このページの本文へ

「PwCサイバーサービス合同会社」11月から業務開始

コンサルだけじゃないPwCへ、セキュリティ新会社設立

2015年11月10日 06時00分更新

文● 大河原克行

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 プライスウォーターハウスクーパース(以下、PwC)は、レジリエントセキュリティの実現を目的とした「PwCサイバーサービス合同会社」を設立。11月から業務を開始した。

 これまで同社内に設置していた「スレットリサーチラボ」を前身に、別会社化したもので、PwC パートナーの星澤裕二氏は、「サイバーセキュリティを経営リスクとして認識する動きが加速する一方、早急な復旧を実現するレジリエントセキュリティが重要性を増している。新会社は、その実現に向けたサービスを提供する会社になる」とし、「これまで提供してきた、平常時におけるコンサルティングに留まらず、コンサルティングファームには実現できなかった被害発生時、あるいは被害対応後までサービスを、ワンストップで提供することができるようになる」とする。

PwC パートナーの星澤裕二氏

PwCの総合力による強固なセキュリティ対策の実現

 代表執行役には、PwCの鹿島章代表取締役が兼務で就任。最高執行責任者には、サイバーセキュリティ研究をリードしてきた星澤裕二氏が、最高技術顧問には、CSIRT構築やサイバー演習支援などで実績を持つ名和利男氏がそれぞれ就任した。資本金は1000万円。

PwC 代表取締役の鹿島章氏

 PwCサイバーサービス合同会社では、予防や検知などに活用できる「脅威・脆弱性情報提供サービス」、サイバー攻撃などのインシデント発生時に早期復旧を支援する「インシデントレスポンスアドバイザリサービス」、PCなどのエンドポイントを監視し、マルウェアの感染状況や侵入経路の把握と駆除を行う「リアルタイムインシデントレスポンスサービス」を提供。さらに、将来的には、個別オプションサービスとして、標的型攻撃診断、マルウェア感染診断、脆弱性診断、マルウェア解析、インシデントレスポンス、情報漏洩検索も提供する予定だ。

レジりエントセキュリティ実現のために提供するサービス

 「新会社では、コンサルティング会社というイメージを払拭し、サイバーセキュリティの専門会社というポジションを明確に打ち出す。テクノロジーに寄ったサービス展開を行うことになる。専門性、事業の明確化とともに、顧客ニーズへの柔軟な対応が可能になる」(星澤氏)としている。

 脅威・脆弱性情報提供サービスでは、同社独自の日本における情報収集の仕組みと、米国や英国などのPwCのグローバルネットワークを活用して収集した情報も提供。情報の内容に関して問い合わせが可能な有償オプションも用意する。

 インシデントレスポンスアドバイザリサービスでは、インシデント発生時に必要なアプローチや、技術的妥当性などに関して、セキュリティ担当者を支援。有償オプションとして年次ログ診断やスキルアップトレーニングも提供する。

 また、リアルタイムインシデントレスポンスサービスでは、従来のネットワーク監視では把握できなかった潜在的な脅威の把握や、網羅的な対応により、迅速な対処を実現できるという。ここでは、すでに協業を発表しているタニウムのインシデントレスポンスサービスも活用することになる。

 PwCサイバーサービス合同会社の最高技術顧問に就任した名和利男氏は、「経営層がサイバーセキュリティに関心を持ち始めており、最近では、現場よりも経営層の定例会議に呼ばれることが増えてきた。今後は、企業においてサイバーセキュリティ対策が無視できない状態になってくるだろう。だが、現場と経営層の間には意識のギャップがある。サイバーセキュリティを取り巻く環境が変化するなか、短期、中期、長期に渡って、的確な投資を行ってもらいたい。そのために経営者と直接話を行い、国と企業のセキュリティレベルを高めたい」としたほか、「著名な企業やメディアがDDoS攻撃を受けるといったことが起こっている。オリンピック組織委員会も攻撃を受けた。攻撃者は、次の攻撃はどこかといったリストを公開しているが、なかには模倣した情報もあり、そのなかから正確な情報を取り出すノウハウも必要。また、攻撃の主因はなにか、攻撃ツールはなにかといった情報も正確に捉える必要がある。新会社では、こうした情報も提供していくことになる」とした。

PwCサイバーサービス合同会社の最高技術顧問に就任した名和利男氏

 PwCサイバーサービス合同会社では、今後3年間で、50人体制にまで拡大。年間売上高10億円を目指す。

 PwCの鹿島章代表取締役は、「PwCの調査によると、8割の企業経営者が、サイバーセキュリティに戦略的に取り組む必要があると回答している。また、サイバーリスクが、今後のイノベーションにおける障害になるといった認識も広がっている。自動運転の広がりやIoTの活用などといった観点からも、サイバーセキュリティは重要な要素になる」などと述べた。

カテゴリートップへ

  • 角川アスキー総合研究所
  • アスキーカード