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myrmecoleonの「グラフで見るニコニコ動画」 第23回

アニメ放送直前特集

カゲプロの二次創作をニコ動とpixivのデータから調べてみた

2014年04月10日 18時00分更新

文● myrmecoleon

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 独自に収集したデータを使って、みんな知ってるようで知らないニコニコ動画の現在を紹介していきます。第23回はアニメ化で話題の「カゲロウプロジェクト」を取り上げてみたいと思います。連載一覧はこちら

筆者紹介:myrmecoleon

 明治大学米沢嘉博記念図書館スタッフでニコニコ学会β幹事。趣味で同人誌やニコニコ動画関連の研究をしてる人。記事に使ったデータ元の『ニコニコ統計データハンドブック2014』など同人誌をコミケで頒布。ブロマガでは連載記事の補足も。
 Twitterアカウントは@myrmecoleon。関わった近著に『進化するアカデミア 「ユーザー参加型研究」が連れてくる未来』(イースト・プレス刊)。右の画像は筆者を擬人化?して描いてもらったキャラ「ありらいおん子」。男の娘。

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4月12日からアニメ放送開始の「メカクシティアクターズ」。4月26~27日に開催されるニコニコ超会議3では、超アニメエリア内にメカクシ団のアジトを再現、入団体験できるブースが登場する

ボカロ曲から始まったメディアミックス
「カゲロウプロジェクト」

 「カゲロウプロジェクト」は「カゲロウデイズ」をはじめとする「じん(自然の敵P)」の一連のボカロオリジナル曲と、それと共通のストーリーが描かれる小説や漫画といった作品群の総称です。

 2011年にニコニコ動画に第一作を投稿、3作目の「カゲロウデイズ」のヒットを経て、2012年にじんのファーストアルバムの発売とともに小説と漫画がスタート、2013年にセカンドアルバムと合わせて初の単独ライブを開催、今年4月よりテレビアニメ「メカクシティアクターズ」が開始と、非常にメディア展開が盛んなボカロ曲です

 各楽曲の作者であるじんはほかに小説版の執筆や漫画版の原作、アニメでも脚本・構成と劇伴の監修とマルチな役割をこなしています。またキャラクターデザインやPV動画のイラスト・編集などのカゲプロのビジュアル面を担当している「しづ」や「わんにゃんぷー」もpixivやニコニコ動画で活動するアマチュアのクリエイターであり、じんの楽曲をきっかけとして作品が発表されていく過程でカゲロウプロジェクトに参加しています。

 カゲプロはこうしたアマチュアのCGM的な才能とつながりを火種として、出版社やレコード会社といった企業が関わることで生まれたメディアミックスと言えるでしょう。

「カゲロウプロジェクト」の名前のきっかけでもある「じん(自然の敵P)」による初音ミクオリジナル曲。死によって終わる8月14日と15日が繰り返される不思議な事件を描いた曲で、再生数約380万のニコ動を代表するボカロ曲のひとつ。

 ニコニコ動画にはじんの初投稿作である「人造エネミー」をはじめ、これまで「カゲロウプロジェクト」シリーズの楽曲15曲が投稿されています(その他にアルバムのみ収録の関連曲もあります)。ほとんどの動画は100万再生を超えており(最初の「人造エネミー」のみ執筆時点では99万再生)、シリーズ15曲の動画の再生数を合計すると3000万近くとなります。「じん(自然の敵P)」は現在のニコニコ動画を代表するボカロPのひとりです。

 曲で使用しているVOCALOIDは「カゲロウデイズ」までの3曲は初音ミク、4曲目の「ヘッドフォンアクター」はデモ版のIA、以降はIAが使用されており、じんも現在はIAを発売している1st PLACE社にアーティストとして所属しています。

 カゲプロの楽曲は「カゲロウデイズ」以降、派生動画も多数投稿されています。動画は「カゲロウプロジェクト」のタグでの投稿も多いですが、今回は各楽曲名のタグの付いた動画を調べてみました。

 最初のヒット作の「カゲロウデイズ」は特に根強く派生動画が上がっており、曲中で歌われている8月には毎年関連の派生動画が投稿されています。「カゲロウプロジェクト」関連の曲は例年この8月に向けて、毎年2月から9月頃にかけて投稿されています。

 2012年以降の作品では曲が投稿された月や翌月に毎回100以上の派生動画が投稿されています。特に「如月アテンション」「チルドレンレコード」は「カゲロウデイズ」とともに根強く派生動画が投稿されている人気作です。

 2013年の作品では「夜咄ディセイブ」「オツキミリサイタル」は特に投稿直後の派生動画が多く、これらと「アウターサイエンス」は比較的継続して人気があるようです。

2014年4月時点で視聴可能な各曲名のタグのついた動画について、投稿された月毎の動画数をグラフにしたもの。投稿数が増加しているのは多くは曲動画の投稿月やその翌月。「カゲロウデイズ」は毎年8月に投稿数が増加している

 これら楽曲の派生動画の大半はボカロ曲らしく歌ってみた動画で、特に最近の曲は7割以上が歌ってみたです。前回紹介した歌ってみたで投稿の多い曲のリストでも、2011年後半の「カゲロウデイズ」や2013年前半の「夜咄ディセイブ」、2013年後半の「オツキミリサイタル」「アウターサイエンス」「夕景イエスタデイ」などいくつかの曲が挙がっていました。

 また各曲派生動画の投稿者の4割ほどが性別を公開しており、傾向としては男性による投稿が多いようです。

 前回「歌ってみた」動画投稿者の44%ほどが女性と紹介しましたが、15曲中で女性投稿者のほうが多いのは前回紹介した「アヤノの幸福理論」ただひとつ、女性投稿者が4割以上のタグがほかに「如月アテンション」「オツキミリサイタル」「夕景イエスタデイ」があるのみです。ちなみにいずれも女性キャラメインの曲です。その他の曲は男性投稿者が7割以上を占めており、ニコニコ動画での「カゲロウプロジェクト」の派生動画は、歌ってみたを中心に男性が投稿している傾向が高いです。

 ただし前回も紹介しましたが、最近の歌ってみたで投稿の多いボカロ曲では男性の比率の高いものが多いです。ボカロ曲の歌ってみたで男性投稿者が多いというのはむしろ全体的な傾向かもしれません。

 また「カゲロウプロジェクト」の曲については“歌ってみたが人気だから曲が人気”というよりは“ボカロ曲として人気だから歌ってみたが多い”印象があります。前回のグラフでもトップ3に入った曲は「夜咄ディセイブ」と「オツキミリサイタル」のみですし、また次期のトップ10に残って継続的に歌われている曲はほとんどありません。

 「カゲロウプロジェクト」の人気の広がりはニコ動の歌ってみた動画などだけから分析するのは困難かもしれません。そこで今回はもうひとつ「カゲロウプロジェクト」の二次創作が大きく行われているpixivのイラスト投稿を見てみます。

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