NTTドコモは、主要ベンダー6社(アルカテル・ルーセント、ファーウェイ、シスコシステムズ、NEC、エリクソン、ノキアソリューションズ&ネットワークス)と共同で、異なるベンダーの組み合わせによるネットワーク仮想化技術の実証実験に成功したと発表した。2015年度の商用化を予定している。
今回のネットワーク仮想化技術は、従来は専用のハードとソフトによって実装されていたLTEのパケット交換機のシステムを、汎用ハードウェア上で動作する仮想化レイヤーとソフトウェアの組み合わせによって実現するというもの。
海外でも標準化団体「ETSI」のもとで設立された「ISG NFV」(Network Functions Virtualization Industry Specification Group)に232社が加入して、ネットワーク仮想化の検討が進められている(ドコモは副議長を務める)。さらに9月にはNFVをオープンソースで構築するための「OPNFV」が設立され、ドコモはその一員として積極的に取り組んでいる。
今回メディア向けに説明を行なった、NTTドコモ 執行役員R&D戦略部長の中村 寛氏によると、ネットワーク仮想化には4つのメリットがあるという。
まず1つめは「通信混雑時のつながりやすさの向上」。従来型のハードとソフトが一体化したシステムと異なり、仮想化レイヤー上にソフトを追加することで、自動的かつ比較的短時間に容量追加が可能という。大規模災害発生時の混雑を想定したシミュレーションでは、従来の環境では全体の発信に対して5%しか対応できなかったのに対し、25%にまで改善されたという。
2つめは「通信サービスの信頼性向上」。従来は稼働中のハードが故障した際、その入れ替えや修理に時間を要する。一方仮想化技術を導入すると、自動的に予備系で動作し、切替に要する時間も短い。
3つめは「サービスの早期提供」。これまでは新しいサービスを導入するには、専用ハードの調達からスタートし、それに合わせた設備工事に数ヵ月、そこから試験に取りかかるイメージだという。これに対し、共用のハードを用いる仮想化技術の導入により、ソフトのインストールと試験のみでサービスを開始できるようになる。
最後は「ネットワーク設備の経済性向上」。従来は専用ハードが必要なうえに、サービスごとに異なるハードを用いていたため、それごとに保守部品の用意も必要だった。一方、仮想化技術ではIT業界で一般的なIAサーバーなどを用いるため、ハード自体も低コストな上に、メンテナンスも簡単になるという。
そして、今回重要なのは複数ベンダーの組み合わせによるネットワーク仮想化を実現したという点。単一ベンダーでの仮想化では、結局保守用のハードウェアがベンダーごとに必要になるので、メリットは小さくなる。異なるベンダーのソフトウェアを汎用ハード上で動作させることで、仮想化によるメリットを最大化できるとともに、エコシステムの変化や市場の活発化にも期待が持てるとする。
さて、キャリア側のメリットについて語られた後で、ここで疑問に感じるのがベンダー側のメリット。記者からの質問に対して中村氏は、既存ベンダーにとっては新規参入に対しての心配はあるかもしれないが、市場の活発化によるオペレーター側の期待がベンダーを動かしている部分もあるのではないかとした。