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情報の取り扱い説明書 2015年版 第7回

ネットの流儀が現実に逆流し、人やサービスに影響を与えている

ビジネスにもなってる再注目の「ポスト・インターネット」ってなに?

2015年08月11日 10時00分更新

文● 高橋幸治、編集●ASCII.jp

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現実空間でインターネット的な体験ができる「越後妻有民俗泊物館」

 美術家の深澤 孝史氏が現在「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2015」に出品している「越後妻有民俗泊物館」も非常にインターネット的な作品だ。

 これは同芸術際が開催されている越後妻有(新潟県)の指定された民家に応募した一般の人々が「みんぱく研究員」として宿泊させてもらえるもの。その間、土地や家に伝わるさまざまな民俗的資料を調査/取集するのだ。

 その成果は十日町市の中心市街地に設置された博物館ならぬ「泊物館」にアーカイブされていくという仕組みである。

現在開催中の「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2015」(7月26日~9月13日まで)に出品されている美術家・深澤 孝史氏による越後妻有民俗泊物館のウェブサイト。参加希望者は「民泊受け入れ日」を参照のこと

 ここには地域の内と外、内と内、外と外を結ぶつながりがネットワークとして形成され、互いの知識や知恵、知見の交換がごく自然に発生し、有形無形の知財が創造/蓄積されていくという、インターネットの文化的な側面における理想形がある。

 深澤氏が2011年から日本各地で展開してきた「とくいの銀行」というプロジェクトも、特定の地域に住む人々が自分の「とくい」を預けると、その「とくい」を必要としている誰かがそれを引き出し、住民たちの間に思いがけないネットワークが現出するという作品である。

昨年の「札幌国際芸術祭」において「札幌市開拓資料館」で開業(?)した「とくいの銀行」に預けられた「つくい」の台帳(筆者撮影)。とくいの内容は決して大仰なものではなく、ほんのささいなものでもなんでもよい

話題の「AirBnB」もポスト・インターネットなサービス

 「シェアリング・エコノミー」の成功事例としてよく話題にのぼる世界規模の空き部屋シェアサイト「AirBnB」などもポスト・インターネット的だ。

 インターネットというインフラが持つマッチング機能の効率性/利便性もさることながら、宿泊の最中およびその後にも継続していくであろう、見ず知らずの人達とのリアルなインターネット的つながりが、人気を博している本質の部分なのだろう。

 そこでは部屋の提供者にとっても部屋の利用者にとっても、「インターネットを活用している」という自覚はもはや後景に退いているように思われる。

2008年に設立されたAirBnB社によるワールドワイドな空き部屋シェアサービス「AirBnB」。190ヵ国3万4000以上の都市からの登録があり、日本法人も立ち上がっている。インターネットならではなのマッチングシステムだが、真にインターネット的なものは現地におけるその体験にこそあるのだろう

(次ページでは、「ポスト・インターネットは良い面ばかりではない」)

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