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コンピューターシミュレーションにおけるSNSの健全な成長

罪のない嘘はコミュニティ全体の利益になる(ちょっとしたものなら)

2015年12月09日 11時50分更新

文● 行正和義 編集/ASCII.jp

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コミュニティのリンク。白と黒は「正直者」、ライトブルーとダークグリーンが「嘘つき」、青と赤はどっちつかず

 フィンランドのアールト大学は12月2日、罪のない嘘(white lies)はコミュニティにとって利益になるという研究結果を発表した。

 これはアールト大学(旧ヘルシンキ工科大学など)のコンピューターサイエンス学部が発表した研究で、SNSなどのコミュニティの相互関係をランダムネットワークでシミュレーションしたもの。相互に情報を伝え合うエージェントは、それぞれ特定の意見を持ち、意見が合えばエージェント同士のリンクが確立するが、意見の相違が大きすぎればリンクが切れてしまう。

 100人分のエージェントで構成されたシミュレーションを600回実行したところ、リンクを維持するため自分の本来の意見とは異なる発言をする「白い嘘(white lies:罪のない嘘)」つきエージェントを許容したほうがコミュニティはよりよくリンクを維持することがわかった。嘘を一切許さない条件でのシミュレーションでは、コミュニティは複数の小さなネットワークに分割されてしまう。

 「嘘つき」と表現するのはやや問題があるが、繋がりを維持するために相手に合わせた発言を行なうのは、例えば「友人のFacebookの更新に対していいねする」のように、単に相手を喜ばせるためだけに行なわれるという。これらの「嘘つき」エージェントが異なるグループの橋渡しとなり、新しいリンクの確立だけでなく古いリンクの維持にも役立つことになる。

 シミュレーションと実際のSNSとは異なるだろうが、主義主張や嗜好を同じくするグループ(Twitterであればクラスタ)で固まりやすいのも事実で、若干意見の異なっていても許容したほうが健全なコミュニティとなるのは確かだろう。研究者たちは、シミュレーションから得られた知見は、グループにおける意思決定システムなどに適用できるとしている。

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