四方を海に囲まれた島国、日本。国際的なインターネットトラフィックの9割以上は、その海中を通る海底通信ケーブルが支えている。最近ではビデオ配信やクラウドの普及、ビジネスのグローバル化などの動きに伴って、その役割はますます重要なものになっている。
8月6日、NTTワールドエンジニアリングマリン(NTT WEM)のケーブル敷設船「すばる」号が横浜港に寄港した。今回その内部を見学することができたので、あまり知られていない海底ケーブル敷設船の世界を写真とともに紹介しよう。
世界の海を股にかける、海底ケーブル敷設という仕事
NTT WEMは、海底ケーブルの敷設にかかわるあらゆるサービスを提供する会社だ。親会社であるNTTコミュニケ-ションズ(NTT Com)やその他の通信キャリアからの委託を受けて、国内/海外を問わず海底ケーブル敷設のための調査や設計、敷設工事、保守作業を手がけている。
海底ケーブルは、起伏のある海底の地形に沿って敷設される。水深1500メートル程度までの海底では、底引き網や大型船のアンカー(いかり)などでケーブルが切断されてしまわないよう、海底を数メートル掘り起こして埋設される。そうした作業を専門に行うのが海底ケーブル敷設船だ。
今回見学したすばる号は、1999年に建造された日本船籍のケーブル敷設船である。国内離島への光ファイバーケーブル敷設工事を始め、日本とアジア、あるいはアジア各国間でのケーブル敷設を中心に活躍してきた。はるか大西洋まで赴いたこともあるという。全長は124メートル、総トン数9557トンで最大80名が乗船できる。
航海ごとに作業内容が異なるので一概には言えないが、定員一杯の80名が乗船するケースが多い。船長を筆頭に、船を運航するスタッフ、ケーブル敷設作業にかかわるスタッフ、船上生活を支えるスタッフなど、乗組員の役割はさまざまだ。敷設を委託した顧客企業の社員が乗船し、NTT WEMと共に作業内容の確認を行う場合もある。
通常、国内の業務ならば1~2週間程度、海外ならば4~6週間程度の航海になるという。長い航海の間、乗組員のストレスを解消するため、スポーツジムやサウナ付きの浴場、娯楽室などを備えている。また、毎日の食事が単調なものにならないよう、食材の制約がある中で豊富なメニューを提供できることもすばる号の自慢だそうだ。
(→次ページ、スケールの大きな世界だが、作業は実に繊細なのだった)