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Q&A形式で学ぶOpenFlow/SDN 第1回

ネットワークをソフトウェアが定義する理由

なぜSDNは生まれたのか?ネットワーク仮想化との関係は?

2013年05月30日 15時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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SDNで実現されるネットワークの仮想化とは?

 物理ネットワーク上に複数の論理ネットワークを構築するのが、ネットワークの仮想化になる。ネットワーク仮想化は設定や運用管理の自動化とともに、SDNで実現される主要なメリットと位置づけられる。

 サーバーやストレージ、アプライアンスなどを物理的に接続する既存のネットワークでは物理的なインターフェイスとIPアドレスがひもづけられている。これが動的に変化することは考えられておらず、またアプリケーションの種類に応じて、経路を動的に変更するといったことも難しかった。これに対して、ネットワークを仮想化すると、アプリケーションの要件に合わせた論理ネットワークを1つの物理ネットワーク上にいくつも構築することができる。複数の顧客がネットワークを共用する「マルチテナント」の環境においては、こうしたネットワークの仮想化は必須の技術だ。

1つの物理ネットワーク上に異なる論理ネットワークを複数構成できる(IPAのサイトより抜粋)

 ネットワークの仮想化自体は、決して真新しい技術ではなく、VLANやVPNをはじめとし、さまざまなルーターやアプライアンスなどでも実装されている機能だ。しかし、仮想化やクラウドの浸透により、要件を満たせなくなることが増えてきた。そのため、拡張性と柔軟性の高い新しいネットワーク仮想化技術として、SDNに注目が集まっている。

ネットワークの仮想化といえばVLANでは?

 VLANはVirtual LANという名前の通り、Ethernetにおいて長らく標準的に用いられてきたネットワークの仮想化技術だ。VLANではEthernetフレームにVLAN IDを書き込んだタグを挿入することで、スイッチがどのVLANに所属するかを識別する。これにより、1つの物理のネットワークに複数の異なるLANを同居させることができる。

 VLANのアイデアはシンプルで、対応するネットワーク機器も安価であるため、現在でもネットワーク構築で用いられている。しかし、基本的にはスイッチごとにVLANの設定を行なう必要があり、設定も各社によって異なる。また、VLAN ID自体にも12ビット(最大4096個)という制限があり、スケーラビリティを欠くという弱点を持つ。

 さらに仮想マシンが別の物理サーバーに動的に移動する「ライブマイグレーション」を行なった場合は、移動先のネットワーク設定を再度施す必要がある。移動元の物理・仮想スイッチからVLANを削除し、移動先の物理・仮想スイッチにVLANを追加しなければならない。大規模なネットワーク環境でこうしたVLAN設定の変更を行なうのは非常に大きな負荷がかかる。

仮想マシンのライブマイグレーションを行なうために、ネットワーク設定をし直す必要がある(IPAのサイトより抜粋)

 サーバーの仮想化が進み、マルチテナントのデータセンターのように大規模なネットワークが増えてくるようになると、VLANでのネットワーク仮想化は自ずと限界が出てきたというわけだ。

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 次回は、SDNを実現する代表的な技術として注目されているOpenFlowについて、Q&A形式で解説していこう。

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