、最優先課題として取り組み、各種認証を受けたり、最新の技術を導入したりといったことで対応を図っています。
さらに、今回の関電システムソリューションズとの協業では、ふたつのクラウドサービスを接続する際に、ExpressRouteによる閉域網接続により、セキュアな環境の実現に対しても、万全の体制を整えることになります。ビジネス要件に応じた様々なセキュリティレベルが求められる中、パブリッククラウドサービスをセキュアな環境で運用できることは重要な要件のひとつです。ExpressRouteによる協業は、日本マイクロソフトが推進する「信頼できるクラウド」を加速させるものともいえ、お客様が安心して活用していただける環境が整うといえます。
そして、4つめの協業内容が、日本マイクロソフトがクラウド上で提供するOffice 365、Dynamics CRM Onlineを、関電システムソリューションズが取り扱いを開始するというものだ。関電システムソリューションズが、CSP(クラウド・ソリューション・パロバイダー)プログラムに参加。販売パートナーとして、マイクロソフト製品を販売することになる。関電システムソリューションズでは、現在、30%の外販比率を、50%にまで引き上げる考えで、今後5年間で6億円のビジネス規模にまで成長させる考えだ。
平野 今回の協業では、NISHIKIとAzureとの組み合わせ提案に加えて、日本マイクロソフトが持つクラウドサービスも同時に販売していただくことになった点が見逃せません。ITシステムの調達は、オンプレミスからクラウドへと移行する流れは明確です。
そうした中で、当社がクラウドサービスとして提供しているOffice 365およびDynamics CRM Onlineと、NISHIKIとを組み合わせた提案は、ユーザーの利便性や価値を高めるとともに、関電システムソリューションズにとっても大きなビジネスチャンスにつながると考えています。
電力自由化にあわせて「NISHIKI」を採用した企業に、Office 365やDynamicsを含めたトータルソリューションとして提供する最高のパートナーになっていただきたいと思います。オンプレミスと既存データセンターサービス、マイクロソフトのクラウドサービス、さらには他社のクラウドサービスまでを、マルチクラウドによる統一プラットフォーム環境において提供することで、お客様は要件にあわせて最適なものをワンストップで導入できます。
日本マイクロソフトからの期待は、クラウドという最先端の技術と拡張性のある技術を活用し、そこに関電システムソリューションズが築き上げてきた実績と、信頼を組み合わせた新たな提案が行なえる点です。関電システムソリューションズが持つ既存資産と競合するのではなく、関電システムソリューションズのビジネスに必要なサービスを即時に低コストで提供し、ビジネスを補完する体制を構築します。
そして、電力業界だけに留まらず、汎用性のあるソリューションを活用することで、幅広い業界に対して、ストック型ビジネスを展開できると考えています。このビジネスを一緒にやらせてもらえることは、大変楽しみです。その中で、ビジネスを一緒に拡張したい。このビジネスの成長を楽しみにしています。
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