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Q&A形式で学ぶOpenFlow/SDN 第3回

Interop 2013で披露された各社の最新動向

OpenFlow/SDNのユーザー像は?最新動向を教えて!

2013年06月18日 09時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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OpenFlow/SDNの基礎技術や最新動向をQ&A形式で解説していく記事の3回目。今回はOpenFlow/SDNがターゲットとするそもそものユーザー像は誰なのか?そして最新動向や課題について探る。

OpenFlow/SDNが対象とするのはデータセンター?

 現状、OpenFlow/SDNが対象としているのは、GoogleのようなWebジャイアンツが積極的に導入してきた経緯もあり、大規模なデータセンターやクラウドを展開する事業者が中心だ。データセンターにおいてはサーバーやストレージの仮想化が進んでおり、マルチテナントで要件の異なる複数のネットワークを運用しなければならず、ネットワークの仮想化も喫緊の課題となっている。

 こうした課題を抱えるデータセンター事業者にとってみれば、OpenFlowやSDNによる運用管理負荷の軽減やネットワーク仮想化は非常に魅力的だ。今後、クラウドの管理とSDNを連携させるオーケストレーションが進めば、ますます導入しやすくなるだろう。

 通信事業者においても、OpenFlow/SDNは高い関心を集めている。昨今の通信事業者はインフラプロバイダーとして、データセンターやクラウドを運用していることが多いため、データセンター内にとどまらず、WAN経由でのネットワーク制御にOpenFlow/SDNを活用しようとしている。実際、NTTコミュニケーションズでは、企業向けクラウドサービス「BizホスティングEnterprise Cloud」ではWANでのバックアップで利用する帯域をSDNで動的に調達することが可能になっている。

 また、大規模なネットワークを展開するエンタープライズでもOpenFlow/SDNの活用は進みそうだ。実は他社に先駆けてNECのSDNソリューションを導入したのは、大手の運輸会社である日本通運。同社では、プライベートクラウド構築に「UNIVERGE PFシリーズ」を導入することで、数ヶ月かかっていたネットワーク構築を10日程度に単位まで短縮。ネットワークの設定変更のたびに発生していたアウトソーシングのコストを削減した。これはエンタープライズにおいても、OpenFlow/SDNが有効に活用できることを示している。

 さらに先日、ストラトスフィアが発表した「OmniSphere」は、複数のフロアや拠点をまたいで仮想ネットワークを構築できるオフィス向けのソリューション。2013年はこうした企業向けのサービスが増えてきそうだ。

オフィス向けの仮想ネットワークソリューションであるストラトスフィア「OmniSphere」

OpenFlow/SDNを巡る各社の動向を教えて!

 OpenFlowやSDNにもっとも早くから取り組んでいたベンダーがNECであることに関しては異論はないだろう。2011年にOpenFlow対応の「UNIVERGE PFシリーズ」を初めて市場投入し、フロースイッチングやネットワーク機器の集中制御などをいち早く実現した。OpenFlow/SDN自体の認知度の向上や市場醸成にも大きく貢献。先頃はOpenFlowの最新バージョンである1.3への対応もいち早く行ない、市場をリードしている。

Interop Tokyo 2013のNECブースでも高い関心を集めていた

 大手の中ではブロケード コミュニケーションズ システムズもSDNへの対応を早い段階で表明したベンダーだ。コミュニティでも積極的に活動していた同社は、ソフトウェアアップデートによるOpenFlowへの対応を表明しつつ、NECやNTTデータなどとも連携。最近ではADCのようなアプライアンスのSDN対応や買収したVyattaの仮想ルーターを展開するなど、積極的にSDNに取り組んでいる。

 その他、データセンター系のネットワーク機器を展開するアリスタネットワークスやフォーステンネットワークス(現デル)、コモディティ化されたスイッチで市場を賑わせるPica8などがOpenFlow/SDNに取り組んできた。

Interopに展示されたOpenFlow対応のHPスイッチ

 そして、約1年半の間で大手のベンダーがOpenFlow/SDNへの対応を次々と発表した。先頃行なわれたInterop Tokyo 2013でもほとんどのネットワーク機器ベンダーが、OpenFlow/SDNに対してなんらかの旗色を明らかにしている。

 もっとも大きいのは2012年7月に最大手のシスコが発表した「Cisco ONE(Open Network Environment)」。スイッチのOpenFlow対応のみならず、他のSDN技術との連携やオーケストレーションのためのAPI整備まで含めた包括的なSDN構想になっており、インパクトは大きい。その後、シスコはオープンソースのOpenFlowコントローラープロジェクトである「OpenDaylight」への関与も発表している。

 また、HPもOpenFlow/SDNへの関与を強めるベンダーの1つだ。同社でも既存のスイッチのOpenFlow対応を進めると共に、SDNコントローラーを自社開発する意向を表明している。同社が得意とするサーバーやストレージなどのITインフラ製品とどのように統合していくかが大きな鍵となるだろう。

(次ページ、OpenFlow/SDNの課題とは?)


 

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