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「SDN Japan 2014」レポート 前編~総務省、OpenDaylight、NTT Com

運用フェーズに入ったSDN、ユーザー視点で見えてきた課題とは?

2014年11月12日 06時00分更新

文● 高橋睦美

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ネットワークのあり方に革新をもたらすとして、大きな注目を集める「SDN(Software Defined Network)」。そのSDNにフォーカスした技術カンファレンス「SDN Japan 2014」が、10月30日、31日の2日間にわたって開催された。ベンダー中心の論点ではなく、「自分が抱える課題を解決するためにSDNは何ができるのか」「何が課題となるのか」という、ユーザー視点で地に足の着いた発表が行われた。前後編に分けて紹介しよう。

2020年、日本のネットワークインフラはSDNが支える?

 カンファレンス冒頭、挨拶に立った総務省 情報国際戦略局 技術政策課研究推進室 室長 荻原直彦氏は、クラウドコンピューティングやIoT(Internet of Things)といった新たな潮流を生かすためにも柔軟なネットワーク制御は欠かすことができず、その実現手段としてSDNが注目を浴びていることを強調した。

総務省 情報国際戦略局 技術政策課研究推進室 室長 荻原直彦氏

 総務省としても、「オープンなソフトウェア、オープンなアイデア」を掲げた「O3プロジェクト」を通じてSDN関連の研究開発に戦略的に取り組んでいる。2014年7月にはその成果の1つとして、オープンソースのSDNソフトスイッチ「Lagopus」を公開した。2015年には、これらの技術を活用した大規模実証実験を予定している他、SDN設計や運用のための「ガイドライン」を作成し、公開する予定だ。

 「2020年の東京オリンピックに向け、ネットワークインフラにSDNを導入することによって新しいサービスが利用できる環境を整え、また特異なトラフィックへの準備を整えていきたい」(萩原氏)

OpenDaylightが目指す「相互運用性を持つ共通プラットフォーム」

 続く基調講演では、オープンソースのSDNソフトウェア「OpenDaylight」プロジェクトのエグゼクティブ・ディレクター、ニーラ・ジャック氏が登場し、SDNの世界においても、これまでのネットワーク同様「相互運用性」が重要であり、OpenDaylightプロジェクトはその実現を目指していくと述べた。

前日にHackfestを開催したことに触れ、コミュニティへの参加を呼び掛けたOpenDaylightプロジェクトのエグゼクティブ・ディレクター、ニーラ・ジャック氏

 ジャック氏は冒頭、「最近は何でもかんでも『オープン』という単語が冠されるようになっているが、何がどの程度『オープン』なのか、しっかり見極めなければならない」と釘を刺した。例えて言うなら、食品のイメージアップを狙って付けられる「ナチュラル」という形容詞と同じように、「オープン」という言葉がイメージだけのものになっていないか、注意する必要があるという。

 では、誰もが語る「オープン」という言葉は、なぜ重要なのか。それは、「イノベーションの牽引役になっているからだ」とジャック氏は述べた。この10年間を振り返ると、Linux、MySQL、Hadoop、そしてOpenStackといったオープンソースプロジェクトが数々の革新を実現してきた。翻ってネットワーク分野はどうかというと、「これまであまりオープンソースプロジェクトがなかった。OpenDaylightがその役割を果たしていく」(同氏)。

 ジャック氏は、SDNの世界には、共通のプラットフォーム――統合され、相互運用性のあるプラットフォーム――が必要だと述べた。逆に言うと、その欠如こそがSDNの導入を妨げているという。

 「コントロールプレーンとデータプレーンを切り離し、ネットワークをプログラマブルなものにしようという主張はもっともだ。そして、企業の多くが『将来的にSDNを導入したい』と述べている。にもかかわらず実際の導入率は5%程度にとどまっている。いったいなぜだろうか。技術がないわけではない。市場にはほぼ毎月のように新しいSDN対応製品が投入され、SDNコントローラなどは30種類以上がリリースされている。ではなぜ? その答えは『統合と相互運用性の欠如』だ。相互運用性という言葉はプレゼンテーションでうたわれてはいるものの、プレゼン上の空論に過ぎない」(ジャック氏)

 ソリューションそれぞれを個別に組み合わせ、検証していては、手間もコストもかさむ。代わりに、共通のSDNプラットフォーム上でコラボレーションし、テストすればいい――OpenDaylightプロジェクトは、その共通プラットフォームの実現を目指すものであり、「今の細分化されたSDNを克服していくための取り組みだ」(ジャック氏)という。

 同氏は、共通のコード上でテストを行えばコスト削減につながるし、新規アプリ開発、あるいは認証やロギングといったセキュリティ機能の開発時に、開発各社が重複を避け、おのおの差別化ポイントに注力できると説明。さらに、「相互接続性の実現によって、ベンダーロックインを避けつつ、プログラマブルなネットワークがもたらす俊敏性を手にすることができる」とした。

 ジャック氏は、「クローズで閉鎖的なやり方に戻るのは簡単だ。だが、ぜひOpenDaylightという共通のプラットフォーム上で、いろいろなやり方を評価し、テストし、学習してほしい」と会場に呼び掛け、講演を締めくくった。

(次ページ、ネットワークでもDevOps? NTT Comの「AMPP」が広げる可能性)


 

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