「Excelをビッグデータの出入口に」と意気込むマイクロソフト
マイクロソフト、Power BI for Office 365は2月上旬発売
2014年02月03日 06時00分更新
マイクロソフトのビッグデータに対するビジョンは、Excelを通じて現場社員の誰もが直接ビッグデータを扱えるような「ビッグデータの民主化」環境の実現である――。日本マイクロソフトは1月30日、「Power BI for Office 365」を中心とした同社のビッグデータ製品戦略に関する説明会を開催した。同製品は2月上旬より提供される。
「既存の社内データ」と「現場社員」から始まるビッグデータ活用
日本マイクロソフト サーバープラットフォームビジネス本部 シニアマネージャーの斎藤泰行氏はまず、国内企業のビッグデータ活用の取り組みについて「すでに色々な業種、業態での取り組みが始まっている」と、その実態を紹介した。
斎藤氏は、昨年1年間にメディア掲載された国内企業のビッグデータ活用事例記事138件を分類した結果を示した。取り組みの目的として最も多かったのは、「ソーシャル分析」や「センサーデータ分析」などの新領域ではなく、既存のデータをより詳細かつリアルタイムに分析してビジネスに役立てる「リアルタイム化」の領域だったという。
これはまた、ビッグデータが「ITの課題」としてではなく「ビジネス課題」として取り組まれていることの証拠でもある。「まずは社内にあるデータを捨てずに活用しようという、身近な取り組みから始まっている。昨日まで使われていなかったデータから、ビジネスの付加価値を生み出すことが重要視されている」(斎藤氏)。
こうした企業の動きを加速させるべく、マイクロソフトでは「ビッグデータの民主化」というビジョンを打ち出している。具体的には「Excelさえ使えれば、ビッグデータが活用できる」環境を実現し、IT部門スタッフではなく現場従業員がビッグデータを直接、容易に活用できるようにするというものだ。
斎藤氏は、新たにデータサイエンティストを雇い入れてビジネスを一から学んでもらうよりも、現場の最前線にいる従業員が直接ビッグデータを活用できるようになることが「一番の近道」であり、ビッグデータを推進する役割も「現場に近いほうがビッグデータを活用できる」と述べ、このビジョンの背景を説明した。
「現場が使える形のデータ」を提供することが重要
こうしたビジョンの実現のため、マイクロソフトではExcelの機能強化に向けた投資を継続しており、最新版(Excel 2013)では巨大なサイズ(行)のデータもより容易に扱えるようになっている。
ただし、それだけでビッグデータ活用が自然に促されるわけではない。斎藤氏は、企業が保有する“生のデータ”をそのまま現場社員に渡しても扱いづらく、「現場が活用できるデータ」の形に変えてから提供することが必要であり、その役割を担う担当者や外部データ提供会社が求められると説明した。
Excelを中核にビッグデータ活用を実現する
マイクロソフトでは2月上旬からPower BI for Office 365、およびPower BI向けExcelアドインの提供を開始する。「SharePoint Online Plan2」の利用が前提となるが、ExcelアドインはOffice 365 Proplus、およびOffice Professional Plus 2013ユーザーに無償提供される。
Excelアドインにより、社内/社外のさまざまなデータソースからデータを変換し取り込むPower Query、データを簡単にモデル化しインメモリ分析可能にするPower Pivot、分析結果をアニメーション付きグラフや地図上にマッピングした形で可視化するPower View/Power Mapの機能が提供される。
またPower BI for Office 365では、データやワークブックを共有するポータルのPower BIサイト、レポート検索機能のPower BI Q&A、さらにモバイルデバイス向けのWindowsストアアプリなどが提供される。
説明会では国内のPower BI早期採用顧客として、日本テレビ放送網と東急百貨店の事例も紹介された。日本テレビでは、スマートフォンアプリを通じて番組参加する「JoinTV」サービスを提供しているが、これまで破棄していた視聴ログデータをPower BIで解析することにより「視聴者の顔が見える番組作り」につなげていく方針だという。また東急百貨店では、販売や仕入れ、来店客など豊富なデータが十分に活用されておらず、現場が使い慣れたExcelを用いて仮説と検証を繰り返す「アジャイル・マーケティング」を実現できるのではないかと期待を述べた。