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消防士からオフィススムージーまでローリングストーンな半生を追う

七転び八起きの起業人生!Socket安藤さんがFlipdeskに至るまで

2015年08月17日 07時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp 写真●曽根田元

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本当に“Socket”を売るつもりだった

 とはいえ、Socketの黎明期は「かなり遊んでいる」(安藤さん)感じで、さまざまな事業に手を染めた。

 最初にやろうとしたのは、デザイン照明の販売。「なんかデザイン照明を売るって、もてそうな気がしたんで(笑)」(安藤さん)ということで、本当にデザイン照明を売るために作った会社がSocketだったわけだ。しかし、事業計画を書いて、仕入れを始めようとしたところ、仕入れ値が高く、値引きが効かない買い取りビジネスということで、1ヶ月で事業を断念することになる。

 次にチャレンジしたのが、Webライティングのクラウドソーシング。「紙の仕事がなくなり、編プロやライターからWebの仕事の相談を持ちかけられることが多くなった。なので、社内で編集機能を持ったWebライティング特化のクラウドソーシングをスタートしてみた」とのことで、始めたところ、約3ヶ月で黒字化。ただ本来はEC・Webマーケティングという事業ドメインから外れるということで、こちらも事業を売却している。

 さらにオフィスへのスムージー宅配事業まで手がけている。「長らくベンチャーで働いていると、みんなオフィスグリコでお菓子を食べながら、レッドブルを飲んでいる。 30歳近くになると、健康を害し始めるんです(笑)。だから、本当の野菜をとれるスムージーがあったら、飲むだろうなと思って始めた」とのことで、三重県のかき氷機メーカーとミキシングマシンを共同開発。冷蔵庫とミキシングマシンをオフィスに設置し、密封されたカット野菜を配送するというビジネスを展開した。

40社の顧客まで獲得したオフィススムージー

 このオフィススムージー事業は40社くらいの顧客は得たものの、物流網の効率性と生鮮食品のリードタイムの課題にぶちあたり、こちらは撤退。安藤さんは「結局、オフィスって仕事しに来ているので、コンビニに買いに行ってしまうので、思いのほか売れなかった。ヤクルトの配送網を作るような話なので、これはスタートアップができるものじゃないなと思った」と振り返る。

スマホ販促ツール「Flipdesk」はなぜ生まれたか?

 そして、Socketが現在手がけているビジネスは、スマホ向けの販促プラットフォーム「Flipdesk」になる。「コマースサイトでリアル店舗のような接客ができるサービス」を謳うFlipdeskではサイトに数行のコードを埋め込むだけで、サイト訪問者の行動を取得。訪問者の行動を分類することによって、自動でクーポンを発行したり、パーソナライズドしたメッセージを配信したり、チャットで直接接客することができる。

とにかくシンプルさを追求したFlipdeskの管理画面

 Flipdeskが生まれた背景は、スマホのアクセス頻度が高まっているのに、スマホの購買比率が上がってないという点。「スマホのアクセス率が6割なのに、購買比率は4割しかないという調査もある」(安藤さん)という課題を解決すべく、まずはユーザー動向の分析からスタートした。

 たとえば、スマホユーザーの検索スキルの問題。「スマホでネットに入ってきた人は検索に慣れていない。スペース区切りでキーワード検索するスキルを持たない人も多い」と安藤さんは分析する。また、画面が小さいので、タブをいくつも開いて、ブログや比較サイトを見ながら購入するというのも難しい。提供する事業者側でも、大手コマース事業者のような先進的な機能を容易に実装できないという課題がある。「既存のECサイトは『客待ち』というところが多い。これではサイト内検索やレコメンデーションの精度が高いAmazonに勝てるわけがない」と安藤さんは指摘する。

 こうしたスマホユーザーの消費行動などを見ながら、最適な商品を直接画面に出してあげるのがFlipdeskの基本的な役割。既存のメルマガ等で実現できなかった施策を店舗側が考え、シナリオに沿って、スピーディに販促に活かしていく。「ブルーのシャツを買った人にコーディネートを出すようにするとか、お店の現場に立っている人の活用は本当にすごいです」と安藤さんは語る。

 2014年9月の正式リリース以来、総合コマース業者やアパレル系、人材派遣会社など導入は240社を超え、ROI 4000%を達成するサイトも多数現れているという。「ほしい商品が決まっている場合はAmazonがよいのでしょうが、個人の趣味趣向が出るアパレルや化粧品などは、僕らが作っているターゲティング販促ははまります。コスト面でも自前で作るより安いですし、運用体制を自社で抱えているのも強い」と安藤さんは語る。

10年間プラマイゼロ(笑) でもベンチャーの基本は抑えてきた

 成功したものだけではなく、失敗したものまで含め、10年を飄々と語ってくれた安藤さん。自身の血肉になるもの、ならないものを含め、どれも楽しそうというのが記者の印象。実際、「楽しかった」というコメントがいくつも飛び出してきた。

「僕は市場や技術の動向を見て、メンバーと資本を集めて企業を立ち上げるといったベンチャーとはちょっと違って、流れに任せてベンチャー経営者になった種類に分類されると思う。人との関わりの中で起業もいいなあと思って事業を始めて、10年やっていて、まあプラマイゼロだなと(笑)。ただ、マーケットをかぎ分ける鼻は持ってるし、きっちり仲間を集めるというベンチャーの基本は培ってきたかなとは思います」(安藤さん)。

ようやくたどり着いたFlipdeskのビジネスをいっしょに手がけるSocketの仲間たちとともに!

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