2015年12月3日、KDDIは“au発表会 for ママ”を開催し、京セラ製の『DIGNO rafre』を発表しました。
今年のKDDIは冬モデルの発表会を開催しなかっただけに、“ママ向け”という異色の切り口に注目が集まりました。今回はこの発表会を振り返ってみましょう。
冬モデル発表会の代わりに“ママ向け”発表会を開催
2015年、KDDIは毎年のように開催してきた冬モデルの発表会をなぜか見送っています。同社広報によれば「すでにiPhoneとXperiaの新モデルを出しており、他社に見劣りしていない」とはいうものの、手堅く端末ラインアップを揃えてきたドコモや、ファーウェイやレノボなどAndroid端末を充実させたソフトバンクに対して、いかにも寂しい印象がありました。
これに対してKDDIがぶつけてきたのが、子育てをする母親を想定した“世界初、ハンドソープで洗える”という京セラ製のスマホです。
これまでKDDIは“シニア向け”や“ジュニア向け”といったスマホを販売しています。確かに、キャリアモデルのハイエンドスマホは、シニアが使うには文字が小さすぎたり、ジュニアが持つには高価すぎたりという問題がありました。
これに対して“ママ向け”というジャンルは、新しい視点です。筆者の理解では、ママは“ママ友”とコミュニケーションを取るために、他のママが使っているのと同じスマホを持ちたいはずです。多くの場合、それはiPhoneになるでしょう。
そのため、さすがに“ハンドソープで洗えるからママ向け”という売り方には無理があるのではないかとも感じていました。しかし蓋を開けてみると、“泡だらけになったスマホ”というインパクトのある絵とともに、一般メディアには大きく取り上げられたようです。
レイトマジョリティへの訴求ポイントは“わかりやすさ”
KDDIは新製品の発表に先立って、スマートフォン市場に関するグラフを提示しています。これによれば、スマホの普及率は56%を超え、“アーリーマジョリティ”層から“レイトマジョリティ”層へ突入したとしています。
このレイトマジョリティという層は、新しい製品に対して懐疑的な見方を持っており、他のみんなが使っているのを見て、ようやく手に取る人々とされています。その多くはガラケーに満足していると考えられます。こうした人々にどうやってスマホを売り込んでいくかは、各キャリアにとっても大きな課題になっているようです。
そういう視点で見ると、“ハンドソープで洗える”というのはおもしろい特徴です。たしかにこれまでも防水のスマホであれば、水洗いすることはできました。しかしハンドソープで洗えることは、一目見ただけで誰もが関心を持つ優れた特徴といえます。
実際のところ、スマホが汚れているというのは間違いないようです。PCのキーボードと同様、スマホにも雑菌が繁殖しており、トイレより汚いとする調査もあるほどです。きれい好きな人であれば、ウェットティッシュで拭くなどして清潔に保っていると思われるものの、ハンドソープで丸洗いできるに越したことはありません。
これまでスマホのターゲット層といえば、性別や年齢ごとにさまざまなユーザー層が想定されてきたものの、基本は“アクティブで情報に敏感な人たち”という前提がありました。しかしここから先は、スマホに関心のない人たちにも手に取ってもらわなければなりません。今後は、訴求ポイントを徹底的に絞り込んだ、“わかりやすい”製品が増えていくのではないでしょうか。
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