佐武宇綺が聞いちゃいます オーディオのココが知りたいです! 第8回
佐武宇綺の“良い音”を探す旅 ~アニメの音響を知る
「良い音という評価は複雑」 ソードアート・オンラインIIの岩浪音響監督 (3/5)
2014年11月12日 17時00分更新
音が良い作品と言われると、複雑な気分になることもある
佐武 放送中の『ソードアート・オンラインII』の中で、特に音にこだわったシーンってあるんですか?
岩浪 全部です。
佐武 (!) 全部ですか、そうですよね。
岩浪 なんて言うんでしょう。「映像作品にとって良い音」って何だろうと考えたとき、「良い音だね」と言われるのが果たして正しいのかっていう問題があるんですよね。ちょっと逆説的になってしまうんですけど。
佐武 えー! そうなんですか!
岩浪 視聴者の皆さんは、まず作品を楽しみたいと思ってくださっているわけじゃないですか。だから、僕らにとっての“褒め言葉”は「面白かった」なんです。それが一番だから、音のことなんか意識せずに作品に没頭してもらえて、面白いって言っていただけるのが一番なんです。逆に「あれ良い音だったね」って言われたら、「音が目立ちすぎてたんじゃないか」って気分になったりもします。
佐武 あー! そう考えてしまうんですか。
岩浪 まずは映像ありきなんです。特にアニメ作品では。大勢の方が携わっていますが、『ソードアート・オンラインII』なら、川原礫先生の小説があって、シナリオがあって、それをさらにコンテにして、作画の人たち、撮影の人たち、背景の人たち、そして佐武さんもおやりになられている声優さんもそうですけど、“こういう風に見せたいんだ”っていう思いをどんどんリレーしていくんです。
その最終ランナーって言うのかなぁ。きっと“最後のランナーが音”だと思うんですよね。基本的には絵ができあがってから音を作るので。だから、みんなが紡いできた「こういうものを表現したいんだ」っていう想いを、的確な音で表現するのが、音響監督に求められる仕事ですかね。
佐武 そうなんですね。
岩浪 作品がきちんとゴールできたら、最後にそのバトンを視聴者の皆さんに渡すんです。そのときに最終ランナーだけが目立ってはだめなんですよ。みんなでつなげてきたバトンなので。だからバトンを受け取ったお客さんに「あー面白かった」と言っていただけるのが最高の褒め言葉です。
音の着想は、身の回りに転がっている
佐武 監督だからこそ、音に常に普段の生活でも意識する部分があると思うんですけど。好きな音楽とか、普段家ではどう音に対して生活しているものなんですか?
岩浪 家ではあんまり音を聞かないです(笑)。
佐武 ふふふ、聞かないですか。
岩浪 なるべく静かにしていたい。
佐武 じゃあ、オフの日は静かに家にいる感じですか?
岩浪 そうですね。外に遊びに行ったりもしますけど。普段こういう、日の当たらないところにいるので(笑)。
佐武 気分転換ですか?
岩浪 移動中にはFMラジオを聞いたりとか。
佐武 ラジオ!
岩浪 流行の音楽とかが聞こえてくるじゃないですか。あー、今こういう音が流行ってるんだなとか、思います。
佐武 そういうのも考えるんですね。
岩浪 考えますね。
佐武 今の時代に沿ったものは何なんだろうって。常に考えているんですね。
岩浪 何なんだろうとも思いますし、パッと聞いたときにこの楽器はこれだなとか。いつか劇中の音楽でこの楽器を使ってみようと思ったりとかも。
佐武 すごーい! 普段の生活で見つけることもあるんですね。
岩浪 あとは映像と映像に付帯する音響の仕事の原点は、やはり映画だったりするわけで。映画を見るときはどうしても音を気にしちゃいます。
佐武 あ、やっぱり!
岩浪 こういう風に作ってるんだなとか、なるほどこうやってるのかとか。純粋に映画を楽しむというよりも分析している自分という意識もあるんですけど。
佐武 映画は一人で見るんですか?
岩浪 だいたい一人で見ますね。
佐武 家ではスピーカーの位置なんかも考えたりするんですか? それとも、テレビから流れる音で楽しむ?
岩浪 自宅では、ちゃんと5.1チャンネルで見るようにしてますね。でも、劇場にはなるべく行くようにしています。やっぱ大きなスクリーンで見てこその映画なんで。
佐武 監督の作品は、視聴者の皆さんにこう楽しんでほしいとかあります?
岩浪 いや、それはもうご随意にやっていただければ良いだけで。もちろん本音を言えば、ものすごく良いスピーカーで、大きな画面で見ていただくのが一番良いは良いんですけど。ヘッドフォンでも良いですし、テレビからの音でも良いですし、どんな環境でも良い音が鳴るように作っているつもりです。
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