話題性のあるプロモーションを考えているなら、何はともあれ大切なのは、ユーザーに対して強いインパクトを残すことです。ユーザーをあっと驚かせるプロモーションができれば、FacebookやTwitterなどのSNSで拡散され、さらなる話題を呼ぶことも期待できるでしょう。今回は、そんなインパクトを狙ったプロモーション事例をご紹介します。
ポイントは、ユーザーに合わせて、プロモーションそのものを「カスタマイズ」してしまうこと。いったいどういうことなのか、さっそく見ていきましょう。
特集はなんと自分!世界にひとつだけの機内誌
最初にご紹介するのはブラジル最大のエアラインTAM航空が、顧客満足度向上のためにのプロモーション事例です。
飛行機に乗ると、必ずシートに用意されている機内誌。飛行中、ついパラパラとめくってしまうものではありますが、載っているのはどこかの観光地の情報や、機内で販売している免税商品の紹介ばかり。どのエアラインでも書いていることはほぼ同じなので、もう飽きたと感じている人も多いのではないでしょうか。
同社でヨーロッパ地域のマーケティングを担当するイニーゴ・ララヤ氏によると、機内誌が読まれているのは飛行時間のたった3%、さらに、飛行機を降りた後も機内誌の内容を覚えている人はそのうち11%しかいないという調査もあるとか。それでは、顧客満足につながるとはとても言えないでしょう。
そこに目を付けた同社が制作したのが、顧客一人ひとりにあわせて「カスタマイズ」されたTHE OWNBOARD MAGAZINEという機内誌です。
この機内誌、なんと表紙には顧客本人の顔写真と名前入り。特集はサッカーチームや動物に関する話題など、それぞれ顧客の興味に合わせて制作されています。もちろん、表紙も特集も含め、コンテンツ全てが顧客に合わせて「カスタマイズ」されており、同じ内容のものはどれひとつとしてありません。
機内誌自体のインパクトもさることながら、どうやったらそんな機内誌が制作できるのかが気になるこのプロモーション。実は、それを実現しているのがFacebookとの連携です。
同社では、オンラインでチケットを購入する際にFacebookアカウントでログインする仕組みになっています。そのアカウントで投稿されている写真や「いいね!」しているトピックなどを分析し、顧客の趣味・嗜好を抽出、それをもとにして情報誌のコンテンツを制作したのです。
このプロモーションの結果、なんと顧客全員が機内誌を持ち帰り、平均閲読時間も12倍になったという、非常に大きな効果をもたらしました。誰だって「自分だけ」のためにサービスをしてくれるというのは嬉しいもの。こんなサプライズが待っているなら、またこの航空会社を使ってみようという気になりますよね。
プロモーションの概要は以下の動画でも紹介されています。ぜひご覧ください。
これなら大歓迎!リマインドに使えるリターゲティングバナー
最近ではWeb広告の定石ともなりつつあるリターゲティングバナー。
ユーザーが検索したサイトをもとに、その後に訪れたベージでも関連広告を表示するというものです。しかし、自分の行動を追跡されているような気になるため、あまり好意的に受け入れられていないのが現状ではないでしょうか。
このリターゲティングバナーに注目し、誰にとっても便利でユニークな広告を制作してしまったのがロシアのポストイットです。
使い方はいたって簡単。ポストイットの専用サイトにアクセスし、自分がメモしておきたいことをWeb上のポストイットに書き込むだけ。「たまごを買いにいく」といったタスクでも、「水をもっと飲む」など自分の習慣にしたいことでもなんでも構いません。
このメモがリターゲティングバナーとして、広告スペースに表示されるようになるのです。従来の広告は、表示されればされるほどうっとうしさを感じるものでしたが、これなら何度表示されても問題なく、むしろユーザーにとってはリマインドになります。
本来あまり好意的に受け入れられていない広告を、ユーザー専用に「カスタマイズ」してしまうことで、便利で役立つものに変えてしまうというアイデアが秀逸なWebポストイット。こんなリターゲティングバナーなら、誰だって大歓迎なのではないでしょうか。
プロモーションの概要は以下の動画でも紹介されています。ぜひご覧ください。
自分の顔に似た絵はどれ?美術作品とデジタルを融合させた施策
最後はオランダにあるアムステルダム国立美術館(ライクス・ミュージアム)の事例をご紹介しましょう。同館は、レンブラントの「夜警」やフェルメールの「手紙を読む青衣の女」など、オランダを代表する芸術家たちの作品を多数所蔵しており、世界的にも有名な美術館ですが、若者の美術館離れが進んでいることに頭を悩ませていました。
その問題を解決するべく考案されたプロモーションが「Rijks Emotions」というもの。スウェーデンに本拠地を置くデジタル表現の学校、ハイパーアイランドの学生たちが考案しました。
簡単に説明してしまうと、このプロモーションは来館者の顔に最も近い絵画を抽出、その作品を紹介し楽しんでもらおうというものです。あらかじめ来館者に提供してもらった年齢や性別などの情報と、スマートフォンの「顔認識」アプリを連動させることで実現しました。
実際に抽出された作品と来館者の顔を照らし合わせてみると、必ずしもそっくりというわけではないようですが、友達同士で「似てるよ」「似てないよ」などと言い合ったりするのも楽しそう。これなら美術作品に詳しくない人でも、難しいことを考えることなくシンプルに楽しめます。
若い世代に向けてスマートフォンを活用するという視点もさることながら、美術作品の持つ魅力を、来場者一人ひとりに合わせて「カスタマイズ」してしまうという発想が秀逸なこのキャンペーン。自分の顔で試したら、どんな作品が出てくるのだろうと気になる人もいるのではないでしょうか。
プロモーションの概要は以下の動画でも紹介されています。ぜひご覧ください。
本人を登場させることが、強烈なインパクトにつながる
ターゲットへのリーチ方法を工夫したり、伝える内容を変えてみたりと、見る人にインパクトを残すアイデアはいろいろとあります。しかし、プロモーションの中に「本人」が登場してしまうことほど、強烈な印象をもたらすアイデアは他にはないのではないでしょうか。
インパクトのあるプロモーションをしたいと悩んでいる人は、この「カスタマイズ」という方法が使えないか、ぜひ検討してみてください。