このページの本文へ

前へ 1 2 次へ

松村太郎の「西海岸から見る"it"トレンド」 第78回

カリフォルニアの地震とスモッグとエルニーニョ

2015年08月19日 10時00分更新

文● 松村太郎(@taromatsumura) 編集● ASCII.jp

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

エルニーニョについても、大きな影響が予測される

 最後は、エルニーニョについてです。先週、米国海洋大気局(NOAA)が、エルニーニョ現象について、「深刻で、さらに強さを増している」と発表しました。

 エルニーニョ現象は筆者にとって、割と小学生の頃から耳覚えのある言葉でした。外国語を知らなかった当時、そのユニークな名前が記憶に残っていたのでしょう。覚えやすかったこととは裏腹に、その現象は複雑です。

 エルニーニョとはスペイン語で「神の子」を意味し、毎年12月頃、クリスマスに太平洋の東側、ガラパゴス諸島やペルー沖の海水温が上昇することから名付けられたそうです。つまり、もともとは毎年起きていたことでした。

 問題になるのは、この海水温上昇の規模が大きく長引くことにあり、これによって海流や大気の流れに影響を及ぼし、結果的に日本を含む世界的な気候変動をもたらします。このあたりは、少しかじった気象予報士試験のテキストにも出てきました。

 過去最大のエルニーニョ現象は1997年から1998年といわれており、2015年のシーズンは当時の再来もしくはそれ以上になることが指摘されています。

 たとえば海水温上昇の現場となる中南米では漁業に直接的な影響を与えるほか、コーヒーやバナナなどの農作物の生産にも影響が出ます。その他の影響は毎年一定せず、例えば日本であれば冷夏暖冬が基本と言われるが、必ずしもその通りになるわけではないそうです。

 一方、カリフォルニア州で過去最大級のエルニーニョに期待が寄せられているのは、大量の降水です。

 1997年の過去最大のエルニーニョの際には、南カリフォルニアなどを中心に、洪水に苦しむほどの雨量に見舞われました。しかしいまは渇水に苦しんでいる時期。もちろん洪水の危険はさらに高いとみられていますが、雨が降ることは願ってもない恵みになるかも知れません。

予測はできるが、確実ではない
身構えていても、防ぐことはできない

 筆者はこうした分野の専門家ではありませんが、不確実なことについて学ぶのが好きです。天気についても、「明日は明日の風が吹く」といっていた時代から、モバイル技術の助けも借りて、10分後の空模様であればわかる時代になりました。

 しかし細かい小さな現象は、数百kmサイズの現象が大きなトレンドを決めていて、さらに遠く5000km離れた場所の海水温の影響を受けています。そこまで来ると、予測できるのは「ある程度」であり、毎回確実に同じパターンを辿るとも言い切れない世界です。

 もちろん、地震にしても火山噴火にしても、大雨による洪水にしても、前もって起きることを察知し、備えておくことで被害や損害を抑えることができます。しかし非難をするなどして日常と異なる行動を送らなければならない点で、影響をゼロにはできませんし、自分は非難して無事でも、その他の資産まで無傷かどうかの保証はありません。

 究極的には、自分よりも大きな事象に対して、影響を免れることはできません。それも自然の生業で、自分もその一部だ。エルニーニョについて深く知れば知るほど、そういう感覚になっていくことにも気づかされるのです。ただ、それが受け入れられるかと言われると、また話は違ってきます。

 今年の冬に影響とみられる事象が起きれば、安全に気を配りながらレポートします。


筆者紹介――松村太郎

 1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。米国カリフォルニア州バークレーに拠点を移し、モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。

公式ブログ TAROSITE.NET
Twitterアカウント @taromatsumura

前へ 1 2 次へ

カテゴリートップへ

この連載の記事

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン