厳しい目標のプレッシャーから逃げるための不適切な方法
東芝社内では、パソコン事業において、高い利益目標を掲げており、その達成のために、パソコン事業を担当した歴代のカンパニー社長が、この仕組みを使って、みせかけの利益の嵩上げを行い、それによって業績を高めていたことが指摘されている。
ここには、経営トップからの強いプレッシャーがあり、月例の社長への報告会では、「事業を持つべきかどうかというレベルになっている。目標値をやらなければ売却になる」、「残り3日間で120億円の利益改善を求める」といったような厳しいプレッシャーが与えられ、これらを達成するために、「Buy-Sell取引」の仕組みを利用するといったことが繰り返し行われていたのだ。
厳しい目標値については、「チャレンジ」という言葉が使われ、屋台骨のひとつであったパソコン事業では、厳しいチャレンジ目標とそれに対する強いプレッシャーがかかっていたと第三者委員会では認定。それが不適切会計処理の温床になっているとする。
また、このとき、田中前社長は、調達部門のリーダーとして、パソコン事業に携わっていた経緯がある。第三者委員会では、田中前社長については、「Buy-Sell取引により、見かけ上の利益が嵩上げされていることを認識しつつ、長年に渡って、それを是正しなかったことが認められる」と指摘した。
田中社長は会見のなかで、「不適切な会計処理をしていたという認識はしていなかった。今後、第三者委員会の報告書を精査し、認識が間違っているのであれば改めたい」と発言。また、「目標を掲げるということは決して悪いことではない。問題は、それが実現可能なレベルなのか、実現が不可能なレベルなのかという点。そのレベルについても、受け手の解釈、認識に差があるのは事実。私自身はチャレンジという言葉は使ったことはない。私は、必達目標値という言葉を使っていた。少なくとも社長に就任した2013年以降、過大な要求をした覚えはない。努力すればできるレベルである」などと語った。
いずれにしろ、歴代経営トップと、カンパニー社長が、こうした不適切な会計処理に関していたことは、パソコン事業の例をとっただけでも明らか。このほかにも、工事進行基準案件、映像事業および半導体事業に関しても不適切な会計処理が認められている。
第三者委員会で委員長を務めた上田廣一氏(元東京高等検察庁検事長)は、「担当者が会計知識を間違えていたり、先送りすることが違法だとは思っていないといったケースもあった」と前置きしながらも、「日本を代表する企業が、こうした不適切な会計を組織的にやっていたことに衝撃を受けた」と語る。
東芝は、企業風土から変革をしていく必要があるのは明らかだ。これからどんな形で、風土が変わっていくのか。これを一掃しなくては、不適切会計処理の温床は依然残ることになる。
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