今年も日経BP社と共同で「企業のインターネット広告・モバイル広告利用動向調査」を実施しました。上場企業・有力企業の方々に、デジタル広告の活用状況などについてお答えいただいています。詳しくはプレスリリースをご覧ください。
今回は本調査から、デジタル広告の活用度が高いBtoC企業※に絞ってトピックスをご紹介していきます。
※広告宣伝費を一般消費者対象の商品・サービスにより多く配分している企業(BtoC,BtoB商品に同じ配分をしている企業も含む)
スマートフォンサイト開設率はなぜ伸びた?
本調査では、企業のデバイス別のサイトやアプリの対応状況、広告出稿状況を時系列で追っています。今回の調査結果からは、企業のスマートフォン対応が急速に進む様子が見てとれました。
特に顕著なのは、BtoC企業のスマートフォンサイト開設率の上昇です。2013年度44.5%から2014年度には67.7%と23ポイント上昇しました。この背景には何があるのでしょうか?
もっとも大きな要因として、スマートフォンユーザー数の拡大、自社サイトへのスマートフォン経由の来訪者数などのトラフィックの拡大があると思われます。
自社サイトのPV(ページビュー)におけるスマートフォン経由の比率は平均値で前年28.5%から34.1%へ上昇。「3割以上がスマートフォンから」という企業が過半数となりました。「50%以上がスマートフォンから」という企業も6.5%から14.9%へ2倍以上となっています。
このデータは「スマートフォン経由のトラフィックの拡大によって、本格的にスマートフォン対応をせざるを得ない状況となった」ということを示していると考えられるのではないでしょうか。
また、Google社の「モバイルフレンドリーアップデート」への対応という側面もあるかもしれません。
Google ウェブマスター向け公式ブログ
モバイル版の検索結果におけるモバイル フレンドリー ページ(スマートフォンで見やすく使いやすいページ)の掲載順位を全世界で引き上げるとお知らせしました(逆に、大きい画面のみを対象にデザインされたページは、モバイル版の検索結果で掲載順位が大きく下がる可能性があります)。
4月21日のモバイル フレンドリー アップデートについてのよくある質問
2015年4月の実施に向けて、何らかの対応を図った企業もあったと考えられます。
スマートフォンアプリを提供する企業も増加
一方で、スマートフォンアプリの提供率についても、一旦停滞傾向にあったものの改めて上昇しています。データの詳細を見ますと、企業規模(売上高や従業員数)が比較的大きな企業、業種では金融、不動産、流通・小売業などで上昇傾向にあるようです。
実際に2014年度にアプリ提供を開始した企業を調べたところ、銀行やカード会社、中堅小売チェーン、地方スーパーなどが多くあがってきました。アプリ提供開始を報じる企業のプレスリリースでは、以下の様な事柄やワードを多く目にしました。
- スマートフォン普及率の高まり
- 自社サイトにおけるスマートフォン経由の比率の高まり
- お客様の利便性向上のため、より便利に、より安全に
「既存顧客や潜在顧客の利便性向上に向けて、アプリ対応が必要な段階にきた」という判断が様々な企業でなされたということでしょうか。
スマートフォンサイト開設とスマートフォンアプリ提供を組み合わせてみると下図の様になりました。
スマートフォンサイト開設、もしくはスマートフォンアプリ提供のいずれかを実施している企業は69.5%となりました。PCサイトの対応率はほぼ100%ですので、約7割がオウンドメディアの「マルチデバイス(PCとスマートフォン)対応」をしていると捉えられます。
サイト・アプリのスマートフォン対応と広告出稿は不可分?
次に広告出稿に関してみてみます。こちらも2013年度31.0%から2014年度55.3%と22ポイント上昇しました。サイト・アプリのスマートフォン対応状況とスマートフォン広告出稿状況の関係を見ると下図の様になります。
スマートフォン広告の出稿率は、BtoC企業全体では53.3%ですがスマートフォンサイト開設企業では70.8%、スマートフォンアプリ提供企業では90.0%まで上昇します。サイトやアプリのスマートフォン対応が先行して、それに付随する形でスマートフォン広告の出稿も伸びているであろうことが推察されます。
マルチデバイスが前提
スマートフォン広告とPC広告の出稿状況の組み合わせパターンを見たものが下図です。
BtoC企業の約7割がデジタル広告(スマートフォン広告もしくはPC広告)を出稿しています。スマートフォン広告、PC広告のいずれも出稿している企業は49.7%となり、約半数が「マルチデバイス(PCとスマートフォン)」で広告展開していることになります。
以上見てきたことをまとめると、BtoC企業においては現状は、
- オウンドメディアのマルチデバイス対応率は約7割
- 広告展開でのマルチデバイス対応率は約5割
といったところでしょうか。
本調査では、敢えてPC/スマートフォンというデバイス視点で調査をしてきましたが、抽出したいのは「PC vsスマートフォン」の構図ではなく、企業のデジタルへの対応状況、マルチデバイス対応の実態です。
今後、企業サイトへのスマートフォン経由のトラフィックは、更に伸びていくことが推測されます。スマートフォンへの対応は当然のこととなり、調査でデバイス別の対応率を問うこと自体がナンセンスとなっていくでしょう。
マルチデバイスへの対応は前提として、「各デバイスごとにどう最適化していくか」「クロスデバイスでどう生活者にアプローチしていくか」といったようなことを検討するフェーズに移行しつつあると考えられます。
- 【参考】「2015年企業のインターネット広告・モバイル広告利用動向調査」調査概要
- 調査実施期間
- 2015年5月8 日~5月31日(文面締切)最終回収締切:6月5日
- 調査方法
- 郵送調査及びWeb調査
- 調査対象企業
- 国内の上場企業及び有力未上場企業4,304社
- 回収サンプル数
- 439件(回収率:10.2%)
- 調査会社
- 株式会社日経BPコンサルティング
- 調査主体
- 日経BP社、日経デジタルマーケティング
- 株式会社D2C