OSの中核となるWindows Coreと
Windows 10で共通のAPIであるUWP
Windows 10では、すべてのハードウェアプラットフォーム用に共通のオペレーティングシステムの中核となる「Windows Core」とアプリケーション実行環境となる「Universal Windows Platform」を搭載し、共通のAPIセット、共通の実行形式/パッケージ形式、共通のストアを実現した。
Windows Coreは、カーネルやデバイスドライバやその機構などを含むOSの中核となる部分だ。機能的には同一だが、Windows 10が動作するハードウェアプラットフォームには、ARM/x86/x64と複数のCPUアーキテクチャが採用されているため、同一のバイナリにはならない。このため、Windows 10は複数の「エディション/SKU」に作り分けられる。OSとしては同じだが、バイナリ形式が違うために違うエディションとして区別される。
Windows 10は、CPUのアーキテクチャなどから、エディションをグループ化できる。それは「Windows 10 Desktop」、「同Mobile」、「同IoT」とハードウェア専用版のWidnows 10(Xbox One用、Surface Hub用、HoloLens用などが予定されている)だ。
UWPは、この上に乗る共通のAPIだ。また、実行ファイル形式やパッケージファイル形式、アプリコンテナーと呼ばれる実行機構を持つ。また、UWPのアプリケーション(UWPアプリ)は、Widowsストアからのみ入手、インストールができる。
UWPは、Windows 8のWindows RT(Windows RunTime)を発展させたものだ。まず、ハードウェアプラットフォーム固有の機能を利用するAPIなどは「Extention」として管理される。共通部分と、ハードウェアプラットフォーム固有部分はきちんと分離されている。
Windows 10のアプリモデルは、下の図のようになっている。この図で左側の青い部分は、デスクトップアプリ(マイクロソフトはクラッシックWindowsアプリと呼ぶ)のアプリモデル、中央から右側がUWPのアプリモデルだ。Windows 8のときのアプリモデルと若干表現方法が違うが、ほぼ同じものだ。
これまでとの一番の違いは、解像度に依存しないアプリを作ることができる「アダプティブUX」を採用していることだろう。ただし、アダプティブUXでは、XAMLベースのGUI部品(コントロール)を使っており、基本的な部分では、Windows 8のモダンUI環境と変わらない。アダプティブUXは、解像度に依存しないアプリを開発しやすくしている。これには、自動スケーリングと自動レイアウトなどの機能を使う。
機構自体は、どちらもWindows 8.1からあるものだが、スマートフォンから大画面の壁面ディスプレイにまで、デスクトップモード時には、ウィンドウ表示することも考慮されている。
UWPは、モダンUI環境を発展させたものではあるが、アプリケーションのプラットフォームとしては新規であり、「エコシステム」の構築は、Windows 10の出荷以後になる。7月の出荷時点では、サードパーティアプリもいくつか登場すると思われるが、あとは、マイクロソフトWindows 10用に作ったアプリしかない。第46回で紹介したように(関連記事)、UWPブリッジによりアプリを見かけ上増やすことは可能だが、UWPアプリが充実するまでは、順調だとしてもかなり時間がかかると考えられる。
開発者がUWPに対応してくれるようになるには、まずプラットフォームとしての優位性を示す必要があり、そのためには、「インストールベース」を増やさねばならない。マイクロソフトが既存のWindows 7/8からの無償アップグレードを用意するのはこのためだ。
現在のマイクロソフトにとって、多数のマシンをWindows 10にすることがまず優先されており、従来のようにパッケージを売って、ユーザーにインストールさせる、プリインストールマシンが売れるまで待つという時間的な余裕はなさそうだ。だからこそ、これまでのWindowsのように完成となるRTMから出荷となるGAまでに時間を置くことをせず、メーカーの製品出荷を待たずにRTM直後にアップグレードを開始したわけだ。
※:一部の図はマイクロソフトの「Developer's guide for Windows 10, The Universal Windows Platform」より引用。

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